OPINION

民主党マンチン議員、バイデン政権の大型法案を撃沈 その理由は?

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バイデン政権の大型歳出法案に反対を表明した民主党の重鎮、マンチン上院議員/Anna Moneymaker/Getty Images

バイデン政権の大型歳出法案に反対を表明した民主党の重鎮、マンチン上院議員/Anna Moneymaker/Getty Images

(CNN) アリゾナ州選出の共和党上院議員、故ジョン・マケイン氏は個人としても、政治家としてもその勇敢さで永遠に人々の記憶に残るだろう。集団から逸脱することを恐れず、自党の仲間から裏切りだと叫ばれてもその姿勢に変わりはなかった。

チャーリー・デント氏/CNN
チャーリー・デント氏/CNN

マケイン氏が2017年の上院議場で親指を下に向け、オバマケア(医療保険制度改革法)廃止法案にとどめを刺した劇的な瞬間は記憶から消えることがない。そして今回、民主党のジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州選出)が19日にFOXニュースの司会者ブレット・ベアー氏とのインタビューで、民主党のビルド・バック・ベター(よりよい再建、BBB)社会歳出法案を支持しないと発言した瞬間は、マケイン氏のそのときに匹敵するものだったと言えよう。

マンチン氏は17年のマケイン氏と同様、息の長い、持続可能な改革には超党派の合意と妥協が必要だということを知っていた。マンチン氏は最近成立した超党派のインフラ法案の制定作業をリードし、超党派の行動への献身ぶりを示してきた。そして同氏は何カ月にもわたって、BBB法案の規模と範囲に反対や留保の姿勢を示してきた。

マンチン氏を批判するバーニー・サンダース上院議員やアヤナ・プレスリー下院議員などは、ベアー氏とのインタビュー直後からマンチン氏を激しく非難。CNNのジェイク・タッパー氏の番組「ステート・オブ・ザ・ユニオン」でのインタビューで、サンダース氏はマンチン氏には胆力や勇敢さがないとしつつ、大好きで十八番の医薬品や保険の会社に対する攻撃を展開した。

プレスリー氏はマンチン氏が「ゴールポストを動かした」「誠実に交渉したことが一度もない」と発言した。ホワイトハウスのジェン・サキ報道官はマンチン氏に追い打ちをかける驚きの声明を発表し、「姿勢の不可解な転換と大統領に対する約束違反」に言及した。

だがちょっと待ってほしい。不可解とされることを説明しよう。真実はサンダース氏やプレスリー氏といった進歩派が踏み出し過ぎて、バイデン氏の指示を完全に読み誤った点にある。マンチン氏はこの何カ月もの間、率直で透明性のある姿勢を貫いてきた。彼はこの夏に自分の方針や姿勢、越えてはならない一線を記した書簡まで送り、民主党のチャック・シューマー上院院内総務がこれに署名している。

マンチン氏は何カ月にもわたり、1兆5000億ドルを超える数値には動かないと言明し、BBBの数多くの項目で政策上の反対を表明してきた。同氏は実際、BBBの費用を大幅に低く評価する予算上のからくりやごまかしについて、根拠に基づいた異議を唱え、詳しく説明した。ペンシルベニア大学ウォートン校の予算モデルは今年早く、この歳出と歳入の条項が永続化すれば、BBBの実際の費用は4兆6000億ドルに膨れ上がる――からくりなしで、10年間の予算期間にかかる現実的な仮定を置けば――と試算した。

マンチン氏こそが現実的に駆け引きをする人物で、同氏を批判する人物の多くはそうではない。極左はBBBをすべて、今、欲しているのだ。さらに言えば、マンチン氏を批判する人々はウェストバージニア州で同氏に政治的な自殺をさせたがっている。同州の有権者には共和党支持者が多く、そうした人々にはほぼ響かない政策課題を彼に求めることで。

民主党のアビゲイル・スパンバーガー下院議員(バージニア州選出)やマンチン氏が分かっているように、「誰も彼(バイデン氏)をFDR(フランクリン・デラノ・ルーズベルト)となるように選んだわけではない。普通の存在、混乱を止める存在として選んだのだ」。別の言い方をすれば、バイデン氏はつなぎ役として選ばれたのであり、変革者としてではない。もし有権者がバイデン政権に変革を求めるなら、フランクリン・デラノ・ルーズベルトやリンドン・B・ジョンソンと同じく彼に議会の多数派を与えたはずだったが、ほぼ確信的にそうはしなかった。マンチン氏は進歩派からの度重なる圧力を受けた後の9月30日、「私はどんな方法や形、または(形態)であれ、リベラルになったことは一度もない」と言明。もし進歩派がもっと大きな財政調整措置の法案を望むなら「もっと多くのリベラルを選挙で選べ」と語った。

マンチン氏は何カ月もBBBにノーを突き付けてきた。進歩派がそれを聞きたくなかっただけなのだ。だがそんな彼らも次の内容はよく聞いた方がいい。マンチン氏が民主党議員を求めるよりも民主党議員がマンチン氏を求める度合いの方がはるかに大きいということ、そして、非常にもろい上院の多数派を維持したいのなら、彼への逆襲は考え直した方がいいということを。

結局のところ、BBBが失敗したのは――少なくとも今回については――民主党がやり過ぎたからだ。民主党と共和党の間で揺れる有権者たちは、2020年の選挙でバイデン氏に報いた一方で、投票用紙の下の方にある共和党の候補者を支持し、民主党の左派が行き過ぎないようにチェックと抑止を期待した。民主党員は国民に対しBBBは全く負担にならないと語りかけることで、揺れる有権者たちの多くが持つ感性と知性をばかにしたのだ。さらに、下院民主党の穏健派は上院を通過できない論争を呼ぶ法案に賛成票を投じ、政治的に傷つく結果となった。下院共和党も17年、マケイン氏がオバマケア廃止法案で親指を下に向けとどめを刺す前に、同じ破滅的な過ちを犯している。

極左や極右の過激論者たちは、こうした厳しい教訓を学ぼうとしない。なぜならそれは不都合だからだ。政治的な誘因が彼らに求めるのは、自党の基盤の最も熱狂的な集団を満足させることだ。合意や妥協などとんでもないのだ。

マケイン氏と同じように、マンチン氏の恩に感謝すべきだ。誰か彼の胸にメダルをつけてあげていい。

チャーリー・デント氏はペンシルベニア州選出の元共和党下院議員で、15~17年に下院倫理委員会委員長、15~18年に下院歳出委員会の軍事建設・退役軍人・関連機関小委員会委員長を歴任した。現在はCNNの政治コメンテーターを務める。記事の内容は同氏個人の見解です。

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