「圧力鍋」の中にいるよう 24時間で4人が自殺、警官の心のケア求める声 米

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ナイトクラブ銃撃事件の犠牲者の追悼場所を訪れたオマール・デルガド氏=2016年6月23日、オーランド/Phelan M. Ebenhack/AP

ナイトクラブ銃撃事件の犠牲者の追悼場所を訪れたオマール・デルガド氏=2016年6月23日、オーランド/Phelan M. Ebenhack/AP

ラムジー氏はかつて5人が殺害された犯行現場に出動して、惨状を目の当たりにした。

「あのようなものを見るのは普通じゃない」「それで一切の感情を抑え込む。だが存在しないわけではない。そのまま放置すれば、時間とともに蓄積する」(ラムジー氏)

ラムジー氏はフィラデルフィア警察のトップにも赴任し、精神衛生の専門家とともに年次のチェックを義務化した。そのとき、警官が2度目、3度目のフォローアップの面会に自発的に参加するのを目の当たりにしたという。

「一番それを必要としている人は、自ら接触し助けを求めようとする可能性は低い」(ラムジー氏)

ボルティモアやニューオーリーンズで警察署長を務めたマイケル・ハリソン氏は、警官のちょっとした行動、見た目、雰囲気、仕事ぶりの変化が、支援が必要かもしれないサインかもしれないと語る。

「彼らは既に感情、精神、魂における何かを経験している。彼らが来て、助けがほしいと言ったときに、我々は彼らを罰するような方針をとりたくない」(ハリソン氏)

コロンビア大学医療センターの研究者でニューヨーク市警の人質交渉官の経験もあるジェフ・トンプソン博士は、警官の自殺を単一の原因に単純化するのは「潜在的に危険」で、「ストレスと、治療されなかった精神的な病気が合わさったもの」と受け止めるべきだと注意を促す。

米国の警官の自殺を集計しているウェブサイトの「Blue H.E.L.P」によると、今年に入って自殺した警官は全米で86人に上る。しかし創設者のカレン・ソロモン氏によれば、警察には心の健康問題の報告に対する偏見があり、報告件数は実際より少なくとも25%少ないという。

偏見を減らす取り組みは続けられているいものの、警官は今も心の健康問題を上司に告げることに不安を感じている。

ナイトクラブの銃乱射現場に出動したデルガド氏は、49人が射殺され、数十人が負傷した現場の恐怖を目の当たりにした。銃撃犯とのにらみ合いが続く中、デルガドさんは死者と共に何時間もクラブ内に閉じ込められた。

デルガド氏は現場での行動を賞賛されたものの、その後半年間、働くことができなかった。

ようやく事務職に復帰したものの、17年末までに、PTSDのため、10年近く勤務してきた警察を退職した。警察が雇った医師は、デルガド氏を「職務に適さない」と診断したという。今は民間の警備会社に勤めている。

ナイトクラブの銃乱射事件は、警官が心の健康不安を打ち明けて助けを求めようと思う転機になったとデルガド氏は言う。しかしデルガド氏の免職は、同じことが自分にも起こりうるとほかの警官に思わせた。

「私は常にあの悪夢がよみがえり、あの遺体を見続けるのを止められなかった。自分の頭も心もコントロールできなかった」とデルガド氏は振り返り、「圧力鍋の蒸気を、3カ月かかっても、1年かかってもいいから、ゆっくりと抜く方法はないだろうか」「誰もが怖くて口に出せない。誰もクビになりたくはない」と語った。

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