太陽に初の「接触」へ、NASAの探査機打ち上げ成功

打ち上げには大型ロケット「デルタ4ヘビー」が使われた/NASA TV

2018.08.13 Mon posted at 18:28 JST

(CNN) 米航空宇宙局(NASA)は12日、無人太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」を打ち上げた。金星の力を借りて史上最も近い距離まで太陽に接近し、コロナに突入して大気の探査を目指す。

当初11日に予定されていた打ち上げは翌日に延期され、現地時間の12日午前3時31分、フロリダ州のケープカナベラルから、探査機を搭載した大型ロケット「デルタ4ヘビー」が打ち上げられた。

探査機そのものは乗用車ほどの大きさだが、地球の軌道を脱出して方向を変え、太陽へ向かうために大型ロケットを必要とした。

打ち上げのタイミングは、金星の助けを借りて太陽周辺の軌道に乗せることを考慮して選ばれた。

打ち上げから6週間後には、初めて金星の重力圏に入り、この重力の力を借りてブレーキをかけるような形で速度を低下させ、太陽へ向かわせる。

軌道を設計したジョンズ・ホプキンズ大学応用物理学研究所の専門家は、「太陽に到達するためには、火星到達の55倍、冥王星到達の2倍の打ち上げ力を必要とする」と解説。「夏の間は地球などの太陽系の惑星が、太陽に接近するために最も望ましい配列になる」と説明する。

探査機は、これまでどの探査機も経験したことのない高熱と放射線に耐える必要がある。太陽についての理解が深まれば、地球に関する理解や太陽系の中の地球の位置についての理解も深まると研究者らは期待する。

今後は金星への接近を7回にわたって繰り返しながら7年近くかけて軌道を狭め、2024年には太陽表面から約627万6440キロの軌道に突入。これで水星よりも太陽に接近する。

太陽熱シールドの外に張り出したセンサーが太陽の大気のサンプルを採集することによって、実質的に太陽に「接触」する

太陽周辺では厚さ約11.4センチの炭素複合材でできた太陽熱シールドが、セ氏およそ1370度の高熱から探査機を守り、内部を計器が正常に動作できる温度に保つ。

太陽周辺での速度は人工物としては史上最速の時速69万2000キロに到達。これは地上での速度に換算すると、フィラデルフィアからワシントンまで1秒で到達できる速度になるという。

探査機に搭載された「ソーラープローブカップ」と呼ばれるセンサーは、太陽熱シールドの外に張り出して太陽の大気のサンプルを採集することによって、実質的に太陽に「接触」する。

探査機は、太陽風が亜音速から超音速へと強まる様子を観測できる地点にまで接近するほか、太陽粒子の発生源も通過する。

アリゾナ大学月惑星研究所の専門家は、「そうした太陽エネルギー粒子の挙動に関する理解が深まれば、火星に宇宙飛行士を送り込む時期について予想が立てやすくなり、衛星が放射線バーストによって破壊される前に守ることもできる」と解説する。

ミッションは2025年6月に終了を予定している。11月には太陽に初接近して、12月初めには初のデータが届く見通し。

ミッション終了後の探査機は、いずれ推力を使い果たす。「10~20年以内には、炭素製の円盤が太陽周辺の軌道を浮遊する状態になり、太陽系が終わるまでそこにとどまり続けてほしい」。ジョンズ・ホプキンズ大学応用物理学研究所の専門家はそう解説している。

NASAの太陽探査機、打ち上げに成功

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