ロシア軍、アウジーイウカ制圧 ウクライナにさらに攻勢か
(CNN) ウクライナが10年間死守してきたドネツク州東部の町アウジーイウカ。荒廃した戦場からウクライナ軍が慌ただしく撤退してから数時間後、町のあちこちにロシア国旗が掲揚された。
だがウクライナ陸軍は、北部のロシアとの国境から黒海に至るまで1000キロ近い前線の他の地域でも圧力にさらされている。
ロシア軍もウクライナ軍が弱体化している気配を感じ取ったのかもしれない。ウクライナの精鋭部隊は2年間の戦闘で疲弊し、軍総司令官には新たにオレクサンドル・シルスキー氏が就任した。ウクライナ軍の部隊は砲弾不足に見舞われ、容赦ない空爆を前になす術がない。
ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領と軍は違法に占拠された地域の完全奪還を目指している。ウクライナ軍の兵士はこれ以上ロシアの占領を許さないよう必死に戦っている。ロシアはすでにウクライナ領土の約18%を占領している。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はウクライナ東部のドネツク、ルハンスク両州の完全掌握という目標を宣言しているが、この先さらに機会があれば、両州だけで終わるとは思えない。
ロシアは昨年10月、アウジーイウカ掌握に本腰を入れた。同時にドネツク州のバフムートとマリンカ周辺や、北部のクピャンスク方面にも攻撃を行っている。
ロシアとウクライナ双方の情報筋によると、ザポリージャ州の南部戦線では、昨年夏ウクライナが反転攻勢をもくろんだ地域でロシア軍が大量に兵力を増強しているという。専門家の間では、5万人の兵士が配備されているとの意見もある。
ウクライナ軍が毎日発表する戦況報告からは、ロシアによる火力のようすが垣間見える。ウクライナ軍参謀本部によれば、17日だけで82回の交戦があったという。「敵が発射したミサイルは合計13発、空爆は104回。多連装ロケットシステムからウクライナ軍の拠点や住宅地区にロケット弾が169回発射された」
戦況報告には「撃退」「阻止」といった言葉があふれている。ハルキウ州、ドネツク州、ザポリージャ州で戦うウクライナ軍の部隊は、防衛陣地でどうにか持ちこたえている。
ウクライナ陸軍予備役協議会のイワン・ティモチコ会長は17日、「我々の関心がアウジーイウカに集中しているのは事実だが、実際にはリマン―クピャンスク方面(および)バフムート近郊で激しい戦闘が続いている」と発言。「敵はロボティネ地域で急激に兵力を増強している」と南部戦線のもうひとつの激戦地についても述べた。
ウクライナ軍はアウジーイウカ北部の高台に新たな防衛拠点を確立しようとしている。部隊の再編成が行われているため、こうした前線ですぐにロシアの猛攻が行われることはないと専門家はみているが、周辺のいくつかの村はロシアに奪われるかもしれない。
数カ月にわたるロシアの砲弾や空爆による破壊行為で、アウジーイウカにはウクライナ軍が身を隠せる場所はほぼ残っていない。邪魔なものをことごとく一掃するというロシアの戦法は、2022年にセベロドネツクやリシチャンスクの街でも功を奏した。
この地域で戦う兵士、イエホル・フィルソフ氏は17日にウクライナのテレビ番組でこう語った。「考えてみてほしい。ビルを攻撃して破壊する500キロ、あるいは1トンの大型爆弾に対し、我々の(小さな)FPVドローン(無人機)はどうしろというのか。こうやって敵は優勢に立ち、あらゆるものを破壊して街に進軍している」
ロシアは町に残されたわずかなものを奪った後、複数の部隊を投入して荒廃したマリンカ近郊への攻撃を強化するかもしれない。ロシアはこの数日でマリンカ南部に進軍し、ブフレダール方面のウクライナ防衛軍は激しい圧力にさらされている。18日に発表されたウクライナ軍の報告によれば、ロシア軍はその前日、1日にわたり「23回、防衛線の突破を試みた」という。
バフムートの西部および北西部でロシア軍の攻撃目標となっているのが、見晴らしのいい高台にある小さな町チャシブヤールだ。ここからなら、クラマトルスクとコンスタンチノフカを砲弾の射程距離に収められる。この地域を担当するウクライナ軍のイリア・イェブラシュ報道官は先週、ロシア軍がウクライナ陣地に1日600回以上砲弾を浴びせたこともあると語った。
「もっと砲弾が必要だ。とくに155ミリ砲弾が数千単位でいる」とイエブラシュ氏。「敵は側面から攻めようとしている。凍てつく気温と通行不能な道路のため、重装備で戦場を動き回れず、小規模な攻撃部隊を送り込んでいる」