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ソ連版超音速旅客機「コンコルドスキー」、なぜ短命に終わったのか?

ツポレフ設計局のTu144は英仏が共同開発した超音速旅客機コンコルドのライバルだった

ツポレフ設計局のTu144は英仏が共同開発した超音速旅客機コンコルドのライバルだった/AFP/AFP/GETTY IMAGES

超音速旅客機コンコルドのライバルであった旧ソ連のTu144。1971年のパリ航空ショーで初めて国外にお披露目された際には、誰もが感銘を受けた。超音速旅客機の開発競争が過熱するなか、スタートで一歩抜け出したのはソ連だった。

ツポレフ設計局のTu144は英仏が共同開発したコンコルドに非常によく似ていたため、必然的に「コンコルドスキー」とのあだ名を付けられることとなった。

航空宇宙分野でのソ連の実績は尊敬に値するものだった。ソ連はこの年、初めて火星に探査機を着陸させたほか、初の宇宙ステーションも打ち上げていた。超音速旅客機の開発で西側諸国を打ち負かす構えは万全であるかのように見えた。

だが、欠陥と不運が重なった結果、コンコルドスキーは間もなく民間航空分野で最大規模の失敗に陥ることになる。

歴史に名を刻んだのはコンコルドの方だが、Tu144は2度にわたりコンコルドに先んじて空に飛び立った。初飛行は1968年12月31日。コンコルドの2カ月前だ。さらに69年6月には、ライバルより4カ月先に初の超音速飛行を行った。

民間航空がプロペラ機からジェット機に移行し始めたばかりの当時、コンコルドとコンコルドスキーは明らかに時代に先駆けていた。ただ、両機は驚くほど似ていたことから、長年にわたりスパイ疑惑をかき立ててきた。

ソ連航空の専門家、イリヤ・グリンバーグ氏は「ツポレフ機のデザインはスパイ行為の結果として生み出されたものではなかった。両機は似ていたが、多くの異なる側面を持つ別の航空機だ」と指摘する。

ツポレフ機はコンコルドよりも若干大きく、速度もやや上回っていた。だが、最も特徴的なのはコックピットのすぐ背後にある小さな翼「カナード」で、これがさらなる揚力を生み出し、低速度での操縦性能を向上させていた。

パリ航空ショーで墜落したツポレフ144型機の残骸=1973年
パリ航空ショーで墜落したツポレフ144型機の残骸=1973年

71年のパリ航空ショーの後、Tu144は73年にも再び話題をさらった。しかし今度は成功によってではなく、悲劇によってだった。

この年のパリ航空ショーで両機は再び相まみえた。コンコルドは先に支障なくデモ飛行を完了したが、ツポレフ機は旋回を交えてはるかに大胆な飛行を披露した。これが死亡事故につながり、機体は空中分解して近隣の村に墜落。乗員6人、地上の8人が死亡した。

これが転落の始まりとなり、Tu144は2度とそこから復活することができなかった。パリでの墜落を受け、ソ連の開発計画は4年の遅れを強いられ、コンコルドが先に就航するのを許してしまった。

Tu144が77年についに旅客を乗せて飛行を開始した時、同機は狭苦しく、故障しやすかった。また、軍用機のようにアフターバーナーを使わないと超音速を維持できなかったため、その騒音は耐えがたいものだった。

Tu144は旅客機としての短い就航期間中、与圧低下やエンジンの不具合に加え、アラームの作動を止めることができないなど、数百件の不具合に見舞われた。その多くは飛行中の不具合だった。

Tu144が既に引退へと向かっていた時、またしても死亡事故が起きた。同機は78年5月23日、モスクワ郊外で発火して緊急着陸。この過程で技術者2人が死亡した。

米航空宇宙局(NASA)が協力したプロジェクトの一環としてモスクワ上空を飛行するTu144=NASA
米航空宇宙局(NASA)が協力したプロジェクトの一環としてモスクワ上空を飛行するTu144=NASA

同機はその後の数年間でひっそりと引退していき、新たな機体の製造も停止された。最終的にプログラムが停止されたのは1984年。Tu144は試作機も含め、計17機が製造されただけだった。

Tu144が最後に飛行したのは1999年。超音速飛行に関する3年間の米ロ共同研究に出資した米航空宇宙局(NASA)の支援によるものだった。

コンコルドの方は2003年に最後の飛行を行ったが、00年にパリ郊外で113人の死者を出した唯一の死亡事故以来、その命運は尽きていた。

これ以降、他にも多くの超音速機が提案されてきたものの、いずれも生産にはこぎ着けていない。

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