「燃える氷」は新時代のエネルギーとなるか<下> 中国との競争

メタンハイドレートに注目しているのは日本だけではない

2018.01.03 Wed posted at 17:44 JST

(CNN) 「燃える氷」ことメタンハイドレートに注目しているのは日本だけではない。

日本の長年のライバル、中国もスモッグを生み出す石炭に代わる比較的クリーンなエネルギーを求めている。

2007年に南シナ海で有望なメタンハイドレートが発見され、中国は17年5月、海洋でのメタンハイドレートの採掘に成功した。

米国もアラスカ・ノーススロープの凍土帯の下に眠るハイドレートから天然ガスの生産に成功したが、米国は安価なシェールガスが供給過剰の状態にあり、メタンハイドレートへの投資にあまり積極的ではない。

環境への影響

メタンハイドレートからのメタンガスの産出には環境への悪影響も指摘されている。

第一に、ハイドレートからガスを取り出すことにより海底が不安定になり、堆積物が大陸斜面を転がり落ちる可能性があり、最悪の場合、海底地すべりが津波を引き起こす恐れもある。

しかし、メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(MH21)のフィールド開発技術グループリーダー、山本晃司氏によると、ガスハイドレートが溶けるには外部エネルギー源が必要で、エネルギーの注入を止めれば、溶解は自動的に安定化するという。また試掘現場周辺に監視装置を設置し、地盤沈下を検知できるため、地すべりや津波が発生する可能性は極めて低いと山本氏は指摘する。

これに対し、明治大学ガスハイドレート研究所代表の松本良氏は、発生した災害をエネルギーの注入停止や減圧プロセスの停止によって抑えられる保証はなく、特に地震学者らが数十年以内に巨大断層地震が発生すると警告している南海トラフはリスクが高いと指摘する。

2017年5月に中国もメタンハイドレートの採掘に成功した

ガス漏れの危険

メタンが偶発的に大気圏に放出される恐れも頻繁に指摘されている。メタンは20年という長期で見ると二酸化炭素の最大84倍もの温室効果がある。

しかし、米地質調査所(USGS)のガスハイドレートプロジェクトの責任者を務めるキャロリン・ラペル氏によると、海面下数百メートルの海底から放出されたメタンが水柱を伝って大気圏まで上昇する可能性はほとんどなく、通常は海水に溶けてバクテリアによって二酸化炭素に変換されるという。

将来の見通し

生産コストの問題もある。山本氏によると、メタンガスハイドレートからのメタンガスの産出は今のところコストがかかりすぎて採算が合わず、商業生産の実現には数十年かかるという。

しかし、メタンハイドレートからのメタンガスの産出は光熱費の削減だけの問題ではなく、これは国内のエネルギー源であり、日本のエネルギー安全保障にとって非常に重要、と山本氏は指摘する。

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