衛星通信スターリンク、「全ての前線で使用」 ウクライナ高官
(CNN) ウクライナ国防省のブダノフ情報総局長は11日までに、米実業家イーロン・マスク氏が経営する会社が展開している衛星通信スターリンクについて、ロシアとの戦争における全ての前線で使われていると述べた。
ウクライナメディアによれば、ブダノフ氏はヤルタ欧州戦略会議で、「前線で実力を示してきた。(スターリンク・システムが)良いか悪いかは好きに言えるが、事実は事実だ。間違いなく全ての前線で使われている」と語った。
ブダノフ氏はスターリンクが戦争にもたらす違いについて肯定的に説明した。
ブダノフ氏は、スターリンクがこれまでもこれからも重要な役割を果たすと述べた。通信やドローン(無人機)の操縦、遠隔地の指揮所との連絡などに活用されているという。
ブダノフ氏はまた、ロシア占領下のクリミアで、スターリンクの中継が「しばらくの間、機能しなかった」と述べたが、詳細は明らかにしなかった。
ブダノフ氏は「スターリンクのシステムがクリミア付近で一定期間、機能しなかったことは間違いなく確認できる。われわれはすぐに、そこがサービスの範囲にないことに気が付いた。わたしが言えるのは、おそらくこれだけだ」と語った。
ブダノフ氏の今回の発言の前には、マスク氏の新しい伝記本の中で、戦争でのスターリンクの利用に関して新たな状況が明らかになっていた。
伝記本の抜粋によれば、マスク氏は昨年、ウクライナ軍によるロシア軍艦隊への奇襲攻撃を止めるため、スターリンクのクリミア近くのネットワークを切断するよう、エンジニアにひそかに命じていた。
このため、爆発物を搭載したウクライナ軍の無人潜水艇がロシア軍艦隊に近づいた時、潜水艇は通信の接続を失い、損害を与えることなく海岸に打ち上げられたという。
伝記を執筆したウォルター・アイザックソン氏によると、通信を切断するというマスク氏の判断は、ロシアの高官らとの会話から、ウクライナのクリミア攻撃にロシアが核兵器で応じるのではないかと激しい恐れを抱いたためだった。ウクライナの当局者はマスク氏に通信を元に戻してほしいと要望したという。
マスク氏はCNNのコメント要請には応じなかったが、自身が所有するX(旧ツイッター)上で、スペースXが提供するスターリンクのサービスをクリミアでアクティブにしたことはなく、ウクライナ政府がサービスを提供するように「緊急の要請」をしてきたと述べた。
マスク氏は「(クリミア半島の港湾都市)セバストポリにつながる全ての道程でスターリンクを機能させるように政府当局から緊急要請があった」と投稿。
「停泊しているロシアの艦隊の大半を沈めようというのが明白な意図だった。もし私が彼らの要請に同意していたら、スペースXは本格的な戦争行為と紛争の拡大で明白な共謀者となっていた」との認識を示した。