「唯一の武器は白衣」 パレスチナ人看護師、狙撃され死亡

イスラエルの狙撃兵に撃たれて死亡したラザンさん

2018.06.04 Mon posted at 19:00 JST

パレスチナ自治区ガザ(CNN) イスラエルに対する抗議運動が続くパレスチナ自治区のガザで、負傷者を助けようとした21歳の女性看護師が、イスラエルの狙撃兵に撃たれて死亡した。ガザにある国連事務所前には3日、仲間の医療ボランティアが集まって、医療関係者がイスラエル軍の標的にされたとして抗議した。

パレスチナ人看護師のラザン・アルナジャルさん(21)が死亡したのは、1日の抗議運動のさなかだった。現場は自宅からわずか数百メートル。ガザ地区とイスラエルを隔てるフェンスの近くだった。

周辺の道路や街灯には、至る所に笑顔のラザンさんの写真が掲げられている。

父アシュラフさんの案内でCNN記者が訪問した自宅には、ラザンさんの死をいたむ人たちが集まり、母のサブリーンさんは、娘が着ていた血まみれの白衣を抱き締めていた。サブリーンさんによると、ラザンさんは抗議運動が始まった当初から、ボランティアで働いていたという。

「私は娘のことが心配だった。でもラザンは怖くないと言った。自分には助ける義務があり、はっきりと分かるように白衣を着ているからと」。サブリーンさんはそう振り返る。「娘は小さかったけれど強かった。唯一の武器は白衣だった」

「私は白衣に守られている」「神が私とともにいるから怖くない」。あの日もラザンさんはそう両親に告げ、出かけて行ったという。

数週間にわたって続く今回の衝突では、抗議運動に参加したパレスチナ人100人以上が、イスラエルの銃撃によって死亡している。

パレスチナ保健省によると、医療スタッフが死亡したのはラザンさんが2人目。ほかに200人以上が負傷した。

イスラエル国防軍は、ラザンさんの死については調査中と説明している。医療関係者を狙ったことは否定した。

ラザンさんは死亡した当時、医療関係者であることを示す身分証明書を身に着けていた。サブリーンさんはこの身分証明書を掲げ、「これは娘の武器だった。これがテロリストの証明書だったとでも?」と問いかける。

血で汚れた白衣を掲げるラザンさんの母親

1日にラザンさんと一緒にボランティアをしていて自分も左足を撃たれたというラミ・アブ・ジャザールさんは、松葉杖をつきながら3日の抗議デモに参加した。

ジャザールさんによると、ラザンさんなどパレスチナの医療救援団体に所属するボランティアは、この日も負傷者を手当てするために集まっていた。

ラザンさんが銃撃される10分前にボランティアが携帯電話で撮影したというビデオには、ラザンさんを含む一行が、医療従事者の身分証明書を掲げながら、徐々に前へ進む様子が映っている。

抗議デモ参加者は催涙ガスを浴びせられていたといい、「フェンスの近くにいた男性が、『助けてくれ』と呼んでいた。ラザンは彼を助けに行った」。ジャザールさんはそう語る。

国連事務所前に集まり抗議する人々=ガザ市

ラザンさんが撃たれたのはこの時だった。

この日ボランティアをしていた別の女性は、狙撃兵の姿を見つけて同僚に警戒を促していたという。

「ソーシャルメディアには、ラザンが女性狙撃手に撃たれたという書き込みもあるけれど、それは違う。私は狙撃兵を見た。あれは男だった」。女性はCNNの取材にそう証言した。

ラザンさんの友人や仲間の医療ボランティアは、ラザンさんの勇気を決して忘れないと誓い、これまで以上に自分たちの仕事を続けると決意している。

パレスチナ人看護師が狙撃され死亡

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