「理性が勝つことを願う」とパキスタン外相 インドとの停戦後に語る

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パキスタン外相 インドとの停戦後に語る

イスラマバード(CNN) パキスタンのダール副首相兼外相は12日、インドとの先週の戦闘で緊張が高まるなかでも、核兵器の配備は検討しなかったと言明した。CNNとのインタビューで語った。

インドとパキスタンが10日に停戦に同意してから、ダール氏がインタビューに臨んだのは初めて。同氏はこの中で、インドから7日に受けた越境攻撃に対する「自衛」として、パキスタン側も反撃する以外に「選択肢はなかった」と説明した。

先週激化した攻撃の応酬は、核保有国である両国の間で1971年に起きた衝突以来、最悪の規模となった。当時の衝突では数十人が死亡して、紛争拡大への懸念が深まった。

ダール氏はインドの攻撃を「戦争」と呼び、係争地カシミールで「覇権を確立しようとする、虫の良い企て」だったと批判。一方で、核の選択肢は一度も検討されなかったと強調した。

「時には極めて重大な決断を下さなければならない場合もある」としたうえで、「わが国の通常戦力があれば、空陸両面で十分インドに勝てると判断した」と述べた。

印パ間では数日間続いた戦闘の後、10日に米国仲介の停戦合意が成立した。

停戦はその後も維持されている模様だが、ダール氏はCNNに、インドとの長期的な交渉は「まだ完了していない」との見方を示し、「今も理性が勝つことを願っている」と述べた。

一方、インドのモディ首相は12日、「パキスタンのテロ、軍事拠点に対する報復攻撃は一時停止したにすぎない」と主張。「インドは今後、核の脅迫を一切容認しない」とも宣言した。

モディ氏は、パキスタン側がインドからの猛烈な攻撃を受け、停戦合意に達することで「自国を守る道」を探すしかなかったとの見方を示した。

そのうえで「パキスタンは完全に打倒された末、緊張緩和を世界に呼び掛けた」と語った。

一方、ダール氏はCNNとのインタビューで、「このような問題を一定期間以上先延ばしにしたり放置したりしないことは、だれにとっても有益だ」と述べ、「(インドの人々は)空で何が起きたかを見て、被害の重大さが分かったのだ」と指摘した。

同氏は、両国当局者らの間で直接の連絡はなかったと述べた。これに先立ち、インドの軍事作戦責任者は、交渉中にパキスタン側の責任者からメッセージを受け取ったと主張していた。

ダール氏によると、実際には米国のルビオ国務長官から、インドは戦闘停止の用意があるとのメッセージが伝えられたという。

ルビオ氏は10日の声明で、バンス米副大統領とともにインド、パキスタン双方の政治、軍指導者らと協議し、事態がさらに悪化する前に合意を取り付けたと述べた。

ダール氏はCNNとのインタビューで、パキスタンが望むのは「双方の尊厳」を認める長期的な平和と安全保障への道筋を確立することだと語った。

カシミール「自決権」への呼び掛け

イスラム教徒が多数を占めるカシミール地方は、英国領だったインドとパキスタンが分離・独立した1947年以降、印パ対立の火種となってきた。

当時、流血の末にヒンドゥー教徒が多いインドとイスラム教徒が多いパキスタンに分離してから数カ月のうちに、両国はそれぞれカシミール全域の領有権を主張し、第一次印パ戦争に突入した。

戦争は第三次まで繰り返され、カシミール地方は現在、世界で最も軍事化された地域のひとつとなっている。

ダール氏はカシミール地方を「地域の不安定性の根本原因」と位置づけ、同地方には将来、民族自決が必要だと主張した。

インドは長年、治安部隊への越境攻撃を繰り返すカシミールの武装勢力をパキスタンがかくまっていると非難してきた。パキスタンはこれを否定している。

インドによる先週の攻撃は、カシミールのインド実効支配地域で先月、多数の観光客らが殺害された事件を巡って実行された。

ダール氏は事件へのパキスタンの関与を改めて否定し、「われわれはあらゆる形態のテロを非難する」と強調した。

同氏はまた、トランプ米大統領はパキスタンによる反テロの取り組みを支持していると指摘。トランプ氏がSNSにカシミール紛争の「解決策を見出す」と書き込んだことを挙げ、「(われわれの取り組みを)信頼していなければ、このような協力はなかったはずだ」と語った。

同氏は一方で、今後の交渉でカシミールの「水問題が解決されなければ」、すでに危うい停戦が崩壊する恐れもあるとの警告を発した。

両国はカシミールを流れる川の水資源を巡って対立している。インドがパキスタン経済に不可欠な三つの川をせき止める措置を決めたのに対し、パキスタンが撤回を求めている。

インドのメディアは先週、政府筋の話として、インド実効支配地域にあるチェナブ川のダムをせき止め、パキスタンへの水の流れを止めたと報じた。

ダール氏は、インドが水問題の問題を解決しなければ、それは「戦争行為に当たることになる」と改めて主張した。

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