米科学者、核融合反応で画期的成果 情報筋
(CNN) 米カリフォルニア州ローレンスリバモア国立研究所にある国立点火施設(NIF)の科学者がエネルギーの純増をもたらす核融合反応に成功した。プロジェクトに詳しい人物がCNNに確認した。
エネルギー省は13日にもこの画期的進歩を公表するとみられる。英紙フィナンシャル・タイムズが最初にこの成果を報じた。
化石燃料への依存を終わらせる無限のクリーンエネルギー源実現に向けた取り組みは数十年間にわたる。研究者は太陽のエネルギー源である核融合を再現しようと試みてきた。
核融合反応は2つ以上の原子が1つのより大きな原子に融合するときに発生、巨大なエネルギーを熱として生み出す。現在電力源となっている核分裂反応と異なり、長期間残存する放射性廃棄物を出さない特徴がある。
世界中で様々な方法を使った取り組みが続けられてきた。
NIFのプロジェクトでは「熱核慣性融合」と呼ばれる核融合反応でエネルギーを取り出した。水素燃料を含むペレットを200近いレーザーの層に撃ち込むと、1秒間に50回という極めて高速の連続した爆発が発生。中性子やアルファ粒子から集められたエネルギーが熱として抽出され、エネルギー生産に使われる。
ケンブリッジ大学工学部の核融合の専門家トニー・ロールストーン氏は「レーザーで外側を撃ち核融合反応を閉じ込める。外側を熱して、衝撃波を生み出す」と説明する。
核融合反応からのエネルギー純増は達成したが、現在の規模では電力源や暖房の熱源になるにはあまりに小さい。
インペリアル・カレッジ・ロンドンの慣性融合研究センターの共同ディレクター、ジェレミー・チッテンデン氏は「やかん10個分の水を沸かすぐらいだ。これを発電所に変えるには、より大きなエネルギーを生み出す必要がある」と指摘する。
英国ではトカマクと呼ばれる巨大な磁石がついたドーナツ型の装置で実験が進んでいる。質量が欠損すると膨大なエネルギーに変換される。中性子がトカマクの壁に並ぶ「ブランケット」と呼ばれる部分にぶつかると、その運動エネルギーが熱に変わる。これで水を温め蒸気を発生させ、タービンを回して電力を生み出す仕組みとなる。
この反応を生み出す装置は極めて高い温度にさらされ、内部のプラズマの温度は太陽の中心部分より10倍高い1億5000万度に達する必要がある。
研究者らは昨年、オックスフォード近郊で5秒間だけエネルギーを持続的に作りだすことに成功した。
いずれの方式を取る場合でも、エネルギー源となるには核融合から持続的に熱を取り出すことが重要だ。ロールストーン、チッテンデン両氏はともに、研究規模を大幅に拡大してコストダウンを図る必要性も指摘する。商用化の実現までは何年もかかるとみられる。