ANALYSIS

ロシア海軍に巨大潜水艦、海で「新たな冷戦」始まるか

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ロシア海軍の原子力潜水艦「ベルゴロド」=2019年/Oleg Kuleshov/TASS/ZumaPress

ロシア海軍の原子力潜水艦「ベルゴロド」=2019年/Oleg Kuleshov/TASS/ZumaPress

ソウル(CNN) ロシア海軍に、これまでに知られている中で世界最長の潜水艦が納入された。造船業者は調査船をうたっているが、偵察や核兵器のプラットフォームになるとの指摘も出ている。

ロシア最大の造船会社セブマシュ造船所によると、潜水艦「ベルゴロド」は今月、白海に面する同国北西部セベロドビンスク港でロシア海軍に引き渡された。

専門家によれば、ロシアのオスカー2級誘導ミサイル潜水艦を改良して設計されており、ゆくゆくは世界初の核装備ステルス魚雷や機密情報収集機器の搭載を見越して、全長を長くしているという。

ベルゴロドがロシア艦隊にこうした新たな能力を追加できれば、今後10年海面下で冷戦シーンへと戻る舞台が整う可能性がある。そこは米ロの潜水艦が追いつ追われつの緊迫したにらみ合いをする世界となる。

全長184メートルを超えるベルゴロドは、現存する最大の潜水艦だ。全長171メートルの米海軍オハイオ級弾道ミサイルおよび誘導ミサイル潜水艦よりも大きい。

ロシア国営タス通信の報道によれば、ベルゴロドは2019年に進水した。試運転や検査を終えた後、20年にはロシア海軍に引き渡される予定だったが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で納期が遅れた。潜水艦の配備開始時期については報じられなかった。

「巨大魚雷」

ベルゴロドがロシア艦隊のどの原子力潜水艦とも、また世界中で就航している原子力潜水艦とも一線を画しているのは、その任務だ。

タス通信は、潜水艦には現在開発中の核魚雷「ポセイドン」が搭載されるだろうと報じている。ポセイドンは数百マイル先から発射され、海底に沿って進んで沿岸防衛の目をかいくぐるように設計されている。

「核を搭載したこの『巨大魚雷』は世界史上他に類を見ない存在だ」。米国の潜水艦専門家H・I・サットン氏は3月、自ら運営するウェブサイトCovert Shoresにこう書いている。

「ポセイドンは全く新しい種類の兵器だ。ロシアおよび西欧の海軍戦略のあり方を変え、新たな要求や対抗兵器につながるだろう」(サットン氏)

米ロいずれの政府関係者も、魚雷は数メガトンの弾頭を複数運ぶことが可能で、魚雷によって発生した放射性の波で、攻撃目標となった沿岸部広域では数十年人が住めなくなるだろうと語っている。

20年11月、国際安全保障と核不拡散を担当していたクリストファー・A・フォード米国務次官補(当時)は、ポセイドンは「米国の沿岸都市を放射性の津波であふれさせる」ように設計されていると発言した。

米国議会調査局(CRS)が4月に発表した報告書には、ポセイドンはロシアが核攻撃を受けた後、敵国に反撃する報復兵器として目的が設定されていると書かれている。

CRSの報告書にはベルゴロドが8基のポセイドンを搭載可能だとある。もっとも一部の武器専門家は、ポセイドンの搭載可能数は6基の可能性が高いと考えている。

サットン氏は19年、直径2メートル、全長20メートルあまりと見られるポセイドンが「国を問わず、これまで開発された中で最大の魚雷だ」と書いた。

「通常の重量級魚雷と比べると、30倍の大きさだ」(サットン氏)

魚雷に対する疑念

CSRの報告書によれば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は18年の演説でポセイドンを絶賛し、「静音で、高い操作性を誇り、敵から隙をつかれるような脆弱(ぜいじゃく)性はほぼない」と発言した。

ポセイドンに通常弾頭を使えば、「空母打撃群、沿岸要塞(ようさい)、インフラを含む」攻撃目標に向けて使用することも可能だと発言したとも伝えられている。

だがポセイドンに対する疑念や、最終的にロシアの武器群に加わるのかに対する疑問も存在する。

「魚雷せよプラットフォームにせよ、まだ開発段階の技術だ」と言うのは、米科学者連盟で核情報プロジェクトを率いるハンス・クリステンセン氏だ。

同氏いわく、ポセイドンは20年代後半までは配備準備ができないと見られている。CRSも、27年までポセイドンが配備されることはないと踏んでいる。

またクリステンセン氏はベルゴロドについて、実際はハバロフスク級原子力潜水艦の試験艦だと指摘する。同級潜水艦は今年第1号が進水する可能性がある。

そこへきて、ウクライナでの戦争でロシア軍の不手際だ。それは兵器の設計のまずさや、軍事兵器の管理の怠慢を許した汚職に一因があると軍事アナリストは考えている。

「ウクライナの戦争で、ロシアの最新兵器が決して特効薬ではなく、信頼性に問題があることが浮き彫りになった。大陸間核魚雷も同じ問題を抱えていると信じる理由は十分ある」(クリステンセン氏)

だが、潜水艦やポセイドンがうたい文句通りではないとたかをくくることに警鐘を鳴らす専門家もいる。

「ロシアの地上軍や戦術空軍から受ける印象――とりわけウクライナでのお粗末な計画の実施を目撃して受けた印象――を、水中や核の戦力にそのまま置き換えると、ロシア戦略軍の能力を過小評価する危険を冒すことになりかねない」と語るのは、トマス・シュガート氏。米海軍潜水艦の元艦長で、現在は新米国安全保障センターのアナリストを務めている。

「これはたとえば、混乱の中で米軍がアフガニスタンから撤退するのを見て、核任務を担った米国の弾道ミサイル潜水艦の能力に疑問を呈するようなものだ。そうした結論に至った敵国は、多大な危険を冒すことになるだろう」

「水中でのいたちごっこ」

CRSによれば、ベルゴロドはポセイドンを搭載可能な4隻の潜水艦の第1号に過ぎない。2隻は太平洋艦隊に、残り2隻は北方艦隊に配備される予定だ。

Covert Shoresのサットン氏は20年、残り3隻のポセイドン搭載可能な潜水艦(前述のとおりハバロフスク級)は「新たな手ごわい強敵になるため、20年代を決定づける潜水艦になる見込みが高い」と語る。

「他国の海軍が追従することはないだろうが、対抗したいとは考えるだろう」とサットン氏は述べた。「水中では、米国海軍と(英国)王立海軍の攻撃型潜水艦がロシア軍を追跡するいたちごっこが再び激化するかもしれない。北極や北大西洋、北太平洋で新たな冷戦」が訪れる可能性もあると同氏は書いている。

ベルゴロドは将来ポセイドンの発射試験艦になる可能性がある一方で、情報収集プラットフォームとして運用されるかもしれないとサットン氏は言う。

「乗組員はロシア海軍でも、運用は秘密裏に活動する深海調査本部(GUGI)の下で行われるだろう」とし、また「秘密の特別任務を実行するために」各種の小型潜水艦や潜水艇を積んでいるだろうとの見方も示す。

今月上旬の報道声明で、ロシア造船会社はベルゴロドに殺傷能力がないことを強調し、「世界の海洋の最も遠い地域で科学探索や救助活動を行う新たな機会をロシアに」もたらすものだと述べた。

本稿はCNNのブラッド・レンドン記者による分析記事です。

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