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米最高裁判決、今回は大きな反発が起きなそうな理由とは

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バイデン米政権による学生ローン返済免除措置への支持を表明する人々

バイデン米政権による学生ローン返済免除措置への支持を表明する人々

(CNN) 米連邦最高裁は先週、リベラル派を失望させる判決を相次ぎ下した。中でも大きいのは、大学の入学選考で人種や民族を個別の判断材料として使うことを認めない判決だ。最高裁はバイデン大統領の学生ローン返済免除措置についても違憲との判断を示し、コロラド州のウェブデザイナーが宗教上の理由から同性カップルの結婚式を祝うウェブサイトの作成を拒否した件については支持した。

最高裁が「ロー対ウェイド」判決を覆してリベラルに衝撃が走った昨年とは違い、今年の主要判決が一般国民から大きな反発を招く可能性は低い。

この点は世論調査にも如実に表れている。全米で人工妊娠中絶を合法化した1973年のロー対ウェイド判決の場合、世論調査で大きな支持を集めていた。

ロー対ウェイド判決を覆す方針がリークされる直前の昨年5月、FOXニュースの世論調査では登録有権者の63%がこうした動きに反対し、賛成は27%にとどまっていた。ABCニュースとワシントン・ポスト紙による共同世論調査でも54%がロー対ウェイド判決の維持を望み、判決が覆されることを望む人は28%だった。

人工妊娠中絶が合法であることを望むこうした過半数の米国民は、最高裁が22年6月にロー対ウェイド判決を覆す判断を正式に示した後も、同様の姿勢を貫いている。最高裁の判決以降、中絶支持派はカリフォルニア州のような民主党の牙城からケンタッキー州のような共和党色の濃い州まで全米各地で、関連するあらゆる住民投票に勝利してきた。

中でも重要なのはカリフォルニア州だ。同州の有権者は20年、(教育関係などの)政府機関で人種や性別、民族を考慮すべきかを問う住民投票に臨んだ。投票では明白に過半数となる57%が、州や自治体が公教育や雇用、契約の判断でそうした要素を考慮することに反対した。

大統領選でバイデン氏に投票した人が30%近く上回ったカリフォルニア州がアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)に反対しているのだから、全米で同様の結果が出ても驚くには当たらない。

先月発表されたピュー・リサーチ・センターの世論調査結果では、大学が多様性促進を目的に人種やエスニシティーを考慮に入れることに反対する人が50%に上った。賛成は33%にとどまった。

このピューの世論調査は外れ値ではなく、最高裁の判決後に実施されたABCニュースとイプソスの共同世論調査でも52%が判決に賛成、32%が反対だった。

判決前に実施された世論調査では、アファーマティブ・アクションへの反対がさらに多いケースもあった。CBSニュースとユーガブによる最近の世論調査では、最高裁は大学の入学選考で人種や民族を考慮することを認めるべきではないとの回答が70%に上った。

ただ、最も興味深いのはおそらく、入学選考で人種を考慮することに対する賛成や反対の割合ではない。注目すべきはむしろ、アファーマティブ・アクションに関する最高裁の訴訟に大して関心を持たない人が多いことだ。

マーケット大学ロースクールによる5月の世論調査では、明示的に選択肢を与えられた場合、過半数(55%)がこの訴訟について意見を持つほど詳しく知らないと答えた。

これは22年3月の状況とは大きく異なる。当時、マーケット大学が人工妊娠中絶を巡る最高裁の訴訟について同じ質問をしたところ、ロー対ウェイド判決が覆される可能性について意見を持つほど詳しく知らないと答えた人は30%にとどまった(十分な知識を持つ人の間では、最高裁が判決を覆すことを支持しないと答えた人が相対多数に上った)。

有権者が関心を持っていないのであれば、その争点が有権者を行動に駆り立てるとは考えにくい。

最高裁が差し止めたバイデン氏の学生ローン返済免除措置についても同じことが言える。USAトゥデーとイプソスが4月に行った世論調査では、この訴訟についてよく知っていると答えた人は52%で、非常によく知っていると答えた人はわずか16%だった(学生ローンを抱える人の間では、よく知っていると答えた人が71%に上ったが、これは自分に直接影響を及ぼす可能性のある問題にしては相当低い割合だ)。

こうしたなじみの薄さのせいか、特定の学生ローンの帳消しに賛成するか反対するかは、質問の文言に左右される部分が非常に大きい。マーケット大が5月の世論調査でバイデン氏や政権に具体的に言及しなかったところ、最大2万ドルの返済免除を支持するという人が過半数(63%)を占めた。イプソスの調査ではこの割合は47%と大きく下がった。

バイデン氏の計画だと明記した調査でも同じような傾向があり、世論は二分され、わからないという人がかなり割合を占めた。

ABCニュースとイプソスの共同世論調査では、45%がバイデン氏の学生ローン返済計画を違憲とする最高裁の判断に賛成し、反対は40%だった。約6分の1(16%)は態度を決めかねているという答えだった。

これは最高裁の判断が発表される前の調査とも一致する。昨年のNBCニュースの世論調査では、バイデン氏の案が「良いアイデア」だとの回答は43%、「悪いアイデア」だとの回答は44%で、10%強は「意見なし」だった。

USAトゥデーとイプソスの調査でも、最高裁に政府の学生ローン返済免除措置を認めてほしいとの回答は43%、認めてほしくないとの回答は40%だった。「意見なし」は17%だった。

(いずれの調査でも、学生ローンを抱える人は政府の返済免除措置を求める傾向が強かったことを指摘しておく必要がある。ただし、米国民の約8割は学生ローン負債を抱えていない)

コロラド州のウェブデザイナーを支持した最高裁判決についても、世論の賛否は割れた。このウェブデザイナーは宗教上の理由から同性カップルの結婚式のウェブページ作成を拒否した。ABCとイプソスの世論調査によると、43%は最高裁の判決に賛成し、42%は反対、14%は態度を決めかねていると回答した。

この訴訟に関しては判決前の世論調査の数が限られているが、大きな反対があったことを示す調査結果はない。「結婚式のウェブサイト」や「同性婚」に具体的に言及したピューの調査では、宗教的もしくは個人的な信条を侵害するサービスの拒否は容認すべきだとの回答が過半数(60%)を占めた。

ロー対ウェイド判決を巡る過去1年の世論調査では、これとは全く異なる結果が出ていた。賛否が拮抗(きっこう)することはなく、人々はロー対ウェイド判決を覆すことに一貫して反対で、判決に関する関心も非常に高かった。この結果、22年中間選挙では政権政党が歴史的な好結果を収め、最高裁に対する大きな反発も巻き起こった。

大学入学選考のアファーマティブ・アクション、バイデン氏の学生ローン返済免除措置、そして宗教に反する場合は結婚した性的少数者(LGBTQ)のカップルに特定のサービスを提供しないことが認められるかとの問題に関する現在の世論調査を踏まえると、一連の最高裁の意見が同様の影響をもたらすとは考えにくい。

本稿はCNNのハリー・エンテン記者による分析記事です。

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