第2次大戦中に外国の秘密諜報員を収容、人里離れたスコットランドのロッジが売りに

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寝室6部屋、応接室4部屋を備える英スコットランドの「インバレア・ロッジ」/Galbraith

寝室6部屋、応接室4部屋を備える英スコットランドの「インバレア・ロッジ」/Galbraith

(CNN) 第2次世界大戦中、外国の秘密諜報(ちょうほう)員を厄介な問題から遠ざけるために使われていた英スコットランドのロッジが、現在売りに出されている。

スコットランド・ハイランド地方の奥深くにひっそりと立つインバレア・ロッジは、戦時中の英国で創設された諜報・工作機関、特殊作戦執行部(SOE)が接収した。その後家族向けの住宅に再び改修され、現在は135万ポンド(約2億6300万円)を超える値段で売りに出されている。

農村に囲まれ、フォートウィリアムからの距離は27キロと、詮索(せんさく)好きの目も全く届かない。

「第6特殊研修施設」として知られた当該のロッジは、「落後した」外国の工作員を収容するのに使われた。同施設を率いていたアルフレッド・ファイフ氏が明らかにした。同氏は2002年、ロンドンの帝国戦争博物館のインタビューに答え、同施設に在任した3年間を詳細に語っている。

これらの工作員は初期段階の訓練を受けたものの、何らかの理由で派遣はされなかった。08年に刊行した英国の諜報機関に関する書籍で、歴史家のエドワード・ハンプシャー氏、スティーブン・トゥウィッグ氏、グレアム・マックリン氏はそう記述する。

ナチスの高官、ルドルフ・ヘスも短期間ロッジに勾留されていた/Galbraith
ナチスの高官、ルドルフ・ヘスも短期間ロッジに勾留されていた/Galbraith

収容されていた工作員らは「監視下にこそあったが、警備が付いていたわけではない」とファイフ氏は強調。彼らが施設に送られたのは「体制転覆に関わる我々の仕事について学んだことを忘れる」ためだったと付け加えた。というのも彼らは「特定の情報を持っており、勤務を離れて自由の身にした場合、この国に危険をもたらす可能性があった」からだ。

異なる国籍の工作員たちをこのように「一つ屋根の下で」収容するのは、一つの「実験」だったとファイフ氏は振り返る。

ファイフ氏は施設の責任者として彼らと共に過ごした。施設内の1室、食料貯蔵室は、何らかの問題が起きた場合の監房として使用した。「監房を使わざるを得ないにしても、常識の範囲内で使うように」。当時の上官はファイフ氏にそう告げたという。

ファイフ氏は工作員たちに暇を与えず、農村地方全域に散らばった金属の回収や靴の修繕に従事させた。

ファイフ氏の在任中、ロッジにいた工作員は3人のみ。1人はイタリア人の技術者で、元は同国のファシスト独裁者、ムッソリーニの副官だったがやがて不和となり、フランスへ逃れた。フランスでは共産党で活動していた。

ファイフ氏の着任前はロッジに収容された最初の2人が脱走を試みていたが、ファイフ氏自身は「何のトラブルにも見舞われなかった」。例外はオランダ人1人が誰かの顎(あご)を殴り、同氏のオフィス外の壁を破ったことくらいだった。

ロッジはハイランド地方の人里離れた地域にある/Galbraith
ロッジはハイランド地方の人里離れた地域にある/Galbraith

ナチスドイツの高官、ルドルフ・ヘスも1941年、交渉者を自称して極秘で訪英した際、短期間ながらロッジに勾留されていた。その間ヘスは情報将校から尋問を受けたと、不動産仲介会社のガルブレイスは説明する。ただファイフ氏はこのことに言及していない。

SOEは第2次大戦後に解散。インバレア・ロッジもその後は放棄されたが、70年代に改修される。

現在、ロッジが歩んだ歴史の痕跡はほとんど残っていない。今のロッジは広々として快適な、スコットランドに数多く存在する家族用の住居だ。部屋の多くには薪(まき)ストーブが設置され、アイランドキッチンは陽気な黄色に塗られている。応接室は4部屋あり、寝室は6部屋。複数ある離れには、寝室2部屋を備えたコテージが含まれる。土地の面積は約12.5ヘクタールだ。

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