初の民間ティルトローター機、米FAAの認証取得へ ヘリと飛行機の長所兼備

初の民間ティルトローター機の開発が進められている/Leonardo

2019.05.19 Sun posted at 12:19 JST

(CNN) ヘリコプターのように空中で静止する一方、飛行機のように高速で遠くまで飛行する――。その名はティルトローター機。軍では既に長年にわたる運用実績がある。

そんなティルトローター機としては史上初めて民間用の量産モデルが認証を取得する見通しとなっている。用途は救急救命や捜索救助活動、会社役員の移動などだ。

報道によると、マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長も関心を表明した。ブルームバーグ氏のような人物は自宅近くでティルトローター機に乗り込み、時速480キロを超えるスピードで数千キロ離れた会合の場所に移動し、約3時間後には会場のヘリパッドに着陸できる。空港も必要ない。

臓器提供の過程でも貴重な時間を節約できそうだ。

例えば、病院のヘリパッドでドナーの心臓を受け取り、1600キロ超離れた病院に直接輸送する。空港に立ち寄ることはない。

捜索救助活動にも応用が期待できそうだ。低空飛行する捜索機は地上の人を発見できるが、安全な場所への搬送にはヘリの到着を待たねばらない。ティルトローター機なら捜索と搬送の両方をこなすことで時間を節約でき、人命救助につながる場面も考えられる。

世界初となる量産型の民間ティルトローター機は米国で開発が進んでいる。製造を手掛けるのはイタリアの航空防衛大手レオナルドだ。

機体の名称は「AW609」。全てが順調に進めば年内にも米連邦航空局(FAA)の認証を取得し、来年のどこかの時点で就航する見通しだ。

レオナルド・ヘリコプターズの役員、ジャンピエロ・クティーロ氏は米アトランタの業界会合でCNNの取材に応じ、AW609について「技術的な観点から見れば画期的だ」と話した。

AW609の定員は乗客9人と乗員2人で、主翼の両端にあるターボプロップエンジンで飛行する。各エンジンはホバリングや着陸、離陸、巡航飛行といった場面に応じて上下に向きを変える。

世界初の量産型ティルトローター機である米軍のV22オスプレイとは異なり、AW609は与圧された客室を備える。これにより上空約7600メートルでの飛行が可能となり、悪天候でも雲のはるか上空を飛ぶ。

オスプレイと同様、AW609の開発も悲劇に見舞われた。オスプレイは1992年と2000年に死亡事故を起こして評価が低落。AW609の試作機も15年の試験飛行中に墜落し、操縦士2人が犠牲になった。

より大型の「ネクストジェン」のイメージ図

米調査会社ティール・グループの航空業界アナリスト、リチャード・アブラフィア氏は「規制当局は開発の難しさを考慮し、この航空機を厳しく精査するだろう」「ただ、安全性に欠ける製品を認証しないことは確実だ」と語る。

AW609はティルトローター機としては初の民間機となることから、航空業界は規制面で新たな領域に入りつつある。

クティーロ氏は「認証を受けるのは新たなヘリコプターであると同時に、ターボプロップ(航空機)でもある」「ユニークな製品の認証となるだけに、簡単な道のりではない」との見方を示す。

レオナルドはFAAと協力して新型機の規制策定を進めてきた。クティーロ氏は「多くの障壁や困難があり、共同で取り組んでいるところだ」と認めつつ「それでも私は大きな自信を持っている」と語る。

AW609の価格は2500万ドル(約28億円)前後になるとみられている。比較対象となる従来型ヘリの2倍以上の価格だ。

すでにアラブ首長国連邦(UAE)が捜索救助仕様の3機を仮発注した。

米国ではテキサスに拠点を置くEraグループが来年、2機の納入を受けるとみられている。この契約にはフィラデルフィアにあるレオナルド社の専門施設で集中的な訓練を行う条項も含まれる。

このほかに顧客となる可能性があるのは中日本航空だ。同社は市場調査を行うことに同意しており、航空医療搬送や災害対応、報道取材にAW609を活用する道を探っている。

AW609は旅客機としての利用も可能になるとみられる。想定顧客は空港を避けて2点間を直接飛行したい会社役員だ。

ブルームバーグ前ニューヨーク市長はヘリ操縦士の免許を持っているが、クティーロ氏によると、報道とは異なり、AW609を購入する予定はないという。

レオナルド社は約25人乗りの大型機の開発も進めている。

クティーロ氏は「現在は試作機の開発に着手したところで、初飛行は2023年になるとみている」と語る。機体の名称は「ネクストジェン」。欧州にプロジェクト拠点を置き、2030~35年に生産を開始する可能性がある。

  
      

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