OPINION

バイデン政権で民主党がなすべき課題 バーニー・サンダース氏寄稿

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バイデン政権下で民主党が取るべき政策についてサンダース上院議員(中央)が提言/CNN Illustration/Getty Images

バイデン政権下で民主党が取るべき政策についてサンダース上院議員(中央)が提言/CNN Illustration/Getty Images

(CNN) 昨今の報道を席巻する見出しは、当然ながらドナルド・トランプ前大統領による言語道断の振る舞い及び同氏が扇動した連邦議会議事堂でのクーデターの試みを扱う内容となっている。

なるほど、下院がトランプ氏を弾劾(だんがい)するのは重要だった。もちろん、上院は弾劾裁判で有罪判決を下さなくてはならない。いかなる大統領も、現在であれ将来であれ、米国に対する反乱を先導しておきながら罪を免れるなどということは許されない。

だがそれと同じくらい極めて重要なのは、全国各地で暮らす数多くの勤労者世帯が感じている痛みと不安を見落としてはならないという点だ。彼らを苦しめる公衆衛生と経済の危機は、我が国の近代史の中でも最悪のものである。実際のところ、多くの勤労者世帯が今日直面する経済的絶望感は、大恐慌以降のいかなる時期よりも大きい。

新型コロナのパンデミック(世界的大流行)の結果、我が同胞たる数千万人の市民が職と収入を失った。食事に困窮する事例は過去数十年間で最悪の水準に増加し、4000万人は住居からの立ち退きの瀬戸際にある。連邦政府による賃貸住宅の退去猶予措置が今月末で期限切れを迎えるためだ。我が国の2400万人以上は新型コロナ検査で陽性と診断されているが、米国民の数千万人は健康保険に未加入だったり保障が十分ではなかったりする状況だ。

これほどの経済的苦境と絶望の中、米国民の多くは自分たちの政府への信頼を失ってしまった。また非常にたくさんの人々が、昨年の大統領選の結果に関する虚偽を抵抗なく受け入れている。現状、民主党にとって絶対的に必要なのは、大胆かつ積極的な経済政策をバイデン大統領就任後の100日間で進めることだ。今は物事を小さく考える時ではない。大きな構想を描いて、勤労者世帯――黒人、白人、中南米系、アジア系、ネイティブアメリカンの各世帯――から、民主主義社会では政府が自分たちの求めに応えてくれるという信頼感を回復する時だ。

現在の米国の絶望的な経済状況に適切な対策を打ち出せなければ、バイデン政権は弱体化するだろう。民主党も2022年の中間選挙で、わずかに維持している議会上下院の過半数を失う公算が大きい。民主党はクリントン氏が大統領選を制した2年後の1994年の中間選挙で大敗した。オバマ大統領が勝利した2年後の2010年も同様だ。

こうした失敗を繰り返してはならない。

我々が直面している危険は、大規模にやりすぎるとか投入する資金が巨額すぎるといったことではなく、むしろ規模が小さすぎたり国民のニーズを放置してしまったりすることにあるだろう。もし共和党がともに取り組む姿勢を示すなら歓迎すべきだが、彼らの協力が必要というわけではない。2010年、ミッチ・マコネル上院議員は共和党を優位に立たせるために経済を破壊することをいとわなかった。ありとあらゆる方法で、当時のオバマ氏を「1期だけの大統領」で終わらせようとしたのだ。

彼にまた同じ手を使わせるわけにはいかない。

上院で主要な法案を成立させるには60票以上の賛成が必要で、これが政治の不作為の口実にされてきた。だがここではっきりさせよう。我々にはこの手続き上のハードルを乗り越える手段がある。上院予算委員会の新たな議長として、私は予算調整として知られる手続きを用いるつもりだ。これにより、包括的法案を51票のみの賛成で通すことが可能になる。

これは過激な考えでも何でもない。

ブッシュ(息子)、トランプ両政権で上院は共和党が過半数を押さえていたが、彼らは予算調整を使って数兆ドル規模の減税案を通過させ、最上位に位置する富裕層や大企業に恩恵をもたらした。同じようにして17年には、医療保険制度改革(オバマケア)撤廃に向けて予算調整を利用した。今回は民主党が同様の手順を駆使しなくてはならない。米国民を貧困から救い出し、賃金を引き上げ、実入りの良い仕事を生み出すにはそれが必要だ。

