長年EUに懐疑的だったデンマークが親EUに転換、きっかけはトランプ氏
首相の論調にも「大きな」変化
デンマーク国民の意見に変化が見られる中、デンマークは6カ月ごとの輪番制であるEU理事会の議長国に就任した。
デンマークの国際問題が専門の著名なアナリストで、デンマークの閣僚を務めたこともあるリュッケ・フリース氏は、デンマークはEUに懐疑的な傾向があり、「本心では自分たちは欧州人だとは思っていない」と述べた。
デンマークは長年、EUが国民生活に干渉してくることを懸念しており、特に規制が比較的少ない自国の労働市場が脅かされることを恐れてきた。EUの政策に関しては、いくつかのオプトアウト(適用除外)権を有しており、例えばEUの単一通貨であるユーロには参加していない。
フリース氏は、「かつてデンマークの政治家や市民は、EUがあまりに支配的で強大になることを恐れていた」とした上で、「しかし今は、その恐れは全く逆の方に向いている」と述べた。デンマーク人は今、EUは弱すぎて、東のプーチン・ロシア大統領、西のトランプ米大統領に対処できないと感じているという。
またフリース氏は、デンマークのフレデリクセン首相の論調にも「大きな」変化が見られると指摘する。フレデリクセン首相はかつて「EUに対して非常に懐疑的だった」という。
しかし、6月にEU議長国としてのデンマークの優先事項を示した際、フレデリクセン首相は「欧州は今こそ、その力を強化し、一致団結する必要がある。我々の民主主義を守ることができる、より強く、より安全な欧州を築かなければならない」と訴えた。
EUの委託で年に2回行われている世論調査によると、EUへの信頼度は2005年春には46%だったが、今春には74%まで上昇しており、過去20年間にEUへの信頼が高まっている明確な傾向が見て取れる。特に第1次トランプ政権の最中と、ロシアの本格的なウクライナ侵攻後、第2次トランプ政権が始まった時には、より急激な上昇が見られた。
フリース氏は、ウクライナでの戦争がデンマーク人のEUに対する見方に大きな影響を与えたと指摘する。
「自国の裏庭で戦争が起きているという事実そのものが、デンマークにおいて、安全保障をめぐるまったく新しい空気を生み出した。人々は不安を感じており、自国の安全にも何が起こるか分からないとの恐怖から、備えを始めている」とフリース氏は述べた。