ANALYSIS

軍も絡む強制送還計画、トランプ氏が説明 1500万~2000万人を対象

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トランプ前米大統領/Morry Gash/AP

トランプ前米大統領/Morry Gash/AP

(CNN) 大統領選挙の主要候補が、どちらの党派であれ、用意されたコメントや街頭演説、友好的な聴衆といった境界から出てくることは珍しい。そのため、彼らが実際に具体的な質問を受け付ける際には、注意を払うだけの価値がある。

トランプ前米大統領はこのほど、そんな腰を据えた希少な形の取材でタイム誌の質問に答えた。問われたのは大統領選に勝利した場合、2期目のトランプ政権が何をもたらすか。そこには悩ましい移民の問題も含まれている。

大半の話題で詳述を避ける

トランプ氏は「プロジェクト2025」と銘打った取り組みの全貌を明らかにはしなかった。同氏の支持者らはこれを「ディープステート(影の政府)」として認識される勢力の壊滅を図るものと考えている。具体的には連邦政府に関して、現状より格段に多くの区分を政府任用者に分類し直すことを意味する。

「我々は多くの異なる事柄を目の当たりにしている。行政府は非常に良いものであると同時に、非常に悪いものでもある」と、トランプ氏は述べた。

その他の話題では矛先をかわす

トランプ氏は人工妊娠中絶の権利に関して、各州の判断に任せると主張。結果的に州当局が中絶を求める女性を投獄することになっても、その考えは変わらないと示唆した。

「個々の州に対して聞くことだろう」(トランプ氏)

2021年1月6日に発生した連邦議会議事堂襲撃事件について、選挙集会では議事堂に突入した罪で投獄された人々を「人質」と呼んでいたトランプ氏だが、インタビューでは彼ら全員に恩赦を与えるとは約束しなかった。

「もし道義に反する悪人がいるのであれば、そこは分けて考えるつもりだ」

「独裁者」の約束は冗談

また非常に突拍子もないコメントのいくつかは、ただの冗談だったと説明した。繰り返し宣言していた「一日だけ独裁者になる」という約束は、この部類に入るとした。

「皮肉を込めて言った。冗談のつもりだった」

ただの冗談だったと弁明しても、それで米国民の不安が和らぐことはないかもしれない。彼らはトランプ氏が米国の政治制度にもたらす圧力を本気で恐れている。一方で、自身の支持者の一部が大統領の任期制限を定めた合衆国憲法22条の撤廃を唱えていることについては、驚いた様子を見せた。これが実現すれば、2期以上大統領職を務めることも可能になる。

「それに関しては何も知らない」(トランプ氏)

100万人単位の強制送還については詳述

トランプ氏が最も具体的に詳細を語った話題は、何百万人もの不法移民を強制送還する自身の計画だった。

同氏は、移民の多くが元囚人もしくは本国で施設に収容されていた人々だという誤った主張を繰り返した。CNNの報道によれば、移民の急増が犯罪の急増につながるという考えを裏付けるデータは存在しない。大半の評価基準において、米国での凶悪犯罪は実際のところ低減している。

侮蔑表現こそ使わなかったものの、トランプ氏はアイゼンハワー政権下のメキシコ国境で実施された強制送還計画「ウェットバック作戦」をモデルに挙げた。

1954年、国境当局者と地元の法執行機関が連携し、彼らの主張によればメキシコ国籍の100万人以上を一斉検挙し、同国側へ送り返した。CNNが16年に報じたように、実際に強制送還された人の数はもっと少なかったと歴史家はみている。複数回にわたって逮捕された人が大勢いたからだ。さらに多くの米国人も捜査当局によって捕まり、誤って国外退去させられていたという。

2016年も大規模な強制送還を約束

1期目ではアイゼンハワーのような取り組みの採用を見送ったトランプ氏だったが、今はその公約を復活させている。タイム誌の取材に対し、1500万~2000万人を強制送還の標的にする意向を表明。彼らは米国に不法滞在している人々だと主張した。不法移民の正確な人数は不明だが、恐らくトランプ氏の言及した数よりも少ないと思われる。

ピュー・リサーチ・センターが推計した米国内の不法移民の数は、21年時点で1050万人前後だった。ピュー側は、現在この数字が増加している可能性があると認める。米国への入国を試みる人々の数はその後増加しているからだ。21年の段階で、ピューの推計によれば米国の人口の約3%、外国生まれの人々の約22%が不法滞在だったという。

米国への入国を試みる人々の数は明らかに増えている。22年10月から23年9月までの23会計年度、国境での当局と移民との「遭遇」は250万件近くに及んだ。バイデン大統領は移民に関する自らの言説を完全に変えたが、一部には移民に対して米国へやってくる気を起こさせなくする狙いがある。同時にこの問題を巡り、共和党との協力を模索してもいる。

トランプ氏の場合は民主党との協力ではなく、軍を動かすことで問題に対処したい考えだ。ただ最初の段階では地元警察を使い、強制送還の対象も犯罪歴のある移民に絞り込む方針だという。

取り組みへの軍の関与は

強制送還の取り組みに軍を含めるのかと問われたトランプ氏は、「そうなる」と回答。「ここで言う軍とは、一般的に言って州兵を指す」と付け加えた。

その上で、「軍を使うことそれ自体には何の問題もない」と述べた。ただ州兵で十分対応できると考えているとした。

トランプ氏は法律が軍の使用の妨げになるとは考えない。米国内で市民を相手に軍隊を使用する場合は法律上議会の承認が必要だが、これは自身の取り組みには該当しないという。

トランプ氏によると移民は「市民ではない」。「これらの人々は合法的に我が国にいるのではない。我が国に侵入しているのだ」

さらに裏付けのない陰謀論を繰り返し、中国から来た「戦闘年齢」の男性たちが何らかの方法で米国内に潜り込んでいるとの見解を示した。

「取るべき対策を講じて犯罪を阻止し、国境で起きている事態を止めなくてはならない」

移民の大規模収容所について

拘束した移民のための大規模な収容施設ができるとする考えについては、これを重視しない姿勢を示した。この種の施設は、トランプ氏の移民政策を立案するスティーブン・ミラー氏が米紙ニューヨーク・タイムズに対して説明していた。重視しない理由は、トランプ氏によれば、強制送還を非常に迅速に行うつもりだからだという。

「彼らを国内に置いたままにはしない。追い出すのだ」と、トランプ氏は語った。どのような権限でそれを実現するのかという問いには、連邦政府の資金を使って地元警察に圧力をかけることを示唆した。

「一部は取り組みに加わりたがらない可能性もあるが、その場合彼らの懐が増えることはないだろう」

トランプ氏の取るあらゆる行動に対しては、間違いなく裁判で異議が唱えられることになるだろう。本人は、連邦裁判所の判断に全て従うことを約束した。

「連邦最高裁には多大な敬意を抱いている」(トランプ氏)

本稿はCNNのザカリー・B・ウルフ記者による分析記事です。

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