死から生へ――生分解性の埋葬カプセル、遺体を樹木の栄養に

遺体を収めたカプスラ・ムンディは土の中で分解され、樹木の栄養源となる

2017.09.16 Sat posted at 11:12 JST

(CNN) 人間は墓の中に入っても環境へ影響を与え続ける。安らかに眠っている間も、伝統的なひつぎに一般に使われる木材や合成物質のクッション材、金属類が地球を汚し続けている。

米テネシー大学のジェニファー・デブルイエン准教授は「こうした素材の製造にも多くのエネルギーが投入されているが、ごく短時間使用しただけで埋められてしまう。分解するのも早くない」と指摘する。

イタリアのデザイナー、ラウル・ブレッツェルとアンナ・チテッリの両氏はこの問題の解決策を見つけたかもしれない。その名も「カプスラ・ムンディ」(ラテン語で「世界のカプセル」の意味)。有機材で作られた卵形のひつぎで、遺灰を収めるのにも適している。

ひつぎが地中に埋められると、生分解性プラスチックの殻が分解する。遺体は上に植えられた苗木に栄養を送るという。墓石ではなく樹木で覆われた墓地を作り、廃棄物を減らして、死から新たな生を生み出すのが目標だ。

カプスラ・ムンディの発想が生まれたのは2003年。イタリア北部ミラノで行われた国際見本市の終了に伴い、大量の家具が廃棄されるのを2人が目の当たりにしたときのことだ。

ブレッツェル氏は「新しいものをデザインする大会だったのだが、将来的な影響や、実際に誰がこうしたものを使うのかについて、ほぼ誰も気に懸けていなかった」と話す。

2人は現在、製品の第1弾を販売中だが、その用途は遺灰のみに限られる。今後のモデルは遺体の収容に適したものとなる見通しだ。

まず地中の微生物がバイオプラスチックを分解すると、遺灰は徐々に土壌と接触していく。この過程で土壌の化学的なバランスが過度に変化することはない。

カプスラ・ムンディの上に種をまくという考えも魅力的かもしれないが、米テキサスA&M大学のジャクリーヌ・ペターソン准教授は、もう少し成長した木を使う必要があるとの見方を示す。遺体は1年以内に殻の外に出るために栄養物はかなり早く土壌内に放出されると指摘。「従って、ある程度の大きさの木を上に植えるのが鍵となるだろう」と述べた。

遺灰用のカプスラ・ムンディ

だが本当に環境に良いのだろうか。デブルイエン氏は、「伝統的な埋葬法の問題点は完全に無酸素状態であることだ。遺体は地中深くに埋められ、ひつぎの中に密閉される。十分に分解されない部分が多い」と説明する。

「今回のカプセルの場合、一定の酸素流入を維持できる可能性がある。(主にデンプンで作られたバイオプラスチックから)炭素ももたらされる。人体の分解に当たって制約や課題のひとつになるのは窒素が豊富な点だ。こうした窒素をすべて分解しようとする微生物には、バランスを取るため一定の炭素が必要になる」(同氏)

環境に対する意識の変化も、埋葬にまつわる文化的障壁の打破につながっている。

サイエンス・フェスティバルで紹介されたカプスラ・ムンディ=2016年、ポーランド

北米の環境団体「グリーン・ベリアル・カウンシル」のケイト・カラニック氏は、「環境に優しい埋葬方法への関心はこの2年間で高まってきた」と言及。その背景にはベビーブーム世代の環境意識や、自身の遺体の処理方法への関心があるとの見方を示す。

法的な問題に関しては、北米全域で合法だという。ただ、他所では話が変わってくるようだ。

ブレッツェル氏は、イタリアではこの種の埋葬方法は許可されない可能性があると指摘。「合法化に向けた請願の署名を集めているが、規則変更の実現はだいぶ先のことになるだろう」と話す。

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