大坂選手の失敗、テニス界のメンタルヘルス対応の不十分さ浮き彫りに

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全仏オープンに向けて準備を整えていた大坂選手=5月26日/Tim Clayton/Corbis/Getty Images

全仏オープンに向けて準備を整えていた大坂選手=5月26日/Tim Clayton/Corbis/Getty Images

文化的な転換

大坂選手が会見拒否を決めたことに対し、一部のコメンテーターからは怒りの声が上がった。

英国の司会者、ピアーズ・モーガン氏は大坂選手を「怒りっぽい小さなマダム」と形容。ジャーナリストのウィル・スワントン氏は豪オーストラリアン紙に「大坂なおみの未熟さ、尊大さと偽善には言葉を失う」と書いた。

一方、グランドスラム優勝23回を誇るセリーナ・ウィリアムズ選手は大坂選手に同情し、試合後の記者会見で「なおみへの共感しかない。彼女を抱きしめてあげられたらと思う。その気持ちが分かるから。私にも覚えがある」と語った。

往年の名選手、ビリー・ジーン・キングさんはより慎重な立場を取り、「依然としてメディアの役割は大きい」とツイートした。

ただし専門家からは、現在の記者会見はキング氏の頃とは別物であり、今やSNSのおかげで選手はファンと直接やり取りできる時代だとの声も上がる。

ラプソン氏は「試合後に会見場でインタビューを行い、特に負けた選手に対して誰でも答えが分かるような本当に恣意(しい)的な質問が行われるのは不必要な感じを覚える。選手はあっという間にフラストレーションを感じるようになる」と語る。

アブラモビッチ氏もこうした記者会見について、試合終了の直後、選手たちが「認知や感情機能のピークに達し、時にはストレスレベルも急上昇している」時に行われると指摘する。

さらに「記者会見に臨む義務が生じるとき、すべての選手に十分な準備ができているわけではない」(同氏)

若い選手の場合、会見室やネット上で厳しい視線を浴びる準備もままならないまま、国際的な脚光を浴びることになる。

ラプソン氏はまた、選手たちがネット上で中傷を浴びることが多い現状を踏まえ、当局が選手のメンタルヘルスの保護に十分な対策を講じているか疑問を呈した。

「スポーツの運営側に起きる文化的な転換よりも技術の進歩のスピードの方がはるかに早い」「統括団体の役員と、ソーシャルメディアなどが若い人々に影響を与える現実の間には、大きな隔たりが存在している」(同氏)

大坂選手はメディアの脚光から身を引くことで、逆にこうしたプレッシャーに光を当てた形だ。

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