ウクライナ・キーウ(CNN) ロシア民間軍事会社「ワグネル」のトップ、エフゲニー・プリゴジン氏は9日、今後ウクライナで戦う戦闘員を国内の囚人から徴集しない方針を明らかにした。過去9カ月にわたり刑務所から多くの戦力を供給してきた戦略の転換を意味するとみられる。
プリゴジン氏はワグネルのテレグラムチャンネルで、「囚人からワグネルへの徴集は完全に停止した。現在は同社のために活動する人員が、全ての義務を果たしている」と述べた。
決定の理由は一切明かされていないが、考えられる方針変更の要因はいくつかある。具体的には徴集可能な人員の減少、国防省の介入、活動に伴うプリゴジン氏の財政悪化の可能性などだ。このほか、同氏の手法がもはやロシアの戦場での優先事項には合致しなくなったとの通告を受けた可能性もある。
ここまでロシア全土の刑務所から徴集された囚人は4万~5万人に上るが、現在それらの志願者の数は縮小し、戦闘員の供給に支障が出ているのかもしれない。
ロシア当局の発表する数字も、こうした内容を裏付ける。昨年11月から今年1月にかけ刑務所内の囚人の数は6000人減少したが、昨年9~10月の減少幅は2万3000人に上っていた。
ワグネルによる刑務所での徴集については、プリゴジン氏の発表以前から失速の兆候が既に表れていた。複数の弁護士や人権活動家がロシアの独立系メディアの取材に答え、徴集担当者が囚人らを脅迫していると指摘。前線に向かうことに同意しなければ、新たな犯罪を立件すると告げているとした。CNNはこうした主張を独自に確認できていない。
上記の弁護士の一人は刑務所での志願者の減少について、ワグネル戦闘員の死傷者の多さが知られてきたことも一因だとの見方を示す。帰国した元戦闘員の中で、戦場におけるワグネルの損耗の激しさを周囲に伝えている者がいる可能性はかなり高い。
今週CNNが取材したワグネル所属の囚人2人は、ウクライナの陣地に突撃する際の損害の大きさに言及。前進を拒む戦闘員は司令官が即座に処刑すると語っていた。
囚人を徴集する活動は、ワグネルの財政を圧迫しているとも考えられる。同社は徴集した囚人らのために武器やその他の装備を購入するほか、ロシア国内やウクライナ東部の占領地域にある拠点で彼らを訓練しなくてはならない。さらに戦地への輸送、食料の支給にも費用が掛かる。
ワグネルの親会社の財政は常時極めて不透明であり、これだけの戦闘員の増加を支えられるだけの資金がどこから出ているのかを突き止めるのは非常に困難なのが実情だ。