「間違いなく裏目に出た」、米共和党の非難合戦が拡大 中間選挙の不振受け

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トランプ氏の存在が目立った選挙戦を巡り共和党上院トップのマコネル氏(右)に批判も/CNN/Getty

トランプ氏の存在が目立った選挙戦を巡り共和党上院トップのマコネル氏(右)に批判も/CNN/Getty

(CNN) 米上院の共和党トップ、マコネル院内総務の政治資金管理団体は、党の選挙陣営にこう助言する。「予備選では、一般投票で落選しない候補者を選ぶことを考えよ」と。

一方、中間選挙の結果を受け、世論を二分するトランプ前大統領の存在を極めて大きな問題ととらえる向きもある。とりわけ投票日の数日前のタイミングで、2024年大統領選について発言したことが物議を醸している。

「あれは間違いなく裏目に出た」と、ある共和党議員は指摘する。

人工妊娠中絶という争点や、民主党からの攻撃に効果的に対処できない党の弱さの問題も存在した。議員の中には不満をマコネル上院院内総務やマッカーシー下院院内総務など党のリーダーたちにぶつける動きもある。

ミズーリ州選出のジョシュ・ホーリー上院議員は、「ワシントンを中心とする共和党の主義・政策が8日夜、大敗を喫した」との見方を示した。

ここへ来て共和党内部ではこうした責任の押し付け合いが表面化している。(共和党の圧勝を意味する)赤い波が起きるとの強気の予想は実現しなかった。今や共和党は上院で引き続き少数派に沈む危機にさらされ、下院では辛うじて多数派を奪うのにさえ苦労している状況だ。

マコネル氏を中心とするグループは10年と12年の選挙で、一般投票に弱い候補が予備選で選ばれたために上院の過半数を逃すという苦い経験をした。それを踏まえたその後の選挙では、重要議席で勝てないと判断する候補者には退場してもらうよう、予備選に積極的に関与するようになった。だが今年、党の選挙運営を担う全国共和党上院委員会(NRSC)がとった方針は、予備選には干渉しないというものだった。

党が団結している地域では良い戦いを繰り広げた。ネバダ州では接戦が続き、ジョージア州では決選投票にもつれこんだ。一方、マコネル氏の政治資金管理団体である特別政治活動委員会「SLF」とNRSCが異なる戦略をとったニューハンプシャー州やアリゾナ州では、共和党候補が敗退したり、遅れをとったりしている。激しい予備選となったペンシルベニア州は上院の過半数獲得の上で極めて重要だったが、メフメト・オズ候補は敗れた。

引退するペンシルベニア州の共和党上院議員、パット・トゥーミー氏は10日、CNNの取材に答え、オズ氏が負けたのは同じ投票用紙に載っていた知事選候補で極右のトランプ氏支持者、ダグ・マストリアーノ氏の大敗の影響を受けたためだと語った。

「МAGA候補者と大敗との間には極めて高い相関がある」と述べた。МAGAはトランプ氏の掲げるスローガン、「米国を再び偉大に」の頭文字を指す。

その上で「我が党は次の事実に向き合う必要があると思う。つまり、もしドナルド・トランプへの忠誠が予備選での候補者選定の基準になるなら、おそらくはあまり良い結果が得られないだろうということだ」と語った。

SLFのトップ、スティーブン・ロー氏はCNNに、NRSCが次も「予備選での放任主義」を貫くのかについて党内で議論が必要だと話す。14年中間選挙で上院奪還を支援した「押しの強い」陣営運営者なら、何であれ受け身の姿勢をほぼとらず、特に候補者の選定でそうした姿勢はありえないと語る。

一方、NRSCの広報担当者は戦略は間違っていないと主張する。「(リック・)スコット委員長とNRSCは共和党予備選の投票者の意思を尊重する。すべての段階で候補者を支えられたことに誇りを持っている」と述べ、「我々の候補者を嫌う人は、彼らを選んだ共和党の有権者を嫌うということだ」と語気を強めた。

フロリダ州選出の上院議員であるスコット委員長は、52議席獲得という強気の予想を立て、55議席の可能性まで口にしていた。一方、マコネル氏は議席予想を控え、上院選はジャンプボールの奪い合いのようなものとの見方を長年示している。

「我々のやり方は、(過半数の)51議席獲得に向けた現実的な道筋に活動を集中させるというものだ。巨大な赤い波など望まない」と前述のロー氏は語る。

SLFとNRSCの戦略上の違いはまだある。一つは発信するメッセージだ。マコネル氏は選挙をバイデン氏の政策に対する審判として位置付けたかった。一方スコット氏は、各共和党候補の公約を周知する場にしようと努めた。

