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トランプ氏めぐる報道が再燃、中間選挙で共和党に逆風となる可能性も

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米国のトランプ前大統領。トランプ氏をめぐる報道が秋の中間選挙で野党・共和党にとっての逆風となる可能性もある/Brandon Bell/Getty Images

米国のトランプ前大統領。トランプ氏をめぐる報道が秋の中間選挙で野党・共和党にとっての逆風となる可能性もある/Brandon Bell/Getty Images

(CNN) 中間選挙はたいてい予想通りの筋書きをたどる。政権与党は上院で議席を減らすが、特に下院で議席を落とす。政治アナリストはこれを「大統領のハンディキャップ」と呼んでいる。

だが、歴史はあくまでも指針に過ぎない。必ずしも現在の情況を類推できるとは限らない。

今年は正当な選挙で選ばれたジョー・バイデン大統領がいる。だが同時に、米連邦捜査局(FBI)の家宅捜査を受け、再選をかけて敗れた選挙は不正だったと虚偽の主張を続けるドナルド・トランプ前大統領もいる。

こうした尋常ではない状況からこの1週間の政情を振り返りつつ、2人の大統領が脚光を浴びる中、大統領のハンデに何が起きているのかひもといてみよう。

共和党の議席奪還に水を差しかねないトランプ氏

中間選挙に関する筆者の記事を読んだ人は、11月の民主党の勝算にどれほど懐疑的かお分かりだろう。こうした見方の根底には、大統領のハンデという過去の事例があった。だが時には目の前の事実を直視して、思っていたのとは事情が違うことに気づかなくてはならない。

上院・下院での過半数維持を目指す民主党は支持基盤を広げてきているが、それにはトランプ氏も大いに関係している。例年の中間選挙のハンデを、自身のハンデで上書きしているのだ。

「もし今日議会選挙が行われたら、民主・共和のいずれに投票するか」という世論調査では、現時点では両政党ともほぼ互角。しいて言えば、民主党が平均1ポイント未満でリードしている。夏が始まったころは共和党が3%近くリードしていた。

中絶を合衆国憲法上の権利だと認めた「ロー対ウェイド判決」が覆り、ガソリン価格が下がるなど、様々な出来事がこうした政治的転換の原因になったと思われる。

だがインターネットでの検索動向を見れば、トランプ氏も大きな要因であることは明白だ。今年上半期にバイデン氏とトランプ氏をグーグル検索した人数をみると、両者の割合はほぼ五分五分。だが過去90日間でみると、バイデン氏またはトランプ氏いずれかの検索件数のうち、トランプ氏が占める割合は60%手前まで増加した。過去30日間では60%を超えている。

前大統領の検索件数が現大統領より多いなど、ふつうなら考えられないだろう。トランプ氏やバラク・オバマ氏も、大統領在任中のこの時期に前任者と比較した検索トラフィックの割合は限りなく90%に近かった。

年明け以降、バイデン氏と比較したトランプ氏の検索割合の14日間移動平均と、政党支持世論調査における民主党のリードとの相関係数は、最高で0.7(マイナス1以上プラス1以下の範囲)。統計的に侮れない関係性にある。

言い換えれば、トランプ氏を思い浮かべる人が増えるほど、民主党が優勢になるということだ。

もちろん、これは共和党にとって望ましくない。この1カ月でバイデン氏の人気は高まっているものの(それも急激に)、支持率はそれほど高くない。大統領の支持率が45%を下回ると、政権与党は議席を大幅に落とす傾向にある。

だが、トランプ氏の人気はバイデン氏よりもはるかに低い。米紙ウォールストリート・ジャーナルが先週発表した世論調査では、トランプ氏の好感度(支持率から不支持率を引いた数字)はマイナス19ポイントだった。バイデン氏のマイナス8ポイントよりもかなり悪い。

トランプ氏に対する否定的な見方よりも、現職大統領であるバイデン氏への否定的な意見の方が重大だと思うかもしれないが、そうとも限らない。

NBCニュースの最新の世論調査を例に挙げよう。「中間選挙での議会への投票は、バイデン氏またはトランプ氏いずれかへの支持表明になるか」という質問に対し、有権者の回答はバイデン氏支持、トランプ氏支持いずれも44%と同率だった。言い方を変えれば、票を左右する影響力という点では前大統領と現大統領も互角ということだ。

これらは何を意味するか。今回の選挙で民主党はさほど多くの議席を失わずに済むかもしれない。下院で失う議席数は20席未満にとどまるだろうというのが大方の予測だ。上院では、僅差(きんさ)ながらも過半数を維持するとみられている。

通例の中間選挙をふまえれば、民主党はこの結果を喜んで受けいれるべきだろう。

支持を伸ばすバイデン氏

トランプ氏がメディアを独占する一方、現大統領の支持率では珍しい現象が起きている。中間選挙を控え、支持率が上昇しているのだ。

クイニピアック大学による最新の世論調査では、バイデン氏の支持率は31%から40%と9ポイントも上昇した。同氏の平均での支持率がここまで落ち込んだことはなく、実際の上昇率もおそらく9ポイントまでは至っていないだろうが、最近の傾向を表している。

各種世論調査を平均すると、バイデン氏の支持率は約42%にまで上がった。7月最後の10日間の約37%からの上昇で、7月末以来バイデン氏の支持率は週に1ポイントずつ増加している。

たしかに歴史的にみても、大統領1期目のこの時期としてはバイデン氏の支持率は低い部類であることに変わりはない。

だが、バイデン氏の大統領の任期は完全に慣例通りとはいかない。過去4代の大統領の中でも、任期中の同時期にこれほど支持率が急増したケースは一度もない。

バイデン氏の支持率は落ちるところまで落ちて、あとは上がるしかなかったのだという見方もできるだろう。たしかにある程度は正しい。通常支持率は50%のラインに向かって落ちるものだ。(いわゆる「平均回帰」)。

だが、バイデン氏もいくらか人気取りに走ったところがある。大多数の有権者が、大統領が署名した包括的な医療・気候変動法案を支持している。また、学生ローン返済の減免も支持されている。

それに加え、バイデン氏は支持基盤の有権者からだけ支持を回復しているわけではない。たしかに、世論調査の平均をみると、民主党内部での支持率は6ポイント前後上昇している。だが無党派層からも同等の支持を集めているのだ。

ペンシルベニア州の知事選や上院議員選挙の民主党候補者が、バイデン氏と並んで公の場に立ちたがるのもうなずける。バイデン氏こそ民主党員から高い支持を集めている人物であり、以前ほど無党派層から毛嫌いされてもいない。

もちろん、戦略がどこまで功を奏することになるかは数カ月後にわかるだろう。上昇に転じたとはいえ、バイデン氏の支持率はいまだ高くない。来る11月に民主党が上院・下院の両方で過半数を割ることになれば、彼らも大統領を支持したことを後悔するかもしれない。

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