週内にも天然ガス危機か、備える欧州 熱波でエネルギー需要増の中

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ノルドストリーム1の受け取り側施設があるドイツ・ルブミン/Sean Gallup/Getty Images

ノルドストリーム1の受け取り側施設があるドイツ・ルブミン/Sean Gallup/Getty Images

ロンドン(CNN Business) 欧州は今週後半にも天然ガス供給が本格的な危機に陥る可能性に備えている。歴史的な熱波に見舞われ、冷房の電力需要が高まるタイミングで危機を迎える可能性がある。

ロシアと欧州を結ぶ重要なパイプライン「ノルドストリーム1」は10日間の定期メンテナンスを終え、21日を再開予定日としている。しかし、2月のロシアによるウクライナ侵攻以来、欧州連合(EU)が科している制裁措置への報復として、ロシアが天然ガス供給を再開しないのではないかという懸念が高まっている。

ドイツのハーベック経済気候相は今月初め、「最悪の事態に備えなければならない」と述べた。

同パイプラインは年間550億立方メートルの天然ガスを欧州に供給しており、これはロシアからのパイプライン輸入総量の約40%に相当する。

ロシアはすでに、欧州の一部の国への天然ガス輸出を削減している。先月、ロシアの国営ガス会社ガスプロムがノルドストリーム1経由の輸出を60%削減したことで、欧州最大の経済国であるドイツは「天然ガス危機」を宣言した。

ガスプロムは削減の理由について、西側が制裁を根拠にタービンを返却しないと決定したことが要因だと批判している。

ドイツのガス供給大手ユニパーは18日、ガスプロムから過去及び現在の供給不足について「不可抗力」を主張する書面を受け取ったことを確認した。不可抗力とは主に自然災害などの極端な状況下で主張される抗弁で、債務不履行時の免責事由となる。ユニパーはガスプロムの主張を「正式に拒絶した」とも述べた。

懸念されている今週末の天然ガス供給不足は欧州各国が歴史的な熱波に襲われる最悪のタイミングと重なる。フランスとスペインの一部では山火事が発生しており、気温は今後数日間で40度を超えると予想されている。

気温の上昇により、エアコンの電力需要が高まっている。スペインのガス輸送システム事業者エナガスは先週、熱波で発電用の天然ガス需要が過去最高の800ギガワット時に達したと発表した。

一部の専門家からは、熱波は週の半ばまでには収まり、熱波による電力消費増は太陽光発電からの記録的な供給量で相殺されるとの楽観的な見方も示されている。

ガス産業団体ガス・インフラストラクチャー・ヨーロッパによると、EU全体の天然ガス貯蔵量は現在約64%だという。

欧州諸国は冬季の壊滅的なエネルギー不足を避けるため、ガス貯蔵量を急いで増やそうとしている。国際エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル事務局長は、「今後数カ月が極めて重要」で、貯蔵率9割までの引き上げ前にロシアが供給を止めれば、状況は「より深刻で困難になる」としている。

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