トランプ氏や共和党員、すでに中間選挙の結果に疑義

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米国のトランプ前大統領や共和党議員から、すでに中間選挙の正当性に対する疑念の声が出ている/Stephen Maturen/Getty Images

米国のトランプ前大統領や共和党議員から、すでに中間選挙の正当性に対する疑念の声が出ている/Stephen Maturen/Getty Images

ワシントン(CNN) 米国のドナルド・トランプ前大統領は1日、ソーシャルメディアへの投稿で、激戦州ペンシルベニアの中間選挙の正当性に疑義を唱え、「まただ! 不正選挙だ!」と書き込んだ。

トランプ氏が証拠とする右派ニュースサイトに掲載された記事には、不正選挙の証拠はまったく示されていない。その代わりに、詳しい説明もなく、不在者投票のデータに対して根拠のない疑問を呈している。

2020年、トランプ氏と支持者らは、「選挙が盗まれた」という選挙後の虚偽の主張に向けて何カ月も下地作りに励み、長期間にわたって大統領選の結果に対する信頼性を損なおうとしてきた。そして今、22年の中間選挙投票日の数週間前から、一部の共和党候補者は同様の、同じように真実味に欠ける物言いを展開している。

ペンシルベニア州の集計に関する事実無根の疑念

連邦上院議会の行方を左右するかもしれないペンシルベニア州の中間選挙で、事実無根の疑念を広めようとする共和党員はトランプ氏だけではない。

ペンシルベニア州のリー・チャップマン州務長官代理は先週、NBCニュースに出演し、票の集計が完了するまでには「数日」かかる可能性があると発言した。これを受けて、州知事選の共和党候補者ダグ・マストリアーノ氏は、右派系の番組に出演し、「八百長をしかけるつもりだ」と語った。マストリアーノ氏は、20年大統領選について、虚偽の陰謀論をたびたび広めてきた人物。出演した番組は、リベラル系団体「メディア・マターズ・フォー・アメリカ」の監視対象となっている。

実際はそうではない。単に集計に時間がかかるというだけだ。チャップマン氏も指摘しているように、共和党が支配するペンシルベニア州議会が、投票日の朝を迎える前に各郡で郵便投票を開票できるようにする法案を否決したのが理由だ。

だが、名だたる共和党員がこの主張に乗っかった。テッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)はチャップマン氏の発言に関する記事のリンクをツィートし、「なぜ民主党の州ばかりが集計に『数日』もかかるのか? 他の地域は選挙当日の夜に集計を完了させているのに」と続けた。

共和党寄りの小さな地方の郡と比べると、民主党寄りの大都市は集計する票の数がはるかに多い。そうした事実を別にしても、クルーズ議員の主張はまったくのでたらめだ。

全米のどの郡でも、選挙当日の夜に集計作業を終えることはない。これは、ファクトチェック専門サイト「ポリティファクト」が指摘しているように、クルーズ議員の地元であるテキサス州の共和党寄りの郡でもそうだ。実際のところ、ほとんどの場合、選挙当日の夜に最終集計を出すことは不可能だ。

共和党色が強い州でも、一部の州では消印が投票日前であれば、投票日以降に届いた不在者投票や海外在住の米国民や軍関係者からの不在者投票も含めて、集計対象になる。有権者が投票日の数日後に署名を訂正したり、投票日に身分証明書を忘れた際に後日提示できたりする州もあり、その中には共和党の州も含まれている。

選挙当局が投票日の夜に当選者を発表したり、最終集計を公式発表したりすることはない。むしろメディア媒体が不完全なデータをもとに、非公式の当選予測を行っているに過ぎない。

フェターマン候補の当選に備えた先制攻撃

ペンシルベニア州上院選の民主党候補ジョン・フェターマン州副知事の健康問題も、想定される選挙結果に備えて先に疑念を植え付ける口実として利用されている。

トランプ氏が20年にジョー・バイデン氏に敗れた後、一部の右派系パーソナリティーは、バイデン氏が非常に劣勢だったことを理由に、選挙が盗まれたに違いないと力説した。「メディア・マターズ」が指摘しているように、先週にはFOXニュースのゴールデンタイムの司会者タッカー・カールソン氏がペンシルベニア州上院選について似たような主張を展開した。カールソン氏によれば、今年5月に脳卒中を起こして以来、公の場での発言や聞き取りに問題を抱える候補者が当選するなど「明らかにばかげている」ため、人々はフェターマン氏の当選を受け入れるべきではないという。

だがバイデン大統領が20年に8万票以上のリードで勝利した州で、フェターマン氏の当選を疑う理由はないだろう。フェターマン氏は、すべてではないにしても、ほとんどの世論調査でリードしている。ペンシルベニア州の有権者が共和党候補のメメット・オズ氏よりもフェターマン氏を依然として支持していることは世論調査でもたびたび確認されている。

デトロイト市の票の正当性に対する疑念

黒人人口の多い民主党寄りの都市がそうであるように、ミシガン州デトロイト市もトランプ氏らから虚偽の陰謀論の標的にされた。そして22年、ミシガン州の州務長官選に出馬している共和党候補は、デトロイト市で投じられた数万票の正当性に早くも異議を唱えている。

20年大統領選の否定論者で、ミシガン州の州務長官選に立候補している共和党のクリスティーナ・カラモ氏は、投票日まで2週間を切ったところで訴訟を起こした。デトロイト市の不在者投票に関し、本人が事務局窓口で入手した投票用紙のみを「有効票」と宣言して、それ以外の投票用紙の使用を「差し止める」よう裁判所に求めたのだ。この訴えは、すでにデトロイト市民が合法的に投じた数千票が集計されなくなる可能性を意味する。ミシガン州の法律では、市民には郵便で不在者投票用紙を申請する権利が認められている。

地元紙デトロイト・ニュースによれば、カラモ氏の弁護士は4日の最終弁論で訴えの内容を曖昧(あいまい)にぼかした。これまでのところ、他の中心的な共和党員は訴訟から距離を置いている。

とはいえ、世論調査では追う立場のカラモ氏にとって、この訴訟は敗戦結果を根拠なく否定するお膳立てを整えているといえそうだ。

曖昧な中傷

他の共和党候補者は、民主党が投票日当日や集計期間中になんらかの不正を働く可能性をほのめかしている。

米紙ワシントン・ポストの報道によれば、ウィスコンシン州のロン・ジョンソン上院議員(共和党)は報道陣に対し、再選をかけた選挙戦の結果を受け入れるかという点について「何が起こるか次第だ」と語り、「投票日当日に何かあるのではないだろうか。民主党は何か企んでいるのでは」と続けた。

ニュースサイト「デイリー・ビースト」は、接戦のアリゾナ州上院選に出馬している共和党のブレイク・マスターズ氏の発言を報じている。マスターズ氏は10月の集会で、仮に自分が民主党現職のマーク・ケリー議員に3万票差で勝ったとしても、匿名の人々がケリー議員のために「4万票を発見」することはないだろうということが事実でないことを証明できないと語った。マスターズ氏は6月にも似たような発言をしている。

州を問わず、数万単位で不正票が集計される可能性があるという主張にはなんの根拠もない。だがマスターズ氏の発言やカラモ氏の訴訟は、20年にトランプ氏が選挙前に展開した発言と同じ効果を上げている。主要な共和党有権者は、自分たちの思い通りにいかない選挙結果を一切信用しなくなるだろう。

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