大富豪ベゾス氏の14億円挙式でベネチア分断、若者が「運河封鎖」の反対運動
イタリア・ベネチア(CNN) イタリアのベネチアで今月末に予定されている億万長者ジェフ・ベゾス氏とジャーナリストのローレン・サンチェス氏の結婚式をめぐり、地元の若者を中心に反対運動が起きている。
ある蒸し暑い金曜の午後。雇用不安を抱える現地の若者グループが、ベネチアのリアルト橋前の広場に集結した。苦労しながら橋に掲げた巨大な横断幕には「ベゾスのための場所はない」の文字と、同氏の宇宙開発企業ブルーオリジンのロケットのイラスト。集まった300人ほどの市民を前に、数人が演説に立った。
結婚式については予算1000万ドル(約14億円)と噂(うわさ)される以外、詳細は不明だが、反対派が12日に「ベゾスはいらない」の横断幕を掲げたサン・ジョルジョ・マッジョーレ島を含め、複数の会場で行われるらしい。
今月28日の挙式は、ベネチア中心部にある14世紀の建造物で現在イベント会場として使われている「ミセリコルディア」がメイン会場になると噂されている。
これに対して反対運動を組織したフェデリカ・トニネッロ氏は「ベゾスはミセリコルディアにたどり着けない」と宣言。「我々は運河を封鎖する。道路には自分たちが寝転び、運河はゴムボートとヨットとボートで封鎖する」と群衆に語りかけて喝采を浴びた。

反対派たちはベゾス氏の豪華な結婚式の開催を阻止すると明言している/Andrea Pattaro/AFP/Getty Images
別の演説でも、今回の結婚式は報道されているようなサンチェス氏の27回のお色直しではなく、反対運動で記憶させようと呼びかけ、「大金持ちの権力者に屈しなかった街としてベネチアを記憶させよう。1000万ドルの結婚式をぶち壊すチャンスを逃すわけにはいかない」と気勢を上げた。
ベゾス氏の超豪華ヨットなどがベネチアの港に停泊することを嘆く声や、今回のような一大イベントが正規雇用ではなく一時的な雇用しか生み出さないことに対する不満の声も噴出している。
今回の結婚式は、ベネチアが抱える問題を象徴している。観光公害対策として週末やピーク時は日帰り観光客に対して10ユーロ(約1670円)の入場料が課される一方、学校や病院、手頃な価格の住宅などが不足してベネチアに住み続けられなくなる住民は年々増えている。
ベネチアで豪華結婚式を挙げたセレブはベゾス氏にとどまらない。2014年に米俳優のジョージ・クルーニー夫妻が挙式した時には地元住民からも歓迎された。

ベゾス氏の結婚式を巡っては反対派と同じくらい支持する声も上がっている/Andrea Pattaro/AFP/Getty Images
市当局によると、今年に入っても数百万ドル規模の結婚式は既に3回行われ、いずれも反対は起きなかった。ベネチアのあるベネト州のルカ・ザイア知事は13日、「ベゾス氏を大歓迎してベネチアに迎えてほしい。自分たちの地元に注目と富をもたらしてくれる相手に抗議することは、私に言わせれば面汚しだ」と言い切った。
ベネチアのルイジ・ブルニャーロ市長も同日、「ベゾス氏に謝罪しなければ」と記者団に語り、「こうした振る舞いを恥ずかしく思う。とにかくベゾス氏には来てほしい。ベネチア市民全員があんな風に考えているわけではない」と強調した。