しかし、先ごろ、米国務省の対ISIS有志連合特使を務めるブレット・マクガーク氏がコバニを訪問したことからも、YPGとの関係を重視する姿勢は明らかだ。ジュネーブでのシリア和平協議には、トルコへの配慮からYPGが招かれなかった。マクガーク氏の訪問には、これに激怒したYPGの指導者らをなだめるという意図があったとみられる。
クルド人とアラブ系勢力が結成したシリア民主軍(SDF)は現在、有志連合から空爆の援護を受け、ISIS支配下の油田や補給路への攻撃を続けている。その「合同作戦本部」が置かれているのは、ハサカ南郊にあるアパートの廃墟だ。ここは昨年8月に激しい戦闘の舞台となった。建物には今も銃弾の跡が残る。
アパートの小さな一室に、3人の若い男性が座っていた。タブレット端末と、たばこの箱で支えた無線機。かれらはここで前線の部隊と連絡を取り、空爆を指揮する有志連合司令部にISISの動きを伝える。
ダハム・ハサキさん(21)は慣れた手つきでタブレット端末の画面を操作し、グーグルマップ上のある地点を文字メッセージとともに本部へ送った。ハサカの前線にいる同志たちが、敵の戦闘員2人の動きを目撃したという。機器の使い方は米国人ら外国の部隊から教わったと、ハサキさんは話す。