古代の遊牧民が築いた帝国の秘密、DNAで解明

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匈奴のシンボルとして用いられた黄金製の太陽と月の表象/J. Bayarsaikhan

匈奴のシンボルとして用いられた黄金製の太陽と月の表象/J. Bayarsaikhan

「匈奴が勢力を拡大した過程について、より深い知見が得られた。彼らは全く異質な集団を統合し、婚姻や親族関係を利用して帝国を建設していった」。論文の上席著者を務め、ソウル大学校で生物科学を専攻するチョン・チュンウォン准教授は、報道発表の中でそう説明した。

研究対象となった個人の墓のうち、最も高位の部類に入るものは女性を埋葬する墓だった。この点から、匈奴の社会において女性が特に強力な役割を担っていたことが示唆される。精巧な棺(ひつぎ)を特徴づける黄金製の太陽と月の表象は、匈奴にとっての権力のシンボルだ。ある墓の中には、6頭の馬の遺体とそれらが引いたとみられる古代の戦車の遺物が入っていた。

ミシガン大学で中央アジアの美術と考古学を専攻し、今回の研究調査にも携わったブライアン・ミラー助教は、こうしたエリートの女性たちについて、高い尊敬を集めており、葬儀に参列したすべての人々からたくさんの供物を捧げられたと指摘。共同体の社会において、その生涯を通じ重要な役割を果たし続けていたことがうかがえると述べた。

この他、匈奴の青年期の若者は大人の男性と同様、弓矢と共に埋葬されていることも分かった。11歳より若い少年には、そうした副葬品は見られなかった。

独ボン大学の先史考古学者、ウルスラ・ブロセダー氏は、遺伝子を活用した今回の研究が匈奴の社会機構に対するより深い洞察をもたらしたと指摘。今後この種の研究がさらに進むことに期待を示した。

同氏によると、匈奴を巡ってはこれまでしばしば誤った解釈がなされてきた。匈奴をはじめユーラシア大陸の平原から興った統治体制についての情報は、中国や古代ギリシャの文献に依拠したものがほとんどだが、それらの大半は遊牧民族を劣った立場にあるとみなしているからだ。

実際のところ匈奴が残した影響は強大で、ユーラシア大陸の平原を起源とする後世の遊牧民族の王国も彼らに感化されていると、ミラー氏は語る。チンギスハンを初代皇帝とするモンゴル帝国もその一つだという。

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