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「アップルカー」を製造するのは誰か、減りつつあるアップルの選択肢

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米アップルのティム・クックCEO/Mandel Ngan/AFP/Getty Images

米アップルのティム・クックCEO/Mandel Ngan/AFP/Getty Images

ロンドン(CNN Business) 電気自動車(EV)の開発をめぐる米アップルの提携先は選択肢が減りつつある。

韓国の自動車メーカー、現代自動車と傘下の起亜自動車は8日、自動運転で動くEVの開発について、アップルと協議を行ってはいないと明らかにした。

EV開発計画がどこまで進んでいるのかは不明だが、アップルは車両の発明についてさまざまな特許を獲得している。「プロジェクト・タイタン」はアップルが自動車市場に参入するための秘密の取り組みだと報じられている。

現代自と起亜がアップルとの提携間近との報道を否定したことを受けて株価はそれぞれ6%と15%下落した。最近の報道による株価の上昇分を部分的に失う形となった。

ただ、投資家は過剰に反応している可能性がある。現代自も起亜もアップルとの提携でその名声を高め、工場では大量の車両が生み出されるだろう。しかし、アップルとの提携が世界の自動車市場のトップに上り詰めるのに役立つかどうかは不透明だ。

独コメルツ銀行の自動車市場のアナリスト、デミアン・フラワーズ氏は、アップルなら製品に関する全てをコントロールしたいのは明らかだと指摘。フラワーズ氏は「求めているのは委託製造業者で、パートナーではない」と述べた。

自動車市場の専門家は概して、もしアップルが自動車市場に参入したいのなら、必要とする提携先はすでに自動車の製造を行っている企業だとの見方で一致する。年間数百万台の自動車を製造するには投資と経験、人件費が必要で、アップルのように大量の資金がある企業でも自動車市場への参入は難しいものだ。

アップルの提携先としては最近、フォード・モーター、ゼネラル・モーターズ、テスラ、ホンダ、日産、ステランティスなどさまざまな観測が出ていた。しかし、その中からアップルと提携する企業が現れそうにない理由は十分ある。

核心となる問題は、アップルが自動車メーカーに対して、その技術的な専門知識を共有することに前向きかどうかだ。そうした知識があれば、自動車メーカーは電気自動車や自動運転車の開発競争で大きなプラスとなる。高速通信規格「5G」やクラウドコンピューティングといったテクノロジーがそれらに円滑に統合されていくからだ。

しかし、共有という考えはアップルには存在していないかもしれない。

コメルツ銀のフラワーズ氏は「アップルは何も共有しない。アップルから得られる恩恵は唯一、数の多さだけだ」と指摘する。

技術の共有や緊密な協力を抜きにした取り引きでは、自動車メーカーは台湾の電子機器受託大手ペガトロンやフォックスコンと似た状況に陥る可能性がある。2社はiPhoneの組み立てを行っているが、巨額の利益は獲得していない。

同じビジネスモデルを踏襲することは、主要自動車メーカーとしては避けたいところだろう。

フラワーズ氏は「フォルクスワーゲンは独自の自動運転車用ソフトウェアを開発し、基本ソフト(OS)を作り、データを制御したがっている。IT企業や同業のテスラ、今後やってくるどんな企業とも競う気だ」「そんな会社がIT企業の委託製造業者になることに同意するとは思えない」と語る。

独メッツラー銀行のアナリスト、ユルゲン・ピーパー氏も大手の自動車メーカーは失うものが多いと指摘。「アップルに門戸を開きたいとは思わないだろう」と話す。

電気自動車や自動運転車に大規模な投資の行えない、より小規模な自動車メーカーならアップルとの提携をより受け入れやすい可能性がある。複数のアナリストによると、現代自はそのサイズの会社の一つだ。他にはホンダや日産、ステランティス、BMWの名前も挙がる。

ピーパー氏は「BMWだったら少し違った見方をするかもしれない。『どこかの時点ではアップルの自動車産業への参入を受け入れなければいけない。もしそれが起きるなら、他の誰かが選ばれるより我々がパートナーになりたい』と言うかもしれない」と語る。

一方アップルは、委託製造業者と組むことで、ブランドや独創的な部分でのコントロールで衝突が起きる事態は避けたいだろう。たとえばカナダの自動車部品大手マグナはメルセデス・ベンツやトヨタ、BMW、ジャガーの製造に携わっているが、独自の電気自動車の工学的な基本設計まで開発している。

もし、アップルが大手のブランドの中で提携先を見つけ出せば、自動車業界の変革のスピードはさらに加速しそうだ。

フォルクスワーゲンのヘルベルト・ディース最高経営責任者(CEO)は最近、SNSのリンクトインで、「我々の産業の変化を確実にさらに加速させる参入者は歓迎だ」「以前から言っているように、モビリティー企業が再び世界で最も価値の高い企業となる日がくる。それがテスラであろうと、アップルであろうと、フォルクワーゲンであろうとだ」との考えを示している。

本記事は、CNN Businessのチャールズ・リリー記者による分析記事です。

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