米共和党の第3回候補者討論会、主なポイント

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米共和党の討論会、TikTok巡り候補者が応酬

(CNN) 2024年米大統領選で共和党からの指名を目指す候補者が8日、3度目となる討論会に臨んだ。相手の発言を遮る行為が相次ぐ混乱状態に陥った前回と異なり、フロリダ州マイアミで開催されたこの夜の討論会では、内容を伴った議論が繰り返された。ただ問題は、議論のほぼ全てが外交政策の問題に集中したことだ。人工妊娠中絶や、またも欠席を選択したトランプ前大統領を巡っては、多くの時間が割かれなかった。

フロリダ州のロン・デサンティス知事はトランプ氏について「(大統領選に勝利した)16年とは別人」と発言。ニッキ・ヘイリー前サウスカロライナ州知事と同様に、共和党は過去の栄光を追わないとする考えを示唆した。

前ニュージャージー州知事のクリス・クリスティー氏はメディアでトランプ氏を極めて厳しく批判しているものの、この討論会では目立った印象を残せず、鋭敏な(時に荒削りな)論客としての評判にまたしても傷がつく結果となった。

以下、3回目の討論会で見えてきたポイントを挙げる。

外交政策が議論の中心に

イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦争について、5人の候補者の間に意見の不一致はほとんどなかった。実際のところ、彼らの回答はしばしばかなり似通ったものになった。

デサンティス氏とヘイリー氏からは、ハマスの壊滅を目指すイスラエルのネタニヤフ首相を支持する発言が出た。

一方、米国がロシアの侵攻に対抗するウクライナへの支援を継続するべきかどうかを巡っては意見が激しく対立した。

起業家のビベック・ラマスワミ氏は、ウクライナのゼレンスキー大統領を長々と非難。同国にはナチズムと反民主主義的思想が潜んでいると主張した。

「この戦争をある種の善と悪の対決に仕立てる向きがあるが、真に受けてはならない」(ラマスワミ氏)

これに対しヘイリー氏は、ラマスワミ氏を牽制(けんせい)。このような人物が大統領になるかもしれない状況は、ロシアのプーチン大統領や中国の習近平(シーチンピン)国家主席が大いに望んでいるところだと皮肉った。

デサンティス氏とサウスカロライナ州選出の上院議員、ティム・スコット氏は、話題をウクライナから米国・メキシコ国境へと移した。このため両氏が米国のウクライナ支援継続を支持しているのかどうかについては疑問の余地が残った。

デサンティス氏は米国民の息子や娘をウクライナには送らないと明言する一方、「我が国の南部国境には軍隊を派遣する」と述べた。

人工妊娠中絶の議論は低調

2回目の討論会と同様、人工妊娠中絶の問題は90分を超える討論の中でなかなか取り上げられることがなかった。前夜にはオハイオ州の住民投票で中絶の権利を州憲法に明記することが支持されたほか、中絶問題が争点の多くを占めた各地の重要な選挙で共和党が敗北を喫するなどしていた。

ようやく中絶に議論が及んでも、候補者の大半は従来の自身の立場を堅持し、7日の結果には動じていないことを示唆した。

スコット氏は連邦法で妊娠15週以降の中絶を禁じるよう求めた。一方、ヘイリー氏は中絶賛成派に傾く州もあれば反対派に傾く州もあると指摘。これまで通り中道的な立ち位置を模索する考えを示した。

デサンティス氏は見たところ、7日の選挙結果の責任を反中絶の団体に帰したようだった。同氏によるとこれらの団体は、「住民投票に不意を突かれた」のだという。中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド判決」が覆されて以降、全米の州では政治的志向に関係なく、有権者が住民投票によって当該の権利を支持する動きが相次いでいる。

デサンティス氏の上記の見解は、2回目の討論会と全く正反対のものだ。前回同氏は共和党の不振に終わった昨年の中間選挙に触れ、「敗北の原因が中絶反対派にあるとの考えを拒絶する」と述べていた。

デサンティス氏とヘイリー氏、中国巡り応酬

デサンティス氏はヘイリー氏が州知事時代、中国の繊維ガラス企業を自らの州に誘致したと非難。「軍事基地近くの土地を与え、中国大使にはラブレターを書いて、彼らがいかに最高の友人であるかを伝えた」と主張した。

その上で「フロリダ州で私は、中国が州内の土地を購入するのを禁じた」「(中国語の教育機関である)孔子学院を州の大学から締め出した。我々は脅威を認識し、迅速かつ決意をもって行動した」と続けた。

