ナチス時代の高射砲塔がホテル兼レジャー施設に変身 独ハンブルク
(CNN) 高さ58メートル、イタリアのピサの斜塔よりやや高いが建造物として格段に重量感のある独ハンブルク・ザンクトパウリ地区の高射砲塔は、80年以上にわたり街の空での圧倒的な存在感を放ってきた。
建造はヒトラーが主導するナチス政権の時代。強制労働を活用して建てられた。ドイツの歴史上最も暗い時代の遺物だが、コンクリートの巨大な廃屋はここへ来て予想もしなかった再生を果たした。
生まれ変わった高射砲塔は、レストラン2軒と5階建てのハードロックブランドのホテル「リバーブ」を構える。ピラミッドを思わせる屋上にはバーと庭園が設置された。庭園に生い茂る植物が、コンクリートのファサードを青々と彩っている。
「リバーブ」は全134室で、宿泊料金はクラシックルームの180ユーロ(約2万9000円)から。アメニティーには55インチのフラットスクリーンテレビやアマゾンの音声サービス「アレクサ」を使った室内アシスタントが含まれる。ハンブルク全域を一望できるスイートルームの料金は269ユーロ。
最新流行のホテルにふさわしく、セルフチェックインやスマート・テクノロジー、コワーキングスペースなども取り入れている。宿泊客でなくても1階のコーヒーショップやバー、ハードロックブランドのグッズ販売店は利用が可能だ。
屋上の庭園も、一般に無料で開放されている。
ハンブルクの高射砲塔は、英国による1940年のベルリン空襲後に建てられた同様の8施設のうちの一つ。高射砲を発射する以外に防空壕(ごう)としての役割も果たした。
重さ7万6000トンのコンクリート製巨大建造物で、壁の厚さは2.5メートル。戦争が終わった後も容易に解体できず、目立つ建物であり続けた。
これまで完全に破壊された高射砲塔は、ベルリン動物園にあった1棟のみ。他は非常に人口が密集した地域に立っており、爆発物を使用して解体するのは危険が大きすぎるとAFP通信は報じている。
「建物を建て増しして緑地化する構想には、ナチスの独裁体制から残るこの巨大建造物に何か平和で前向きな要素を加える狙いがあった」。計画を支援した地元の団体に属するアニータ・エンゲルス氏はAFP通信の取材にそう答えた。
同団体は、戦時の高射砲塔の中で暮らした人々の証言や強制労働によって建設に従事した作業員数百人の記録を収集。高射砲塔の歴史が新たな章へと進むのに一役買った。
建物の1階には展示コーナーがあり、高射砲塔の歴史の全貌(ぜんぼう)を今に伝えている。