「人間を内側から蝕む」真菌、地球温暖化で拡散か 備えなき世界

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アスペルギルス属の胞子。アスペルギルス属は環境内にごく一般的に生息する真菌で、土壌や植物、腐敗した植物物質の中に見つかる/Smith Collection/Gado/Archive Photos/Getty Images

アスペルギルス属の胞子。アスペルギルス属は環境内にごく一般的に生息する真菌で、土壌や植物、腐敗した植物物質の中に見つかる/Smith Collection/Gado/Archive Photos/Getty Images

今回の研究によれば、人類が化石燃料の大量燃焼を続けた場合、高温の熱帯気候を好む傾向がある菌種「アスペルギルス・フラバス」は、分布域が16%拡大する可能性がある。北米や中国北部、ロシアの一部へ広がると予想されている。

この菌種は重篤な感染症を引き起こし、多くの抗真菌薬に耐性を持つ。また、各種の作物に感染するため、食料安全保障上の脅威にもなる。世界保健機関(WHO)は2022年、公衆衛生への影響と薬剤耐性リスクを理由に、アスペルギルス・フラバスを重大視する真菌病原体のグループに追加した。

より温和な気候を好むアスペルギルス・フミガーツスの場合、地球温暖化に伴い北極方面へ広がることが予想される。2100年までに分布域が77.5%増加する可能性があり、欧州では900万人が菌にさらされる潜在的可能性がある。

逆に、サハラ以南のアフリカを含む一部地域の気温は、アスペルギルス属の真菌が生息できないほど高温になるかもしれない。真菌は土壌の健全化など生態系内で重要な役割を担っていることから、これはこれで問題になりそうだ。

分布域の拡大に加え、地球温暖化が真菌の耐熱性を高め、人間の体内で生存する能力を向上させる可能性もある。

干ばつや洪水、熱波などの異常気象も真菌に影響を与え、胞子の長距離飛散を促す。自然災害後に真菌疾患が急増することも知られており、2011年にミズーリ州ジョプリンで発生した竜巻の後には大規模感染が発生した。

英エクセター大学MRC医真菌学センターの共同責任者、エレーヌ・ビグネル氏は今回の研究について、「自然環境内に生息する真菌の脅威や、真菌の広がりの変化に対する備えの乏しさに正当な光を当てるもの」だと指摘した。ビグネル氏は今回の研究に関わっていない。

ただし依然多くの不明点が残っており、やるべき研究がまだ大量にあると、ビグネル氏はCNNに語っている。

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