4000年前の手形、古代エジプトの墓で発見 模型作成した陶工のものか
(CNN) 英ケンブリッジ大学フィッツウィリアム博物館の研究チームが、古代エジプトの墓に埋葬された土製の模型「魂の家」の底部から約4000年前の手形を発見した。
この発見は、今秋に開かれる予定の展示会の準備中に偶然見つかったもの。博物館が発表した声明によると、魂の家は埋葬の際によく見られる建物の形をした粘土の模型で、亡くなった人の魂が宿る場所だったとされる。
模型の前面にはパンやレタス、牛の頭部などの供え物を置くためのスペースが設けられており、紀元前2055~1650年ごろのものと推定されている。広範な調査によって、4000年前の作成方法が明らかになった。

手形は模型を作成した陶工のものの可能性が高い/Michael Jones/The Fitzwilliam Museum/University of Cambridge
それによれば、名前の知られていない陶工がまず木の棒で2階建ての建物の骨組みを作り、その上に粘土を塗りつけて成形されたと考えられている。焼成時に木材は焼け落ちたと考えられている。
問題の手形は、魂の家の下で見つかった。粘土がまだ湿っていて窯で焼かれる前の段階で陶工が型を動かした際に形成された可能性が高い。
「装飾の湿ったニスやひつぎに指紋のこん跡が残っているのを発見したことはあるが、この魂の家の下で完全な手形が見つかるのは珍しく、興奮する」と語るのは、同博物館の上級エジプト学者で展示のキュレーターを務めるヘレン・ストラドウィック氏だ。
ストラドウィック氏は「これは、粘土が乾く前に触った職人の手形だ。エジプトの作品にこれほど完全な手形が残っているのを見たのは初めてだ。製作した人物が作業場から焼成の準備のために持ち出す様子が目に浮かぶ」と語った。

今回のような「魂の家」は古代エジプトの墓で発見される/Michael Jones/The Fitzwilliam Museum/University of Cambridge
「こうした痕跡は、作品が作られた瞬間やそれを作った人物自身に直結するものであり、まさに今回の展示の核心だ」(ストラドウィック氏)
陶器は古代エジプトの時代から日用品や装飾品として広く使われていたため、多くが今日まで現存している。特に食べ物や飲み物を収めた容器は、埋葬品として墓に納められることが多かった。
ツタンカーメンのような古代エジプトの支配者については多くが知られている一方で、その墓から見つかる数々の遺物を実際に作った人たちの物語は、あまり注目されてこなかった。
博物館によれば、粘土が容易に手に入り、陶器の価値が低かったことが、当時の陶工の社会的地位に影響を与えた可能性が高い。
今回の魂の家は「メイド・イン・古代エジプト」と題した展示の一環として公開される予定で、今回の手形を残したような当時の職人たちに焦点を当てた企画となっている。展示は10月3日に開幕する。