シリコンバレーバンクの次は? 米国はさらなる混乱を回避できるのか

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シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻(はたん)を受けて、今後の展開に注目が集まっている/Tayfun Coskun/Anadolu Agency/Getty Images

シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻(はたん)を受けて、今後の展開に注目が集まっている/Tayfun Coskun/Anadolu Agency/Getty Images

ニューヨーク(CNN) シリコンバレーバンク(SVB)は10日、急激に資金繰りを悪化させた後、経営破綻(はたん)した。テクノロジー業界と金融界は今後の状況について不安を募らせている。

10日に起きた出来事は典型的な取り付け騒ぎだった。SVBが規制当局に提出した文書によると、9日に預金者が420億ドル(約5兆6500億円)を引き出したため、SVBは10億ドルの債務超過に陥った。言い換えれば、預金者の預金額に対して銀行の手元資金が不足していたわけだ。SVBと規制当局は至急対応に乗り出したものの、差額の補填(ほてん)に十分な資金を調達できず、同行は10日に破産を宣言した。

連邦預金保険公社(FDIC)は同行を管理下に置き、13日には保険制度対象の預金の引き落としが可能になると述べた。ただ注意点もある。FDICの保護対象となるのは預金額25万ドル以下の口座のみ。SVBによれば、昨年末の時点で保険上限を超える預金額は1515億ドルで、そのうち1376億ドルが米国の預金者によるものだった。

政府は銀行の資産を売却するなどして預金者への返還に充てることから、保険対象外の預金も一部返還される可能性はあるものの、同行の取引企業が全額またはそれに近い額の預金を回収できるかどうかは不明だ。

これをきっかけに二つの大きな懸念が広がり、対策を求める声が一斉に上がった。ひとつは、SVBと同じような取引をする他の銀行も経営破綻するのではないかという恐れだ。金融界はSVBに資産を預けていたIT企業が倒産する可能性も懸念している。こうした理由から、政府による救済を求める声が高まっている。

救済はあるかもしれないが、おそらく前回とは違う形になるだろう。

2008年当時との比較

2008年の金融危機後に米国の規制が強化されたことで、制度上重要な大手銀行は今回のような状況を乗り切るために緊急時に備えて準備金を増やした。つまり、世界の銀行制度が15年前のように崩壊の危機に陥ることはない。

行政管理予算局(OMB)のシャランダ・ヤング局長はCNNの番組「ステート・オブ・ザ・ユニオン」で、ケイトラン・コリンズ記者に、「(08年の)金融危機前と比べて、銀行制度は全体的に回復力が増し、基盤もしっかりしている。これは改革によるところが大きい」と語った。

SVBの問題の一部は、同行特有の問題だった。同行はベンチャーキャピタルから支援を受ける米国のIT企業やヘルスケア企業のほぼ半数に資金を提供していた。つまり、資産のほぼすべてを1カ所に集中させていたのだ。大半の銀行は資産をうまく分散させている。

だがそれだけではない。金融市場ではこの数日間、小規模な銀行の株価が急落している。10日にはファースト・リパブリック・バンクやパックウェスト・バンコープ、シグネチャー・バンクが大きく値を下げたためにサーキットブレーカーが発動され取引が一時中断。不安を抱える投資家は一息入れることができた。ファースト・リパブリック・バンクの株価はこの2日間で29%下落した。

これをきっかけに、小規模な銀行でも預金流出が始まって、1980年代から90年代初頭の貯蓄貸付組合危機の二の舞になるのではないかとの憶測が広がり、9日と10日には株式市場全体が3%以上の下げ幅を記録した。

連邦準備制度理事会(FRB)が歴史的なスピードで金利を引き上げ、銀行所有の国債の価格が下がったことで、債券への支払額と債券の価値の差が劇的に広がった。FDICによると、昨年末の時点で銀行全体の含み損は6200億ドルに上っていた。政府の救済がなければ、どん底から立ち直れないかもしれない小規模銀行も出てきそうだ。

SVBに保険上限を超える大口預金を抱える企業は、近く給与の支払いや業務の運営ができなくなる可能性がある。IT系スタートアップ企業の多くは今後の対応の模索に追われ、取引銀行が突然経営破綻した場合に果たして乗り切れるのか思案している。通貨価値の安定を図る「ステーブルコイン」と呼ばれる種類の暗号資産(仮想通貨)で知られるサークル社は先に同社史上最安値を記録した。SVBの預金者が持ちこたえられなければ、この先1週間は倒産、債務超過、大量解雇、その他さまざまな混乱といった事態が起きる可能性もある。

救済策の内容は

週末にかけて、救済策を求める声はシリコンバレーから金融街まで広がった。こうした要望は聞き届けられない可能性がある。

OMBのヤング局長によれば、SVBの経営破綻を受けて、ジャネット・イエレン財務長官は週末ずっと金融規制当局者と連絡を取り合い、連携しながら「精力的に」取り組んでいるという。イエレン長官は12日にCBSとのインタビューで、銀行救済の可能性を退けた。

イエレン長官はCBSに「はっきりさせるが、先の金融危機では大手銀行の投資家やオーナーが救済の対象だった。それ以来、様々な改革が行われてきたことから、政府が同じ対策を講じることはない。だが我々も預金者について懸念しており、ニーズに応えられるよう注力している」と語った。

イエレン長官は、SVBに保険上限を超える大口預金を抱える企業にも政府が何らかの支援を行う可能性を示唆した。

「この銀行に預金し、今回の経営破綻で影響を被っているスタートアップ企業やベンチャーキャピタルが多いことは十分認識している。この問題について解決策を検討している」(イエレン長官)

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