トランプ米大統領、米国企業のアップルとマテルに関税の脅し 真の狙いは?

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ニューヨーク五番街のアップルの店舗前を行き交う人々/Adam Gray/Reuters

ニューヨーク五番街のアップルの店舗前を行き交う人々/Adam Gray/Reuters

(CNN) 米国のドナルド・トランプ大統領が大好きな関税を利用して、米国企業のアップルとマテルに脅しをかけている。

この1カ月の間、トランプ大統領は、この2社の最高経営責任者(CEO)の発言をめぐり、それぞれの主力製品を狙い撃ちにして関税の標的に据えてきた。

特定企業を標的とする関税の脅しは法的問題に突き当たる可能性が大きい。米国際貿易裁判所は5月28日、大統領が議会を通さず一方的に関税を課す権限に対して疑問を突き付けた。ただし連邦控訴裁は翌29日、その判断に待ったをかけた。

それでもトランプ大統領は明らかに、自分の要求に企業を従わせる手段として、関税の脅しに目を向けている。

今年に入ってアップルが米国に5000億ドル(現在のレートで約70兆円)を投資する計画を発表した際、トランプ氏は同社のティム・クックCEOを褒めたたえた。ところがその後、米国向けのiPhoneの生産拠点を中国からインドに移すとクック氏が発表したことでトランプ氏が腹を立て、自分の関税で企業の生産拠点は海外の工場から米国の工場へ移ると(ほとんど証拠もなく)公言した。

「アップルのティム・クックにはずっと前から、米国で販売するiPhoneはインドでもそれ以外でもなく、合衆国で製造して組み立てることを期待すると告げてきた」。トランプ氏は先月、SNSのトゥルース・ソーシャルにそう書き込み、「そうでなければアップルから米国に少なくとも25%の関税が支払われなければならない」とした。

この関税は、アップルと競合する韓国サムスンの製品も含めて米国へ輸入されるスマートフォン全てが対象になるとトランプ氏は述べ、「そうでなければ不公平だ」と主張している。

専門家はこの脅しについて、目的はスマートフォンに対して新たに25%の関税を課すことではなく、例えば米国へのさらなる投資、あるいは値上げを関税のせいにしないことなど、トランプ大統領の望む内容を企業から引き出すことにあると指摘する。

中国から輸入され、米フロリダ州マイアミビーチの店舗に並ぶマテルのバービー人形/Joe Raedle/Getty Images
中国から輸入され、米フロリダ州マイアミビーチの店舗に並ぶマテルのバービー人形/Joe Raedle/Getty Images

玩具メーカーのマテルに対しては、トランプ大統領が、同社が輸入する全ての玩具に100%の関税を課すと脅した。同社のイノン・クライツCEOは先に、関税のために一部の玩具の値上げを検討せざるを得ないと発言。玩具の製造拠点を米国に移すことはないと述べ、米国で製造すれば関税を払うよりも高くつくと説明していた。

これに対してトランプ氏は「彼の玩具に100%の関税を課す。そうなれば彼の玩具は米国で一つも売れない。それは彼らの最大の市場だ」と発言した。

ただ、マテルだけでなく全ての玩具に100%の関税を課すことを検討しているのかどうかははっきりさせなかった。ただしその後、マテルへの脅しに関するトランプ氏の発言はない。ホワイトハウスもマテルもノーコメントだった。

貿易に詳しい弁護士のリズベス・レビンソン氏によると、マテルについてもアップルの場合と同様に、トランプ氏の関心は関税よりも、自分の勝利だと主張できる何かをマテルから引き出すことの方にある。例えば玩具の一部でも米国内で調達する計画を発表するといった対応が考えられる。

トランプ氏が世界各国に対して発表した高関税にも同じことが言えるとレビンソン氏は言い、「パニック状態になって、どうすればいいかと電話してきた顧客もたくさんいた」「実際には、それが施行されることはなかった」と話している。

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