食品包装から剥がれるマイクロプラスチック、飲食物を汚染 初の体系的な証拠
(CNN) 食料品店で買った肉や包装済みの果物、野菜のラップを剥がすと、食品がマイクロプラスチックやナノプラスチックで汚染される可能性がある――。そんな新たな研究結果が発表された。
プラスチック汚染は薄切り肉やチーズの包装を開けるとき、ティーバッグを熱湯に浸すとき、紙パックの牛乳やオレンジジュースを開封するときにも起こりうる。また、プラスチックでコーティングされた金属製キャップの付いたガラスの瓶や容器からも、微細なプラスチック片が剥がれる可能性があることが分かった。
論文は学術誌npjサイエンス・オブ・フードに24日付で発表された。筆頭著者のリサ・ジマーマン氏によると、ガラス瓶やペットボトルのキャップを繰り返し開閉することによる摩耗で、飲料中に計り知れない量のマイクロプラスチックやナノプラスチックが放出される可能性があるという。
「今回の研究では、ボトルを開けるたびにマイクロプラスチックの数が増えることが示されている。つまり、食品接触物の使用がマイクロプラスチックやナノプラスチックの放出を招いていると言える」とジマーマン氏は指摘した。ジマーマン氏はスイスのチューリヒに拠点を置く非営利財団、フード・パッケージング・フォーラムの科学コミュニケーション担当者を務める。
論文によると、研究者らはビールや缶詰の魚、米、ミネラルウォーター、ティーバッグ、食卓塩、テイクアウト食品、ソフトドリンクなどの飲食物に含まれるマイクロプラスチックやナノプラスチックを測定した。
ジマーマン氏は「今回の研究は、プラスチック包装された食品を通常想定される方法で使用した場合に、どのようにマイクロプラスチックやナノプラスチックで汚染されるかを初めて体系的に示した証拠だ」と説明。「食品包装が実際に、食品から検出されるマイクロプラスチックやナノプラスチックの直接的な発生源になっていることが分かった」と解説する。
2024年9月に発表されたフード・パッケージング・フォーラムの別の調査では、食品の製造や加工、包装、保管の過程で3600種類を超える化学物質が消費者製品に溶け出し、最終的に人体に取り込まれていることが判明した。
24年9月の調査によれば、こうした食品加工に使われる化学物質のうち79種類は、がんや遺伝子変異、内分泌器や生殖器の問題、その他の健康上の悪影響を引き起こすことが知られている。
プラスチックから潜在的に有毒な化学物質が食品に溶け出すことは以前から科学者に知られていたものの、「食品包装がプラスチック粒子への暴露源としてどれほど重大で、健康にどのような意味を持つかはそれほど明確になっておらず、非常に心配だ」。メールでそう指摘するのは、米首都ワシントンに拠点を置く環境ワーキンググループの最高科学責任者代行、デービッド・アンドルーズ氏だ。
アンドルーズ氏は今回の新研究について、「食品包装や加工機器が私たちの口にする食べ物、そして最終的には私たちの体内におけるマイクロプラスチック汚染の重大な発生源となり得ることを浮き彫りにした」「この研究を警鐘と受け止めるべきだ」と指摘する。アンドルーズ氏は今回の研究には関わっていない。
CNNは米プラスチック工業協会にコメントを求めたものの、記事掲載前に回答はなかった。
マイクロプラスチック・ナノプラスチックとは何か?
マイクロプラスチックとは、5ミリ未満から1マイクロメートルの大きさのポリマー片を指す。これより小さいものはナノプラスチックと呼ばれ、1メートルの数十億分の1の単位で測定される。
ナノプラスチックは人間の毛髪の平均な太さの1000分の1と極めて小さく、消化管や肺の組織を通して血流内に入り込みうると、専門家は指摘する。血液の循環に伴い、こうしたプラスチックは潜在的に有害な合成化学物質を体全体や細胞へと行き渡らせる可能性がある。
最近の研究では、人間の脳組織や精巣、ペニス、血液、肺や肝臓の組織、尿や便、母乳、胎盤からマイクロプラスチックやナノプラスチックが検出されたとの発見が相次いでいる。
人間の健康への害について分析した3月の研究では、頸動脈(けいどうみゃく)組織からマイクロプラスチックやナノプラスチックが検出された人はそうでない人に比べ、今後3年間で心臓発作や脳卒中を発症したり、全死因で死亡したりするリスクが倍増することが判明していた。