廃タイヤに入ったヤドカリ脱出できず、「幽霊漁業」の実態解明 弘前大研究

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ヤドカリが廃タイヤに入り込んで出られなくなってしまう現象に関する調査結果が発表された/Adobe Stock

ヤドカリが廃タイヤに入り込んで出られなくなってしまう現象に関する調査結果が発表された/Adobe Stock

(CNN) 海洋に投棄されたタイヤの中に、ヤドカリが入り込んで脱出できなくなっている――。弘前大学の研究者が行った調査で、そんな「ゴーストフィッシング(幽霊漁業)」の実態を解明した。

餌や隠れ場所を求めてタイヤの内側に入り込んだヤドカリは、内部構造に阻まれて脱出できないまま死んでいた。人間が捨てた漁網などの廃棄物に海洋生物が絡まるこの現象がゴーストフィッシングと呼ばれる。

弘前大学の曽我部篤准教授は、2012年に陸奥湾で行った調査でこの現象に気づいた。陸奥湾沿岸のヨウジウオをモニタリングする過程で、廃タイヤの内側に大量の巻き貝の殻やヤドカリが存在することを発見したという。

曽我部氏はCNNの電子メール取材に応じ、タイヤの中に入り込んだヤドカリは、タイヤの反り返った内部構造のために脱出できなくなり、やがて死んだと思われると指摘。それを自身で証明したかったと述べている。

この調査で見つかったヤドカリの殻は、ひどく破損していた。閉じ込められたヤドカリたちの間で共食いや殻の奪い合いが起きていたことがうかがえると研究者は指摘する。

研究チームは水槽と海中で、ヤドカリがタイヤから脱出できるかどうか調べる実験を行った。海底に廃タイヤを設置し、侵入したヤドカリを月1回採取して調べた結果、タイヤの中に閉じ込められたヤドカリは1年間で1300匹近くに上った(ヤドカリは1回のみ実験に使用した後、採取場所の近くに放された)。

タイヤから脱出できたヤドカリは、1匹もいなかった。

曽我部氏は今回の研究について、タイヤの化学物質や物理特性だけでなく、タイヤの形状も海洋生物に悪影響を与え得ることが示されたと解説している。

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