ANALYSIS

【分析】米国経済、実は見た目よりさらに弱い可能性

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4月3日、ロサンゼルス港に積み上げられた貨物コンテナ/Mario Tama/Getty Images

4月3日、ロサンゼルス港に積み上げられた貨物コンテナ/Mario Tama/Getty Images

ニューヨーク(CNN) トランプ米大統領の攻撃的な関税計画が米国経済の1~3月期の業績に影響を及ぼすことは広く予想されていた。企業各社が税率の引き上げを前に、製品の輸入を増やしたからだ。ただ大半の人が見込んだように、製品の備蓄がなければ経済の様相は実際より格段に悪化していただろう。

「人々は目下備蓄している。それが今の経済に寄与している。やがて彼らは支出を切り詰める」。リバタリアン寄りのシンクタンク、コンペティティブ・エンタープライズ・インスティテュートの上級エコノミスト、ライアン・ヤング氏はそう語る。

米商務省が4月30日に発表した2025年1〜3月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)は年率換算で前期比0.3%減だった。24年10〜12月の同2.4%増からの大幅な減速は株価を押し下げ、リセッション(景気後退)を巡る議論に火を付けた。米国の景況感が今週、13年ぶりの低い水準に落ち込んだ理由を如実に示す結果でもあった。

前四半期のマイナス成長の中心にあったのは、来たるトランプ関税の前の駆け込み行動だ。それが財輸入を51%押し上げた。これは米経済が新型コロナウイルスに関連するロックダウン(都市封鎖)後に再始動した20年以降で最速のペースだ。

しかしそうした財輸入の急増がなければ、最新のGDP報告は一段と暗いものになっていた可能性がある。

トランプ氏は4月2日の時点で、米国の全貿易相手国に対して関税の引き上げを発表することを公言。その日を「解放の日」と呼んだ。しかし企業や消費者の間には次のような疑問が浮かんだ。それらの新たな関税は一体どこまで高くなるのか?

答えを待っていると、代償は高く付きそうだ。そこで企業は事前の備蓄を叫び、消費者も高額商品を中心に購入に動いた。

GDPを算出する方法上、輸出に対して輸入が増えれば、経済の伸びは鈍化する。しかし同時に、輸入が上向いたことで企業投資はそのまま大幅に増加した。他の全ての条件が同じなら、高水準の投資はGDPを押し上げる。ただ今回の場合、その上げ幅はマイナス成長をプラスに転じるには不十分だった。

企業投資が22%増加したことを受け、関税政策を担当するナバロ大統領上級顧問はGDPの報告を「これまでの人生で見てきた中で最高のマイナス成長」と形容した。しかし同氏が言及しなかったことだが、投資の増加の大半は、企業による在庫の買い取りに由来するものだった。

GDPの一段の落ち込みを食い止めたもう一つの要因は、1.8%の増加を記録した消費者支出だ。しかしここでも、その理由は関税前の駆け込み需要に行き着く。

「備蓄は製品を実際よりもよく見せる」とヤング氏。「それは裏を返せば、真夜中の駆け込み需要が終わってしまえばそこから経済は失速するということでもある」と指摘し、「4~6月期のGDPの数値は残酷なものになるかもしれない」と付け加えた。

会計事務所大手アーンスト・アンド・ヤングのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏によれば、当該のデータは概して「人工的な需要の先食い」の代表例であり、「たいていの場合そうした前倒し効果の先に待っているのは断崖絶壁」だという。

「実際のところ4~6月期には、消費者の支出と行動、企業の投資と在庫とが軒並み成長の大きな障害物となるのを目の当たりにするかもしれない」。ダコ氏はCNNの取材に答えてそう分析した。

認識は必ずしも一致せず

エコノミストの中には、4月30日のGDP報告をやや楽観的な論調で読み解く人もいる。

「この報告は、他の点では健全な経済がどのような様相を呈するかをほぼ正確に示している。つまり関税を『予期』しつつもまだそれによる直接の痛手は被っていない経済だ」。米イエール大学バジェット・ラボの経済分野の責任者アーニー・テデスキ氏はX(旧ツイッター)にそう投稿した。同氏はバイデン前政権のトップエコノミストでもあった。

UBSの米国担当上級エコノミスト、ブライアン・ローズ氏はさらに一歩踏み込み、今回のGDPの数値について、「根底にあるビジネスサイクルが依然として健全である」兆候との見方を示した。

「我々はGDPがマイナス成長だったことを過度に懸念していない」と、ローズ氏は30日の文書で述べた。その上で、22年1~3月期も米国経済はマイナス成長を記録したが、すぐにプラス成長に戻ったと指摘した。

しかしながら同氏は、今年の4~6月期のGDP報告が改善する公算は小さいとも予測。その理由は先進国で最高水準となるトランプ氏の関税の影響がより明白に表れるからだとした。

本稿はCNNのエリザベス・バックワルド記者による分析記事です。

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