天の川とアンドロメダは衝突しない?、定説は誤りだった可能性 別の銀河との合体も予測

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渦巻きを形成する天の川銀河のイメージ図。これらの渦巻きの腕の中に太陽系がある/NASA/JPL-Caltech

渦巻きを形成する天の川銀河のイメージ図。これらの渦巻きの腕の中に太陽系がある/NASA/JPL-Caltech

(CNN) 地球のある天の川銀河とアンドロメダ銀河は45億年以内に衝突する――。専門家は1912年以来、そう予測してきた。しかし新たな研究によると、実はこの二つの銀河の衝突が起きる可能性は、それほど大きくなかったらしい。

天の川銀河とアンドロメダ銀河の距離は約250万光年。毎秒約100キロの速度で互いに接近しており、一見すると、衝突・合体して「ミルコメダ」になるのは必然のように思える。

しかし、天の川銀河が属する「局所銀河群」には、小さな銀河が分かっているだけで100個もある。研究チームは、その中でも大マゼラン雲(LMC)やさんかく座銀河(M33)など、特に大きな銀河の影響を計算に入れ、今後100億年あまりの銀河系の未来を予測した。

局所銀河群の重力を計算し、ハッブル宇宙望遠鏡やガイア宇宙望遠鏡の新しいデータを使って10万回のシミュレーションを行った結果、100億年以内に天の川銀河とアンドロメダ銀河が衝突する確率は約50%という結果が出た。これまでの定説通り40億~50億年以内に衝突する確率は、約2%にとどまる。この研究結果は2日の科学誌ネイチャー・アストロノミーに発表された。

英ダラム大学のカルロス・フレンク教授によると、天の川銀河とアンドロメダ銀河がもし合体した場合、いずれ両方の渦巻き構造が破壊されて一つの楕円(だえん)銀河に生まれ変わる。「宇宙花火」と呼ばれる銀河の合体が起きると、ガスが中心部に引き寄せられてブラックホールから膨大な量の放射線が放出され、やがてブラックホールに吸い込まれる。

「これまで天の川銀河はその運命をたどると考えられていた。しかしこの恐ろしい運命は避けられる可能性が大きいことが分かった」とフレンク教授。

ただし未知の要因は多数あり、天の川銀河が最終的にたどる運命を予測することは難しい。天の川銀河は20億年以内に大マゼラン雲と衝突する可能性の方が大きいといい、そうなれば天の川銀河が根本的に姿を変えてしまう可能性もある。

大マゼラン雲が天の川銀河の周りを周回しているのに対し、M33銀河はアンドロメダ銀河の衛星にあたる。

大マゼラン雲の質量は天の川銀河の約15%にすぎない。しかし研究チームによれば、この衛星銀河からアンドロメダ銀河に対して垂直方向に重力がはたらいており、これによって天の川銀河の動きが変化して、アンドロメダ銀河と天の川銀河の衝突の可能性が低くなることが分かった。M33についても同様だった。

「アンドロメダの衛星銀河であるM33の質量が加わって、天の川銀河をアンドロメダの方向へもう少し引き寄せる」とフィンランドのヘルシンキ大学のティル・サワラ氏は解説する。「一方で、大マゼラン雲が天の川銀河をこの軌道面から引き離し、アンドロメダから遠ざけていることも分かった。大マゼラン雲がこの合体から我々を救ってくれるわけではない。それでも可能性は多少低くなる」

過去の研究では、局所銀河群の現在の位置や動き、質量に関する不確実性といった未知のデータについては、最も可能性の高い値を推定に利用していた。最新の研究ではそうした不確実なデータも含め、衝突に関係し得る22の変数を計算に入れてシミュレーションを繰り返し、100億年以内に直接衝突する確率は50%という結論を導き出した。

80億年~100億年後を予想したシミュレーションのうち約半分は、天の川銀河とアンドロメダ銀河が互いに接近して近くを通り過ぎた後、周回して元に戻るという結果が出た。しかしこうした接近遭遇によって、それぞれの銀河を取り巻く巨大なガスの相互作用が起き、最終的には衝突に至る。

将来の天の川銀河とアンドロメダ銀河の3通りのシナリオを示した画像。左上は二つの銀河が100万光年離れた状態ですれ違うパターン。右上は互いにより近づき、それぞれの銀河ハローが関与し合う。下は二つの銀河が衝突し、X状にエネルギーが広がる/NASA/ESA/STScI
将来の天の川銀河とアンドロメダ銀河の3通りのシナリオを示した画像。左上は二つの銀河が100万光年離れた状態ですれ違うパターン。右上は互いにより近づき、それぞれの銀河ハローが関与し合う。下は二つの銀河が衝突し、X状にエネルギーが広がる/NASA/ESA/STScI

「一般的に、この合体は強烈なスターバーストを伴うことが多く、その間に新しい恒星が多数誕生して、若い恒星の爆発と活動が活発化した超巨大ブラックホールによって強烈な放射線の期間が続く。やがて星の形成は完全に終わる」とサワラ氏。「数十億年後、かつての天の川銀河とアンドロメダ銀河の痕跡は消え去り、ほとんど特徴のない楕円銀河が残る」

別のシミュレーションでは、両方の銀河が互いに干渉することなくすれ違った。

地球の運命

地球の未来に与える影響は、太陽の方が銀河の動きよりも大きいかもしれない。

太陽が誕生したのはおよそ45億年前。あと50億年たつと死が始まる。米航空宇宙局(NASA)によると、赤色巨星となった太陽は水星をのみ込み、次に金星、そして地球をのみ込む可能性もある。

サワラ氏は言う。「地球にとっては太陽の終わりの方が、アンドロメダとの衝突よりもずっと悪い」「アンドロメダとの衝突は私たちの銀河の終焉(しゅうえん)を意味するが、必ずしも太陽や地球の終焉ではない。我々の研究では、合体後に太陽系がどうなるかを正確に予測したと主張するかつての研究が明らかに早計だったこともはっきりした。だが一般的に、銀河が合体する間に恒星や惑星同士が衝突することは極めて稀(まれ)だ。太陽は確実に終わりを迎えるが、銀河の終わりはそれほど確実ではないことを我々の研究は示している」

研究チームは大マゼラン星雲と天の川銀河の合体については詳細なモデルは作成しなかった。それでもこの二つの銀河が20億年以内に合体することは、「実質的に間違いない」という。これは過去の研究とも一致している。しかしその影響は、天の川銀河とアンドロメダ銀河が合体した場合よりもはるかに小さいと思われる。

「(天の川銀河と大マゼラン雲の)合体が私たちの銀河系を破壊することはないとしても、根本から変えてしまうだろう。特に中心の超巨大ブラックホールと銀河ハローに大きな影響を与える」とフレンク氏。同氏は合体の可能性を指摘した2019年の論文の共著者だった。

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