もう一つはお金の使い方だ。NRSCは民主党候補を「早く、徹底的に」特徴付けようとして、選挙戦の早い段階で資金を投じた。だが、党内のスコット氏に批判的な人々からは、そんな使い方をすると重要な選挙の最終盤で資金不足に陥り、候補者自身やSLFに重荷を背負わせることになるとの懸念が示された。ロー氏もNRSCに対して、資金の足りない候補に終盤に広告支援をするように助言していた。

だが、実際の広告枠の取り方が示したのは、党内のグループによって対応が異なるちぐはぐな広告戦略だった。アリゾナ州やニューハンプシャー州でSLFが資金力の差や候補者を見て資金の引き上げを決めたタイミングで、NRSCは両州の候補に資金をつぎ込むと発表した。

共和党が抱える他の問題

人工妊娠中絶に関しては今年6月、最高裁がその権利を認めた「ロー対ウェイド判決」を覆す判断を下した。多くの米国人が中絶の権利を支持する一方、保守層は50年近くそれに反対する戦いを続けてきた。そんな中、共和党は判決を発端とする中絶を巡る全国規模の対立に不意を突かれたように見える。

中絶に反対する一部の団体からは共和党の指導部に対して、党を一致結束させる戦略を練らなかったことへの批判の声が上がった。激しい選挙戦の中、中絶を争点にするのを避けようとした候補者にも厳しい目が向けられた。

反中絶を掲げる団体、スーザン・B・アンソニー・プロライフ・アメリカのマージョリー・ジョーンズ・ダネンフェルサー会長は、フロリダ州のデサンティス知事やテキサス州のアボット知事らのような保守派の勝利を称賛しつつ、ペンシルベニア州上院選で敗れたメフメト・オズ氏をはじめとする候補者らについて、熱い争点を避けようという弱気な立場をとったために敗北したとの見解を示した。

調査会社エジソン・リサーチがCNNや他の報道機関のために実施した出口調査によると、ペンシルベニア州の上院選では人工妊娠中絶の問題が最上位の争点だった。オズ氏は先月の討論会で、女性や医師、地元の政治家に判断を任せるとの立場を示していたが、中絶を重視していた有権者の間では得票が伸びなかったようだ。

ある下院の共和党議員も、人工妊娠中絶について党としてまとまったメッセージを打ち出せなかったことが党にとって痛手だったと述べた。大半の共和党員が「ロー判決後は女性に背を向けていた状態」だったという。

「党が前に進むのを見たい」

一方、民主党が選挙戦で発信したメッセージの重要な部分は、共和党の議員と党内のトランプ派とを結び付けることだった。共和党の対立候補者らを「МAGAの過激派」に仕立て上げるこの戦略について、当時共和党側は効果がないと一蹴していた。

民主党の選挙委員会のトップを破ってニューヨーク州下院選を制したマイク・ローラー氏はCNNの番組で「共和党が前に進むのを見たい」と発言。「未来に集中していれば、過去に向かうことも少なくなると思う。それに人々は今、本当に胸を躍らせているのではないか。国として直面する課題を乗り越えるチャンスがあることに対して。それらの課題とその重要性にもっと集中しなくてはいけない。強烈な個性よりも大事なことだ」と語った。

トランプ氏は投票日前の数週間、頻繁にメディアに登場するようになった。だが、それによってバイデン政権に対する審判という選挙の位置付けは薄れ、民主、共和のどちらの党を選択するかという性格が強まった。

共和党のあるベテラン下院議員や資金管理団体のトップは、トランプ氏の再登場は党にとって不利益だったとの考えを示唆した。

とはいえ共和党の誰もがトランプ氏に責任を転嫁しているわけではない。引き続き下院共和党会議議長の就任を目指し、トランプ氏が次の大統領選に出馬した場合は副大統領候補になるとの観測も浮上するエリス・ステファニク下院議員は、トランプ氏の再出馬を全面的に支持すると発言。党を挙げてトランプ氏の下で結束するよう呼び掛けた。

CNNに宛てた声明の中でステファニク氏は「誇りをもってドナルド・トランプを2024年の大統領に推薦する」「今こそ共和党は、米国で最も人気の共和党員を中心に団結するべきだ。保守的な国家統治にかけて、彼には折り紙付きの実績がある」と強調した。

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