自民党新総裁に菅義偉氏、農家の息子から次期首相に

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菅義偉氏が自民党の総裁に選出された/Kyodo News/Sipa USA

菅義偉氏が自民党の総裁に選出された/Kyodo News/Sipa USA

(CNN) 自民党総裁選は14日、投開票が行われ、菅義偉官房長官(71)が全体の約7割の得票を得て新総裁に選出された。岸田文雄元外相や石破茂元防衛相を破っての当選となった。

安倍晋三首相は先月、持病の潰瘍(かいよう)性大腸炎の悪化を理由に辞任を表明。それに伴う総裁選では、多くの政治評論家から菅氏が最有力候補と目されていた。

菅氏は2012年に第2次安倍政権が発足した時から官房長官を務め、安倍首相の右腕として手腕を振るってきた。だが2人がこれまで歩んできた道のりは大きく異なる。

安倍氏は日本で有数の政治家一家に生まれ、父は外相経験者、祖父など2人は首相経験者だった。血統が重要な意味を持つ政党制度で、これは重要な資産となった。

一方、菅氏は秋田県で育った農家の息子で、高校卒業後に上京。段ボール工場や築地市場で働く経験をしながら、学費を工面して大学に通学。大学卒業後は一般企業に就職したが、政治が世の中を動かしていると気づき、政治の道に入った。

自民党によると、横浜市議会議員選挙への立候補を決めた後、コネも政治経験も不足している菅氏は1日に約300軒、合計3万軒を回る選挙運動を展開。選挙終了時までには靴を6足はきつぶしたという。

菅氏の話し方はその頃からほとんど変わらず、物事を成し遂げる際に頼りになる政治的な策士として知られるようになった。そうした手腕が菅氏を安倍氏の右腕に押し上げた。停滞していた日本経済の活性化に向けて、「アベノミクス」として知られる金融刺激策と財政出動、構造改革を合わせた一連の経済政策の実施では重要な役回りを担った。

北海道大学の鈴木一人教授は、菅氏は安倍首相の代替的な存在になるだろうと語る。辞任表明後、安倍首相の低迷していた支持率は一転上昇し、自民党がこの機会を利用する可能性もあると指摘する。

日本政治の専門家、ブラッド・グロッサーマン氏は、菅氏が安倍政権の方針や自民党の主流派から離れた独自性を示すには至っていないと指摘。「彼はまさにたたき上げの人物だが、問題は輝くような魅力を彼がどれくらい発揮できるかという点だ」と語る。

公開討論会に参加した岸田文雄氏(左)、菅義偉氏(中)、石破茂氏/Kimimasa Mayama/Pool/Anadolu Agency/Getty Images
公開討論会に参加した岸田文雄氏(左)、菅義偉氏(中)、石破茂氏/Kimimasa Mayama/Pool/Anadolu Agency/Getty Images

それは大きな課題になるかもしれない。安倍首相は新型コロナウイルスやそれに続く経済危機への対応で不満が広がる中、退任を表明し、野党は反撃のチャンスと捉えている。さらに巨額の政府債務、人口の高齢化、職場における男女格差といった大きな課題が菅氏の前には立ちはだかる。

菅氏はすぐに国民へのアピールをしていかなければならない可能性がある。遅くとも来年10月までには総選挙があるためだ。9日には河野太郎防衛相から来月にも解散の可能性があるとの発言も飛び出した。

官房長官として菅氏はこれまで、上司より目立つようなこともなくメッセージを伝える能力の点で政府の報道官として成功してきたと見なされている。だが、国のトップとして国民に訴える際には雄弁さやカリスマ性が重要な特徴であり、こうした点でこれまでの語り口が課題となる可能性もある。

前述のグロッサーマン氏は「誰もこの人物がどのような人かを本当には知らない。彼は裏方で動いてきた」「日本の市民が結集し支持できるようなイメージを構築し示すにはまだ至っていない」と指摘する。

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