ウクライナ軍の大規模ドローン攻撃、新たな映像公開 ロシアの被害鮮明に
ドローン攻撃の新たな映像、ロシアの航空機が炎上
(CNN) ウクライナ軍が先ごろロシア国内にある空軍基地に対して実施した大規模なドローン(無人機)攻撃をめぐり、ウクライナ保安局(SBU)は4日、新たな映像を公開した。
新たな映像には、ウクライナ軍による的確な攻撃の様子が詳細に捉えられている。ウクライナは、軍用機に損傷を与えたり破壊したりすることで効果を発揮できる場所を攻撃していた。ロシアはこうした軍用機を使って、ほぼ毎日空爆を行い、ウクライナの民間人に恐怖を与えてきた。
SBUが公開した動画には、複数の飛行場に駐機する数十機の異なる種類の飛行機にドローンが接近し、その周囲で航空機が炎上したり爆発したりする様子が映っている。
ウクライナ軍当局者によれば、ロシア軍の航空機41機が被弾した。攻撃を受けた航空機の中には戦略爆撃機や早期警戒管制機が含まれる。
英王立防衛安全保障研究所(RUSI)の上級研究員ジャスティン・ブロンク氏は今回の攻撃について、「ウクライナの特殊部隊にとって驚くべき成功だ」と述べた。損害を受けたり破壊されたりした航空機が41機という主張の半分でも確認されれば、ロシアの長距離航空部隊の能力に大きな影響を与えるという。
今回の攻撃はロシア国内の飛行場4カ所を標的とした。最も遠いのはウクライナとロシアの国境から約4500キロ離れたイルクーツク州のベラヤ空軍基地だった。そのほか、2000キロ以上離れたムルマンスク州の基地、約520キロ離れたリャザン州の基地、約800キロ離れたイワノボ州の基地も標的となった。
ロシアがこれらの基地の防御に無頓着だったのは、ウクライナ国境からの距離が非常に遠かったからだとみられる。
ベラヤ基地にある最も貴重な航空機は、飛行場の目立つ場所に定期的に駐機されており、グーグルマップなどの公開されている衛星画像でもはっきりと確認できる。
CNNが入手したマクサー・テクノロジーズの衛星画像には、駐機している航空機の横に、おとりと見られる白いペンキで描かれた飛行機が写っている。

3月に撮影されたジャギレボ空軍基地の衛星画像。滑走路に、おとりとみられる航空機の絵が描かれている=ロシア・リャザン州
ロシア政府は、その距離自体がウクライナの攻撃から航空機を安全に保つのに十分であると信じていた可能性が高い。
ロシアの基地にあるレーダーや防空システムは、今回のような低高度での突然の攻撃には備えがなかった。
今回のような攻撃を阻止する唯一の効果的な方法は重機関銃だ。ロシアは黒海で、ウクライナのドローンに対して重機関銃を使用している。
しかし、重機関銃は今回の攻撃が行われた空軍基地には配備されていなかったか、あるいは、十分な早さで配備されていなかった。おそらく、ロシアが今回のような攻撃を予見していなかったためだろう。
新たに公開された動画では、ドローンが航空機に信じられないほど接近して飛び回り、攻撃するのに最適な場所を探している。ドローンは探知されずに接近しているようで次々に航空機を攻撃した。
SBUの推計によれば、今回の攻撃は推計70億ドル(約1兆円)の損失を与え、ロシアの戦略爆撃機の34%を攻撃した。CNNはこうした主張を独自に確認できていない。

衛星画像が捉えた戦略爆撃機の残骸=4日、ロシア・ムルマンスク州/Maxar Technologies
ウクライナ側は、今回の攻撃によって、戦略爆撃機の「TU95」や「Tu22M3」を複数と早期警戒管制機「A50」1機を破壊したとしている。
ウクライナ空軍の報道官は地元メディアに対し、一部の航空機は完全に破壊されたと述べた。修理不可能なほど損傷しているものがあるほか、一部は修理が可能かもしれないという。こうした航空機は「長期間」にわたって運用できなくなる可能性が高いと言い添えた。
情報筋によれば、攻撃を受けたのはTU95が27機、Tu160が4機、Tu22M3が2機、そして「おそらく」A50が1機だという。
新たに公開された映像には、ウクライナのドローンが希少な2機のA50に接近する様子が映っている。この2機が攻撃されたかどうかは不明。ロシアはA50を空域の監視や脅威の早期発見、ウクライナ空爆の際の指揮統制に使用している。
Tu22M3は長距離ミサイル攻撃に使われ、ウクライナの対空砲火の射程外となるような前線からかなり後方のロシア領内からスタンドオフ攻撃を実行できる。