バナナが名産品ではない東京、それでも名物土産が「東京ばな奈」の理由
贈り物の文化
東京ばな奈は、日本の伝統である「お土産」にぴったりだ。
日本の多くの習慣と同様に、お土産選びには細かな配慮が必要とされる。
お土産は単なる記念品ではない。西洋では、旅行者が大切な人へのプレゼントとしてマグネットやTシャツを買って帰ることがあるが、お土産は、帰宅後すぐに食べなければならない飲食物であることがほとんどだ。
この理屈に従えば、お土産は通常、特定の地域でしか手に入らない、あるいはその地域が特においしいことで知られている食品だ。例えば、沖縄の塩や、京都の伝統的な抹茶、青森のりんごを使ったお菓子などが挙げられる。
お土産は日本の伝統かもしれないが、東京ばな奈の最大の顧客は外国人旅行者だ。同社はこれを狙い通りだと話す。グレープストーンによると、1990年代に羽田空港で販売スペースを得たことが、そもそも東京ばな奈を開発するきっかけになった。
東京というブランドと、商品名を英語で明記したことから、東京ばな奈はすぐに東京と結び付けられるようになった。
日本在住のカナダ人、ジェフ・ルイさんは、東京ばな奈は外国人観光客向けのマーケティングが巧みだと考えている。「ほとんど義務のように、友達のためにこれを買わなきゃいけないと思わせる」
ただし、SNSでは話は違ってくる。
海外のTikTok(ティックトック)ユーザーは、東京に着くやいなやこのお菓子に飛びつく。手に入れた珍しいフレーバーを披露する人もいれば、家族にどれを買って帰るべきかアドバイスを送る人もいる。
クリエイター「Eat With Adrian」さんによる東京ばな奈のレビューは、TikTokで約26万回再生され、「自分用に買いたい」というコメントが寄せられた。
一方で、8年ほど日本に住んでいる米国人のトンプソンさんは、東京ばな奈が自分にとって定番のおやつではないことを認めている。中身のクリームが人工的な味がするからだという。
故郷の友人や親戚から東京ばな奈について聞かれることはあるものの、買っていくことはなく、代わりにお気に入りの「シュガーバターサンドの木」を買って帰るそうだ。偶然にも、このクッキーもグレープストーンの商品だ。
ルイさんも東京ばな奈は自分で買って食べるものではないと認めているが、カナダから来日する人たちからよく質問を受けるという。
近年、東京ばな奈はより地域密着型のブランドを目指して取り組みを進めている。
グレープストーンは、レモン、サクラ、ハチミツといった新フレーバーを定期的に発売。話題作りのため、一部の商品は、銀座店など特定の店舗でのみ販売されている。
ピカチュウ、ちいかわ、ハローキティ、ドラえもんといった人気キャラクターともコラボレーションしてきた。東京ばな奈フレーバーのキットカットもある。
2022年には東京駅構内に旗艦店をオープン。これを記念し、豚と牛の合挽きを玉ねぎソテーと生クリームで煮込んだカレーにバナナピューレを投入してアレンジした、香り立つ商品を開発した。
グレープストーンは具体的な年間販売数を公表していないが、自社サイトでは東京ばな奈が東京で最も人気のある土産物だと説明している。
同社はCNNに対し、1年で販売される東京ばな奈を並べると、東京から太平洋を越え米国に到達するほどの長さになると語った。
◇
原文タイトル:Bananas don’t grow in Tokyo. That hasn’t stopped them from becoming a symbol of the city anyway(抄訳)