OPINION

マスク氏所有のツイッターを最初に見放すのは誰か?

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有害な形で「言論の自由」がまかり通れば、ユーザーのツイッター離れが進む可能性も/Ryan Lash/TED Conferences, LLC/AFP/Getty Images

有害な形で「言論の自由」がまかり通れば、ユーザーのツイッター離れが進む可能性も/Ryan Lash/TED Conferences, LLC/AFP/Getty Images

(CNN) 今月25日、財界が心配そうに行方を見守ってきたストーリーが劇的なクライマックスを迎えた。米ツイッターが、米電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)への自社売却で合意したのだ。買収額は約440億ドル(約5兆6000億円)。1株当たり54.20ドルで買い取った計算だ。

もしマスク氏が当初提案したことを遂行するなら、売却はツイッターにとっての破滅の予兆になる可能性がある。しかし最良のシナリオでは、売却を契機に別のSNSが立ち上がり、我々全員にとってより安全で健全な場所が生まれる展開にもなり得る。

マスク氏はかねて公言している通り、ツイッターがほぼ制約のない言論プラットフォームになるべきだと考えている。今月のTEDカンファレンスのインタビューでは、合法の言論を可能な限りプラットフォーム上に維持したいと説明。ユーザーを締め出したくはないと語った。一方でやや逆説的に、スパムやボットと呼ばれる偽アカウントを取り締まりたいとも述べていた。これらは煩(わずら)わしく、危険が潜んでいることもあるが、違法なものではない。

カラ・アライモ氏
カラ・アライモ氏

先月、マスク氏は「言論の自由は民主主義を機能させるうえで不可欠だ」とツイート。投票機能を使い、「ツイッターはこの原則を厳格に守っていると思うか」どうか尋ねた。

しかし筆者の予想は、女性嫌悪やヘイト(憎悪表現)など有害な形での「言論の自由」をツイッターで認めれば、実際のところ多くの人々を沈黙させる効果を生むということだ。それはSNSにとって破滅的な事態となるだろう。なぜなら思慮深いユーザーが、罵詈雑言(ばりぞうごん)の集中砲火を浴びるようなプラットフォームを好き好んで使い続けるはずがないからだ。

そして最初に逃げ出すのは、そうした侮蔑の中でも最悪級のものを受け取る人々となる公算が大きい。すなわち女性と有色人種だ。英誌エコノミストの調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が2020年に行った調査によれば、世界の女性の38%は自身にオンライン上の脅威が降りかかった経験を持っているという。具体的には個人情報を晒(さら)されたり、ハッキングやストーカーの被害に遭ったり、誤情報、中傷を受けるといった内容だ。また女性の85%はそうした脅威を目撃したことがあると回答した。国連によると多くの国々において、オンライン上のヘイトの犠牲になった人は少なくともその4分の3をマイノリティーに属する人たちが占めるという。

米調査機関ピュー・リサーチ・センターによれば、女性は男性よりはるかにフェイスブックやインスタグラムを使用する一方、ツイッターや米掲示板サイト「レディット」を使用する傾向は低い。後者はコメント欄で暴言を吐くなどして荒らす「トローリング」が行われることで悪名高い。(ブルームバーグ・テクノロジーの司会者、エミリー・チャン氏は著書でこう分析している。「サイバーヘイトは、フェイスブックやインスタグラムよりもレディットとツイッターでより目にする問題だ。私のフェイスブックアカウントは非公開で、こちらで友達として受け入れない限り相手は私と交流できないため、苦痛を覚えるようなコメントはほぼ全くと言っていいほど見ない」)

このことから、女性はすでに自分たちを罵(ののし)るだろうと思うSNSを避けているのが分かる。そうした悪口がひどくなれば、それはプラットフォーム上で繰り広げられる議論の種類にも甚大な影響を及ぼすことになる。

作家のリンディー・ウェスト氏は英紙ガーディアンでこう指摘した。「インターネットのトローリングは、特定の集団の人々にのみ影響を与える問題のように思えるかもしれない。しかしそれが当てはまるのは、多様な意見を欠いた世界に生きていても自分の人生にそこまでの影響はないと信じる場合のみだ。そうした世界で社会全体の言論を形作るのは第一に白人であり、異性愛者で健常者の男性と相場が決まっている」。

次に何が起きるかは容易に想像がつく。もしツイッターが包摂性を持たない場所となり、疑わしく憎悪に満ちたコンテンツを広めることで悪名を馳(は)せるなら、一般大衆がそこに関わりを持つことはないだろうし、使用も停止するはずだ。

19年のピューの調査によるとツイッターを使う米国の成人は全体の22%にとどまるが、プラットフォーム自体は我々一般大衆の言論に極めて大きな影響力を振るう。なぜならあまりにも多くの政治家、ビジネスリーダー、芸能人及び著名人がツイッターを使ってメッセージを共有しているからだ。メディアもしばしばそうした投稿をいの一番に報じている。しかし主流派のオピニオンリーダーは、自ら極端なプラットフォームと関わって評判に傷をつけたいとは思わないだろう。筆者が以前述べたように、トランプ前大統領のソーシャルネットワーク、「トゥルース・ソーシャル」がここまであまり成功していない理由も、このことからある程度説明がつく。

すでに人々はツイッターを使って、ツイッターそのものから離れようと考えている人向けの情報を投稿している。そして別のソーシャルプラットフォームに乗り換えるよう呼び掛けている(真剣さの度合いは人それぞれ)。

マスク氏がツイッターを所有することで1つ前向きな結果が期待できるとすれば、これが引き金となってより節度を持ったSNSが生まれるかもしれないということだ。インターネット活動家のイーライ・パリサー氏は26日、次のようにツイートした。「一応言っておくと、自分たちのコミュニケーションのインフラを、気まぐれで無責任な億万長者のおもちゃにしておく必要はどこにもない。僕らはイーロンが絶対に買えない公共サービスとしてのソーシャルプラットフォームを作れるかもしれない。いや、きっと作るだろう」。

筆者はパリサー氏がそれを実現するのを願っている。同氏か、あるいは他の誰か、マスク氏よりも責任もってSNSを運営するビジョンを持つ人が、今後やり遂げてくれるのを祈っている。

マスク氏が約束したことを実行するなら、それによってツイッターというプラットフォームはむしろ破壊されるのではあるまいか。それでも期待するのは、同氏による買収がカンフル剤となり、真に公共の利益に資する新たなSNSが生まれることだ。その実現はマスク氏にとって痛恨の結果だが、我々ユーザーには長きにわたる勝利となるだろう。

カラ・アライモ氏はホフストラ大学の准教授で、女性やソーシャルメディアに影響を与える問題について執筆活動を行っている。オバマ政権下では財務省国際情勢部門の報道官を務めた。記事の内容は同氏個人の見解です。

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