ネアンデルタール人、ブルセラ症にかかっていた 生肉処理時に感染か 新研究

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1908年に発掘されたネアンデルタール人の男性の頭蓋骨/DEA/G. CIGOLINI/De Agostini/Getty Images

1908年に発掘されたネアンデルタール人の男性の頭蓋骨/DEA/G. CIGOLINI/De Agostini/Getty Images

(CNN) 太古の疾病を研究する科学者らはこのほど、動物からヒトへ病気が感染する「スピルオーバー(流出、異種間伝播<でんぱ>)」の最も古い事例の一つを発見した。発症者はネアンデルタール人の男性で、生肉を食肉処理もしくは調理する過程で感染した公算が大きい。

研究者らが今回改めて分析したのは、1908年にフランス中部の村近くの洞窟で見つかったネアンデルタール人の骨の化石。比較的完全な形で見つかった初めてのネアンデルタール人の骨格化石として知られ、最もよく研究された化石の一つでもある。

ネアンデルタール人はがっしりとした体つきの旧人類で、石器時代に欧州やアジアの一部地域で暮らしていたが、およそ4万年前に絶滅した。

当該の化石は今から約5万年前、50~60代で死んだ男性のものと考えられている。2019年の研究の結果、脊柱(せきちゅう)と股関節に進行した骨関節炎を患っていることを確認していた。

ただ今回改めて分析したところ、全ての骨の変異が骨関節炎で説明できるわけではないことが分かったという。

内科の専門家で、チューリヒ大学進化医学研究所のマルティン・ホイスラー博士は、化石に見られる病変の一部について、他の多くの疾患と比較した結果ブルセラ症によるものであることを突き止めたと語った。

この分析に関する論文は先月刊行のサイエンティフィック・リポーツ誌に掲載された。

ブルセラ症は現在も多くの人が感染する病気で、世界保健機関(WHO)によると通常は感染した動物に直接接触したり、感染した動物から作った製品を飲食したり、あるいは空気中の病原体を吸い込んだりして感染する。具体的には、低温殺菌されていない乳製品からうつるケースが大半だ。

動物から人間に伝播する感染症としては最も一般的なものの一つで、HIV(エイズウイルス)や新型コロナウイルスもこうした感染症に含まれる。

ブルセラ症の症状は高熱や筋肉痛、寝汗など多岐にわたるとホイスラー氏は説明。症状が出る期間は数日から数カ月、あるいは数年に及ぶ場合もある。長期化すると関節痛、背痛、睾丸(こうがん)の炎症などを引き起こす可能性もある。ホイスラー氏によると、ブルセラ症由来の死因として最も多いのは心臓弁の炎症として知られる心内膜炎だという。

論文では今回の発見を、この動物原性感染症がヒト族の進化の中で確認された最古の証拠と位置付けている。

ブルセラ症は青銅器時代の現生人類の骨からも確認されている。こちらの年代は約5000年前となっている。

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