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経済破綻を回避したロシア、だが衰退はすでに始まっている

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ロシア政府は2014年のクリミア半島併合以降、経済の「要塞化」を進めてきた/Natalia Koleniskova/AFP/Getty Images

ロシア政府は2014年のクリミア半島併合以降、経済の「要塞化」を進めてきた/Natalia Koleniskova/AFP/Getty Images

ロンドン(CNN Business) ウクライナ侵攻から6カ月、ロシアは予想外の消耗戦に足を取られているが、別の戦いでは成功を収めつつある。石油の輸出に依存したロシア経済は深刻な不況に陥っているものの、想定していたよりもはるかに持ちこたえている。

「モスクワ市内を車で走っていると、道路は相変わらず渋滞している」。こう語るのは、1990年初期にロシア経済相を務めたアンドレイ・ネチャーエフ氏だ。

これは中国とインドが安いロシア産石油にすぐさま飛びついたおかげだ。だがネチャーエフ氏をはじめとする専門家は、ロシア経済がすでに衰退し始めており、西側からの制裁によって長期的な停滞を迎える可能性が高いと指摘する。

欧米ブランドが一斉にロシアから撤退した後、入居していた店舗がいくつかもぬけの殻になっていることを除けば、表面的にはほとんど何も変わっていない。マクドナルドは現在「フクースナ・イ・トーチカ(ロシア語で『おいしい、それだけ』の意味)」と名称を変え、スターバックスも「スターズ・コーヒー」という似たような店名で段階的に営業を再開している。

欧米企業の脱ロシアと、ロシアを支えるエネルギー輸出や金融制度に的を絞った西側からの相次ぐ制裁は、たしかに影響を及ぼしてはいるものの、多くの人々が予想していたほどではない。

ロシア最大級の経済混乱期に采配を振るい、市場経済へと国を移行させたネチャーエフ氏は、こうした状況の一部をロシア中央銀行の功績とみている。

実際のところ、通貨ルーブルは対ドルで今年前半に過去最安値を記録した。ウクライナ侵攻を受け、西側諸国がロシアの6000億ドル相当の外貨準備を半分近く凍結したためた。だがそれ以降は盛り返し、ルーブルの対ドル価格は2018年来の高水準にまで戻っている。ジョー・バイデン米大統領がルーブル(ruble)を紙くず(rubble)にすると警告したのを覚えているだろうか。

これは主に、春に行われた積極的な資本規制と利上げによるものだ。現在はほぼ元に戻り、金利は戦争前よりも低い水準にある。ロシア中央銀行によれば、インフレ率は4月に約18%とピークを迎えたが、現在は減速して、年間では12~15%に落ち着くだろうとみられている。

中央銀行は今年の国内総生産(GDP)予測も上方修正した。4月の段階では8~10%の経済縮小が予測されていたが、現在の予測は4~6%減。国際通貨基金(IMF)の見通しも6%減だ。

14年のクリミア併合以来、西側諸国の制裁を機にロシア政府が8年間準備を進めていたことも功を奏した。

「中央銀行はすでに独自の代替決済システムを立ち上げていたため、マスターカードとビザの撤退は国内の決済システムにほとんど影響しなかった」(ネチャーエフ氏)

ロシアは17年、クレジットカード「ミール」と独自の決済処理システムを立ち上げている。

ロシアおよびユーラシア大陸の多国籍企業を対象にコンサルティング業務を行う「マクロ・アドバイザリー」の創業パートナー、クリス・ウェーファー氏によれば、マクドナルドやスターバックスのロシア人ファンが代替のファストフードを入手できたのには理由がある。

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