「ハリポタ」にアイスクリーム、北朝鮮ユーチューバーの実態は

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北朝鮮のユーチューバー、ユミさんが娯楽施設を訪れたときの様子。北朝鮮在住者とみられる人々が日々の生活を捉えた動画をユーチューブに投稿している/Olivia Natasha-YuMi Space DPRK daily/YouTube

北朝鮮のユーチューバー、ユミさんが娯楽施設を訪れたときの様子。北朝鮮在住者とみられる人々が日々の生活を捉えた動画をユーチューブに投稿している/Olivia Natasha-YuMi Space DPRK daily/YouTube

韓国・ソウル(CNN) 若い女性が冷蔵ケースを物色し、カメラに向かっていくつか取り出して見せる。

「これはミルク味。イラストがすごくかわいい」と女性は英語で言って、笑みを浮かべながらキャラクターの描かれたパッケージを指さす。「こっちはピーチ味」

女性は最終的に選んだアイスクリームコーンにかぶりつき、「ビスケットがとってもおいしい」と告げる。

4分間のユーチューブ動画の閲覧回数は4万1000回以上。だが、よくある動画ブログとは違う。「ユミ」と名乗る女性は、おそらく世界でもっとも孤立して謎めいた国、北朝鮮在住なのだ。

昨年6月に開設したユミさんのユーチューブ・チャンネルは、この1~2年でインターネットに現れたSNSアカウントのひとつ。北朝鮮の国民が日常生活を公開しているとされている。

だが専門家によれば、必ずしもすべてが動画の通りではなく、映し出される日常が金正恩(キムジョンウン)総書記の独裁政権下で困窮する大勢の暮らしとはかけ離れていることが見て取れるという。

それどころか、専門家も言うように、ユミさんをはじめとするユーチューバーはおそらく政府高官の関係者である可能性が高い。度々言及される核兵器から想起されるイメージよりも親しみやすい場所、その上観光客にも優しい場所として、国のイメージアップを図るプロパガンダ活動の一環の可能性がある。

ユミさんの動画は、北朝鮮政府の筋書通りに「お膳立てされた芝居のようだ」と、北朝鮮人権情報センター(NKDB)のパク・ソンチョル研究員は語った。

明らかな兆候

長い間、北朝鮮はどちらかというと表現の自由や行動の自由、情報へのアクセスを厳しく制限し、世界とは距離を置いてきた。

北朝鮮の悲惨な人権状況は、国連の批判の的となってきた。インターネットの使用は厳しく制限されている。スマートフォンの使用が許されている一部の特権階級でさえ、政府が運営する検閲の厳しいイントラネットにしかアクセスできない。海外の本や映画などは禁じられ、闇市場の禁制品が見つかると、重い刑罰が科されることもしばしばだ。

だからこそ、撮影可能な端末はおろか、ユーチューブにもアクセスできるユミさんが、一般的な北朝鮮人であるはずはないと専門家は言う。

「国民が外の世界とつながることは不可能だ」と、東国大学校で北朝鮮を研究するハ・ソンヒ研究教授は語る。

注目を浴びている北朝鮮のユーチューバーはユミさんだけではない。「ソンア」と名乗る11歳の少女は2022年4月にユーチューブを始めて、すでに2万人以上の登録者を抱えている。

「愛読書はJ・K・ローリングの『ハリー・ポッター』です」と、ソンアさんは、ある動画で同シリーズの第1作を掲げながら語っている。北朝鮮では一般的に海外文化、それも西側諸国の文化が法律で厳しく禁じられていることを考えると、とくに驚かされる。

動画の中のソンアさんはイギリス英語を話し、地球儀や本棚、ぬいぐるみ、額装された写真やピンクのカーテンに囲まれたのどかな子ども部屋のような場所に座っている。

贅沢は「特権階級」のもの

平壌でのバラ色の日常は、投稿者の社会的地位や素性を知る手がかりも与えてくれる。

ユミさんの動画には、テーマパークへ出かけてインタラクティブシネマに興じたり、川で魚釣りをしたり、用具がそろった屋内ジムで運動したり、学生たちが北朝鮮の国旗を振る中で鍾乳洞(しょうにゅうどう)を訪れたりする姿が映っている。

ソンアさんは盛況のウォーターパークに出かけ、科学技術センターを見学し、始業式の様子を動画に収めている。

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