ヘイリー氏は10年前の中国企業の誘致を認めたものの、デサンティス氏も先週の時点でフロリダ州の経済開発機関の責任者として、同州が中国企業にとって理想的な地だと発言していたと主張した。

ラマスワミ氏は両者の応酬に割って入り、デサンティス氏の指摘は「正しい」と発言。ヘイリー氏は確かに以前、中国からの投資を支援していたと述べた。ただ続けてデサンティス氏にも批判の矛先を向け、同氏とつながる資金提供者が過去にロビー活動を通じて中国による対米投資を支援していたと明らかにした。

これはデサンティス氏の資金提供者でヘッジファンド、シタデルの最高経営責任者(CEO)を務めるケン・グリフィン氏が中国人の資産購入に関する法改正を求めたとの報道に対する言及とみられる。法改正の内容は、中国国籍の人物に米国内の軍事基地近くの物件購入を許可するというものだった。デサンティス氏はラマスワミ氏の主張を否定した。

強気に出るラマスワミ氏

3回目の討論会は、開始数分でラマスワミ氏の強気の姿勢が鮮明になった。同氏が強く出た相手はメディアであり、ヘイリー氏であり、討論の司会者たちであり、共和党全国委員会(RNC)のロナ・マクダニエル委員長であり、デサンティス氏と同氏の履くブーツだった。

要するに、トランプ氏以外は何でも格好の標的になった。

このうちマクダニエル氏については、本人がRNC委員長に就任した17年以降、共和党が選挙で被ってきた一連の敗北の責任があると主張(17年はトランプ氏が大統領に就任した年でもあるが)。辞任を求める意向を示唆した。

次いでラマスワミ氏は討論の司会者の人選を攻撃。本来選ばれるべきだった司会者としてFOXニュースの元看板司会者、タッカー・カールソン氏、ポッドキャスト番組を運営するコメディアンのジョー・ローガン氏、富豪のイーロン・マスク氏の3人を挙げた。その上で「腐敗した大手メディア」を糾弾した。

イスラエル問題に関してはネタニヤフ首相が「自国の南の国境であのテロリストたちを打ち負かす」のを支持すると述べる一方、自身も「我が国の南の国境でテロリストたちを打ち負かすだろう」と語った。

自らを米国第一主義の候補者と位置づけ、「ネオコン(訳注:新保守主義<ネオコンサバティズム>に同意する保守派)たち」の側との差別化を図りたいラマスワミ氏は、ヘイリー氏の外交政策に皮肉を浴びせたほか、デサンティス氏の履くブーツにまつわる臆測にも言及。

「この国を第一に考える次世代のリーダーを望むのか。それとも踵(かかと)が3インチ(約7.5センチ)のブーツを履いたディック・チェイニーを望むのか」と、問いかけた。

ヘイリー氏とラマスワミ氏の争いは個人的な内容に

3度の討論会を通じ、共にインド系米国人であるヘイリー氏とラマスワミ氏の争いは、一段と個人的な内容となってきている。

この夜の討論中最も緊張感が高まった場面の一つで、ラマスワミ氏はヘイリー氏を批判。自身の会社が動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を使用していることをヘイリー氏が非難したというのがその理由だった。一部の共和党議員は、安全保障上の懸念から同アプリの禁止を求めている。

ラマスワミ氏は、ヘイリー氏の娘が長い間TikTokを使用していると指摘。「先に自分の家族の心配をした方がいい」と述べた。

会場でブーイングが起きる中、ヘイリー氏は自分の娘のことを口にしないよう要求。続けてラマスワミ氏に対し、つまらない人間だと軽蔑する言葉を投げつけた。

クリスティー氏とスコット氏は脇役に

他の3人の候補者は互いを攻撃するのにより熱心で、支持率で大きく引き離されたクリスティー氏とスコット氏を相手にする時間はあまりないようだった。

数少ない発言の機会の中、スコット氏は大統領になれば妊娠15週以降の中絶禁止を支持するとし、デサンティス氏とヘイリー氏に同意を求めた。これに対しヘイリー氏は、サウスカロライナ州選出のリンジー・グラム上院議員が中絶に反対する法案を提出した際、スコット氏は法案を支持しなかったと指摘。中絶に関して同氏は立ち位置が曖昧(あいまい)だと述べた。スコット氏は、「それは全く事実ではない」と反論した。

ただほとんどの時間帯で、スコット氏とクリスティー氏は本格的な論争には加わらなかった。他の3人の候補者は積極的に論戦を繰り広げていた。

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