東欧地域に生息のカラフトワシ、ウクライナ戦争で渡りのルートに変化 研究者

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ウクライナ上空を渡るカラフトワシが、戦争の影響で経路等の変更を強いられている/Aris Messinis/AFP/Getty Images

ウクライナ上空を渡るカラフトワシが、戦争の影響で経路等の変更を強いられている/Aris Messinis/AFP/Getty Images

(CNN) 既に種の生存を脅かされているカラフトワシが、ウクライナでの戦争という別の危険に直面している。戦闘の影響を受け、ウクライナ上空を抜ける渡りのルートの変更を余儀なくされているためだ。先ごろカレント・バイオロジー誌に掲載された論文が明らかにした。

論文によれば、カラフトワシは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで危急種に分類されており、欧州の西部と中部ではほぼ姿を消している。

しかしポーランドからウクライナ、ベラルーシ、ロシアへとまたがるポリーシャと呼ばれる湿地帯は、現在も種の有力な生息地であり続けている。

英国とエストニアの研究者らは、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった後の2022年3月から4月にかけ、戦闘のデータや全地球測位システム(GPS)を使って、カラフトワシ19羽の渡りの行動に対する戦闘の影響を分析した。ワシたちはウクライナを北へ向けて縦断し、ベラルーシ南部にある繁殖地を目指す。

その結果、追跡用のタグを付けたワシたちが紛争前の19~21年の渡りと比較して、通常の飛行ルートを著しく外れていたことを突き止めた。飛行距離は長くなり、直接繁殖地に達する傾向も低下していたという。

実際にワシたちが反応した可能性のある刺激を特定する観測証拠はないものの、研究者らは軍事行動に伴う騒音と光がワシたちの行動に影響をもたらし得たとみている。

渡りのルートが軍事行動の激しい地点と一致していた場合、通常ルートからの逸脱はより大きくなっていた。ただ研究者らによれば、個体ごとのルートは戦闘の影響の度合いや反応の仕方でそれぞれ変わってくるという。

論文では雌のワシを例に挙げ、繁殖地までの平均の飛行時間が246時間だったとした。これは侵攻開始前の193時間前後よりも延びている。

またワシたちの飛行距離は、平均で85キロ長くなっていた。極端なケースでは、前年より250キロ長く飛んだ個体も1羽いたという。

雄の飛行速度は平均で時速27.5キロ前後と、紛争前の平均時速35キロ前後よりも遅いことが分かった。ウクライナの外では、渡りの行動やルート変更のパターンに違いは観察されなかったと研究者らは記している。

この他、18~21年の渡りでは、追跡したワシたちの9割に相当する18羽がウクライナ国内を中継地にしていたが、22年は6羽のみだった。研究者らによれば、ワシたちにとって中継地は長い移動の途中で餌や水を確保する場所として重要。休息や、悪天候をやり過ごす際にも使われるという。

渡りの飛行距離が延びることで体力を消耗し、回復により多くの時間がかかれば、その後の繁殖の成功率にも悪影響が及びかねない。

論文の筆頭著者を務め、保護科学者及び鳥類学者として英イーストアングリア大学の博士課程で研究するチャーリー・ラッセル氏は、紛争が環境に与える様々な負荷を理解するのが極めて重要だとの認識を表明。それによって紛争後、カラフトワシのみならずより広範な生態系の回復に向けて一段と適切な支援が行えると指摘した。

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