ハドリアヌスの長城近くで見つかった巨大な靴、古代ローマの兵士をめぐる謎が深まる
グリーン氏によれば、最近発見されたマグナ要塞の靴は、ビンドランダ要塞の靴のコレクションといくつかの類似点があるという。グリーン氏はマグナでの発掘には関わっていないが、遺物を目にしたことはある。
グリーン氏によれば、両方の遺跡で発見された靴の底は鉄製のびょうくぎで留められた厚い牛革の層でできている。マグナ要塞で見つかった靴のうち上部がまだ完全に残っているのはわずか数足だが、ビンドランダ要塞では、軍靴や作業用のブーツ、足首のすぐ下まで届くスニーカーのような靴、革製の留め具がついたサンダルなどが見つかっている。
グリーン氏によればマグナ要塞で見つかった靴の底は、砕いた植物質を使って耐水性と耐熱性のあるコーティングを施す古代のなめし技術のおかげで、地中に数千年もの間残っていた可能性が高い。この仮説を裏付けるための実験は現在も行われている。
グリーン氏によれば、特大サイズのマグナ要塞の靴の長さは、持ち主が非常に背が高かった可能性を示唆している。ビンドランダ要塞で収集された3074足のうち30センチを超えるものはわずか16足だった。
ニューカッスル大学のロブ・コリンズ教授によれば、古代ローマの軍事教本には理想的な新兵の身長について、5フィート8インチ(約172センチ)あるいは5フィート9インチと記されていることが多かった。だが、ハドリアヌスの長城周辺に駐屯していた兵士らは広大な帝国の各地からやってきたため、居住地に多様な身体的特徴をもたらしたという。
それでも、なぜマグナ要塞が特に巨大な兵士を必要としたのかは不明なままだ。
フレーム氏によれば、靴の所有者の身元を解明するため、研究者はマグナ要塞で見つかった靴に摩耗の跡がないか調べる予定だ。靴に残された足形があれば持ち主の足形を再現できる可能性がある。
だが、靴と実際の遺骨を結びつけるのは困難かもしれない。コリンズ氏によれば、ハドリアヌスの長城付近のローマ人は墓石を墓標として用い、死者を火葬するのが一般的だった。集落の周辺に残っている骨は敵の埋葬や違法な埋葬で残されたものか、あるいは偶然埋められた可能性が高い。
フレーム氏によれば、マグナ要塞で発見された数少ない骨は、あまりにも柔らかで崩れやすく、洞察を得るには至らなかったが、研究チームは新たな埋葬地の捜索を続けている。遺跡の周辺で見つかった陶器やその他の遺物も、既知の居住者の年代測定や時系列の照合に役立つ可能性がある。