ロシア軍とウクライナ軍では「巨人と少年」、両国の戦力を比較

東部ルガンスク州で攻撃を撃退する準備を整えるウクライナ軍の兵士=24日/ANATOLII STEPANOV/AFP/Getty Images

2022.02.26 Sat posted at 16:55 JST

(CNN) 重武装したロシア軍部隊がウクライナの首都キエフに急速に迫っており、米当局者は数日以内に同市が陥落する可能性があると警鐘を鳴らしている。

両国の軍事力があまりに不均衡なことから、ウクライナのゼレンスキー大統領は西側諸国に対し、ロシア軍をウクライナから排除するため制裁以上の措置を取るよう訴えた。

以下に両国の軍事力の比較を示す。

国防費


クリミア半島北部アルミャンスクを移動するロシアの戦車=/Sergei Malgavko/TASS/Getty Images

国防費を一瞥(いちべつ)するだけで両国の差は浮き彫りとなる。先週発表された国際戦略研究所(IISS)の報告書「ミリタリー・バランス」によると、ウクライナの2021年の国防費は47億ドル(約5400億円)。これは核兵器を持つロシアの458億ドルの10分の1程度に過ぎない。

ロシアはジョージアとの短期間の戦争で装備不足が露呈した後、08年に軍の現代化に乗り出した。一方、ウクライナの兵器の大部分はいまだソ連時代のものだ。北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指すウクライナは戦力構造の再編を進めており、30年半ばまでに空軍に西側の戦闘用航空機を配備する予定。また海軍力向上に向けた計画もある。


ロシアとウクライナの軍事力を比較。上から順に現役兵、予備役、装甲戦闘車両、航空機、ヘリコプター、潜水艦、防衛費を示す。数値は左から順にウクライナ、ロシア、ロシアに対するウクライナの比率/Source:IISS Military Balance, 2022 Icons: CNN, Adobe Stock/ohaiyoo/Comauthor Graphic:Carlotta Dotto, CNN

人員


東部ドネツク地方の道路で装甲車の上に乗る兵士=24日/Vadim Ghirda/AP

ロシアが現役兵90万人、予備役200万人を抱えるのに対し、ウクライナの現役兵は19万6000人、予備役は90万人にとどまる。IISSによると、ウクライナは23日に18~60歳の予備役の招集を始めた。

陸軍だけを見ても、ロシアの兵力は28万人と、ウクライナの12万5600人の倍を誇る。空軍では5倍近い差を付けており、ウクライナの3万5000人に対しロシアは16万5000人だ。

今回の作戦に投入される兵員の数に関して言えば、ロシアはウクライナ国内やその周辺に推定20万人を配置している。そう指摘するのはIISSの報告書作成に関わったリサーチアナリストのヨハン・マイケル氏だ。

マイケル氏は「この中には約60の戦闘グループが含まれる。情勢が急速に変化しており数字は変わる可能性があるが、非常に大規模といえる。重要なのはこの点だ。東欧に展開する軍としては近年最大規模、私が人生で目にした中でも最大規模だ」

「ウクライナは全ての兵員を動員して予備役も招集したため、こちらの人数はより難しい」

キエフ郊外で警護に当たる歩兵戦闘車=22日

兵器と車両

攻撃機、装甲車両、地対空ミサイルなど比較すべき要素は数多いが、一般的にはロシアは全てをより多く持っている。

たとえば、ロシアが1万5857台の装甲戦闘車両を保有するのに対し、ウクライナは3309台にとどまる。

ロシアの保有する航空機は1391機と、ウクライナの128機の10倍を超える。ヘリコプターはロシアが821機なのに対し、ウクライナは55機だ。これは海軍機を含めた数値となる。

またIISSによると、ロシアが49隻の潜水艦を保有するのに対し、ウクライナは1隻も持っていない。

「この2つの軍隊には大きな差がある。ロシアは航空領域の能力で大きく上回っており、防空もより強力だ」(マイケル氏)

「使用可能なヘリや航空機に大きな差がある。輸送機から戦闘機、攻撃ヘリまでのあらゆるレベルでだ」

戦闘意思


キエフ中心部の独立広場を車で移動するウクライナ軍=23日/DANIEL LEAL/AFP/Getty Images

ただ、ウクライナ軍はいくつかの反撃に成功した。マイケル氏は、ウクライナ軍兵士の真の戦闘意思こそ同軍の最大の強みだと指摘する。

「私は現在の光景に本当に驚いている。ウクライナの戦闘機が今も飛んでいること、実際に離陸したことには感心させられる」

もしロシアが近く首都を掌握すれば、ウクライナの反撃は難しくなるだろう。しかし首都掌握に成功しなかった場合、紛争が長引く可能性がある。このシナリオでは、ウクライナ軍の意思が強力な武器になるとマイケル氏は指摘する。

現代化

ただ、ウクライナ全土で戦闘が続く現在の状況では、兵器の量と質が大きな要素となる。

英国王立防衛安全保障研究所の専門家ニック・レイノルズ氏は、ウクライナ空軍はほぼ不能にさせられたと指摘する。

「ウクライナは2014年から続く経済問題の影響で現代化に深刻な問題を抱えているため、軍には現代的な防空装置や大砲が足りない。特に対砲兵レーダーなど敵の大砲を探知し、自力で制圧できる可能性を少しでも見込める監視装置の不足が顕著だ」

「こうした能力はウクライナ軍が移動して補給を行ううえで不可欠だ」

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