中国のレアアース輸出規制、米中「停戦」後も継続の様相
香港(CNN) 米中間の関税戦争が90日間の「停戦」に入った後も、中国は依然として、レアアース(希土類)輸出への厳しい規制を継続しているようだ。米国との戦略的競争が激化するなか、中国側は今後の交渉に向けた強力な切り札を握り続けることになる。
トランプ米政権が先月2日に発表した「相互関税」に対し、中国は報復関税以外にも米国への対抗措置を発動。同4日には、希少性の高い重希土を中心とするレアアース7種類と磁石など関連製品の輸出規制を発表した。しかし先週、スイス・ジュネーブで開かれた米中協議での合意に基づき、対抗措置を停止または廃止すると約束していた。
ジュネーブ協議から帰国したグリア米通商代表部(USTR)代表は米FOXニュースとのインタビューで、中国側はレアアース輸出規制の解除にも同意したのかと問われ、「そうだ。中国は対抗措置の廃止に同意した」と答えた。
だが、中国が輸出規制の解除に動く気配はない。
4月に導入された規制では輸出が直接禁止されたわけではなく、毎回の出荷に政府の許可を得ることが義務付けられた。各企業が新制度への対応を急ぐ間に出荷が何週間も滞り、米産業界に不安が広がった。
カナダ・トロントのコンサルティング企業、ストームクロー・キャピタルのジョン・ヒカウィ社長は、「グリア氏が実際の交渉結果でなく、希望的観測を述べていたとしても驚かない」と話す。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のグレースリン・バスカラン氏も、レアアース輸出の許可制がこのまま続き、「長期にわたって存続する可能性もある」との見方を示した。それは中国にとって、対米貿易交渉での切り札が手元に残ることを意味する。
バスカラン氏によれば、米国が関税合意を破った場合、中国は許可申請を拒否することで簡単に対抗できる。許可制はもともと機動的にできていると、同氏は指摘する。ある時点で中国のレアアースをどの企業、どの国家が入手するか、中国当局が自由に決められるというわけだ。
新たな輸出許可
中国商務省はジュネーブ協議の後、軍民両用(デュアルユース)品目の輸出規制リストから米企業28社を削除し、別の貿易・投資制限リストでも米17社を対象から外した。しかし、レアアース輸出規制の変更には言及しなかった。
同省の報道官は16日の定例関係で、同規制を解除するかどうかについて「共有できる情報はない」と述べた。
中国当局はその一方で、鉱物資源の密輸を取り締まる作戦に乗り出した。米中関税合意が発表されたのと同じ12日、中国の輸出規制当局は「戦略的鉱物資源の違法な流出を防止」し、「生産と供給網を結ぶ全ルートへの監督を強化」するためとして、産出地の当局者らと会合を開いた。
SNSでは同日、中国国営中央テレビ(CCTV)系のアカウント「玉淵譚天」から、「レアアース輸出管理は継続している」との投稿があった。
それと同時に、レアアース磁石の輸出許可が数週間遅れで下り始めた。輸出規制が緩和されるどころか、許可制が健在であることを示す動きだと、専門家らは指摘する。
中国のレアアース磁石メーカー2社はCNNに、規制対象のレアアース「ジスプロシウム」と「テルビウム」を含む製品の輸出許可が最近下りたことを明らかにした。
許可は1回の出荷ごとに与えられ、毎回取り直す必要があるという。
このうちの1社に近い関係者はCNNに、輸出規制の制度が緩和されるという話は聞いてないと語った。同社は最初に東南アジア向けの許可を得た後、欧州向けの輸出許可を数件取得した。輸出先にはドイツの自動車大手、フォルクスワーゲン(VW)も含まれている。