現在の市場、倫理的投資で安全得られず

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ニューヨーク証券取引所の株価情報の表示=4月29日/Michael Nagle/Bloomberg/Getty Images

ニューヨーク証券取引所の株価情報の表示=4月29日/Michael Nagle/Bloomberg/Getty Images

ロンドン(CNN Business) 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)から経済が回復し始め、環境や社会、ガバナンスへの配慮をうたう銘柄への投資、いわゆるESG投資への関心も高まった。

だが今年に入って市場が低迷すると、ESGファンドは苦戦を強いられている。

何が起きているのか。リフィニティブ・リッパーから入手したデータによると、責任投資やESG銘柄を重視するファンドは、2月と3月に390億ドル(約5兆円)以上の資金の純流出があった。

こうしたファンドは新型コロナウイルス発生で市場が混乱した2020年3月以降、資金流出額が流入額を上回ることはなかった。

ESGを重視するファンドは今年2月、3月に資金の純流出を経験/Source: Refinitiv Graphic: Tal Yellin, CNN
ESGを重視するファンドは今年2月、3月に資金の純流出を経験/Source: Refinitiv Graphic: Tal Yellin, CNN

詳しく見てみれば、突如ファンド責任者らが企業価値を気にかけなくなったのではなく、こうしたファンドの命運が金融市場の動向により広く結びつくようになってきた状況がある。

しばしばESGファンドでは急成長企業やIT企業が好まれる。こう語るのはリフィニティブ・リッパーの調査責任者ボブ・ジェンキンス氏だ。

こうした企業は今年に入って苦戦を強いられている。投資家が――金利上昇や経済回復の低迷、2月に勃発したウクライナでの戦争の影響を考慮して――過小評価されている、もしくはリスクが低いとみられる企業に投資するようになったためだ。すなわち、成長株やIT株を多く所有していたESGファンドもつまずくことになる。

「ESGファンドはIT株や成長株に大きなエクスポージャーを抱えている――市場全体よりもその傾向が強い」とジェンキンス氏は語った。この種の銘柄から資金が離れるローテーションが起きれば、「市場全体も、それをやや上回る形でESGファンドも、下降線をたどることが予想される」

人気の上場投資信託(ETF)、iシェアーズESGアウェアMSCI米国ETFを例に挙げよう。ここが保有する人気銘柄にはアップルやマイクロソフト、アマゾン、テスラ、グーグルの親会社アルファベットなどがある――いずれも今年の株価は厳しい状況を経験し、投資家が方向転換するべきか否か推し量っている。

投資家の見解としては、ジェンキンス氏はESG分野の大幅な回復はしばらくないと考えている。4月のナスダック総合指数は13%下落し、08年10月以来最悪となった。S&P500も、20年3月以来の最大の下落率となる8.8%下げを記録した。

「(第2四半期の)早い時期に再び売りが見られ……ESGファンドで人気の成長銘柄やIT銘柄は再び悩まされている」(同氏)

広い視野で見ると、ESG投資はいまだ根強い。リフィニティブ・リッパーのESG基準を満たす世界の運用資産は、第1四半期を終えたところで7兆ドル強だ。だがこの2年で初めて、ESGファンドの風向きに一部変化が出てきた。この先数か月は難しい状況となる可能性もある。

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