まず、12月に議会を通過した直接給付について、すべての勤労者世帯向けに600ドルから2000ドルへと増額しなければならない。この問題については、バイデン氏、トランプ氏、チャック・シューマー上院院内総務、ナンシー・ペロシ下院議長、上下両院の複数の共和党議員、そして間違いなく、苦しい状況にある多くの米国民(彼らは12月にさらなる景気刺激策を求めていた)が意見を同じくするだろう。

とはいえ、国家がとてつもない危機に向き合っている現状を考えると、それだけでは足りない。予算調整を通じて大規模な新型コロナ救済パッケージを成立させる必要がある。これで緊急失業給付金は週600ドルまで拡大。州並びに地方政府を支援して大量解雇を防ぐとともに最前線で働く医療従事者に危険手当を支給し、郵政公社(USPS)を守ることができる。ホームレスになるリスクにも対応し、米国内のいかなる人も飢餓や住居からの立ち退きに遭わずにすむ。

危機の間は、緊急医療をすべての人に提供しなくてはならない。健康保険未加入者や保障不足の人の医療費の支払いは高齢者医療保険(メディケア)でまかなう。新型コロナ検査や感染経路の追跡、ワクチン配布にも十分な資金を投じる必要がある。プライマリーケア(かかりつけ医による医療)のシステムが行き詰まり、多くの人がメディカルホーム(患者中心の医療の拠点)を持たない時代にあっては、地域の医療センターと全国医療サービス部隊(NHSC、訳注:米保健福祉省に属する組織で、臨床医と医療へのアクセスが限られる人々とを結びつける役割を担う)の財源も大幅に増やさなくてはならない。NHSCは医師の少ない地域で医療従事者になることに同意した学生に対して奨学金を支給したり、学生ローンの支払いを免除したりする。

予算調整を通じ、この危機的な期間の失業手当は確実に非課税としなくてはならない。そうすれば働く人々は、確定申告期限の4月15日になって予想もしなかったほど巨額の税金に見舞われずに済む。

さらに我々は賃金の良い数百万の雇用を生み出す必要がある。我が国の老朽化したインフラ、つまり道路や橋、歩道、学校、水道システム、手ごろな価格の住宅を再建することでそれは可能になる。このほか世界の先頭に立って人類の存続を脅かす気候変動と戦う上で、また多くの雇用を創出できる。この場合は大規模な投資を風力、太陽光、地熱、電気自動車、耐候化、エネルギー貯蔵といった分野で行う。

最低12週間の家族休暇及び医療休暇を保証することも必須だ。高収入国で唯一、有休出産休暇が認められていないという国際社会から見て恥ずべき米国の現状にも終止符を打つ必要がある。

機能不全の幼児期の教育システムに対処するためには、国内すべての3~4歳児に向けた広く利用可能なPre―K(幼稚園就園前の教育)を提供し、保育の分野を大幅に拡充しなくてはならない。また、世界で最も教育水準の高い労働人口を確保するというのであれば、公立大学の授業料を無償化するとともに労働者階級の米国民の学生ローンを帳消しにすることが必要だ。

これらのすべてを実行しつつ、予算調整の手続きにより法外な処方薬の値段は大幅に下がり、最低賃金は15ドルに引き上げられる。このような施策は多くの人々の生活を改善するだけでなく、連邦政府にも数千億ドル規模のコスト削減効果をもたらす。

現在の並々ならぬ困難の時、どの世論調査を見ても米国民は政府に対し目の前の危機に積極的に対処するよう求めている。議会の今の仕事は米国民の声を聴き、我が国を大胆に前進させて経済的成功へと導くことだ。そして有権者に対し、民主党には生活を向上させるありとあらゆる手を打つ準備ができていると示すことである。

現状のような時期は、米国史上前例のないものだ。我々も前例のないやり方で行動しなくてはならない。

バーニー・サンダース氏はバーモント州選出の無所属の上院議員。議会では民主党の会派に属している。記事の内容は同氏個人の見解です。

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